11話 アイルの想い
ゼストに助けられてから奴隷解放団は少しずつだが組織として回復に向かっていった。ジェノサイドスレイが勢力を弱めていったことが一番の要因だった。皇帝による攻撃も表向きには不殺の悪魔の仕業になっている影響もあった。
現在、奴隷解放団は生き延びた奴隷たちを保護しており人数も以前よりは少ないものの増えてはいった。キル・コープスや奴隷解放軍は未だに動きを見せないため奴隷を有する勢力はここだけとなっていた。付近でのジェノサイドスレイの奴隷狩りがほとんど無くなって戦闘になることもなかった。
リザたち奴隷解放団は貴族が提供してくれた新たなアジトで密かに過ごしていた。表だって動き出せる時を待ち望んでいた。
スジュン「見回りは終わった。今回も特に問題はなかった。」
外から帰ってきたスジュンとアイルが皆に伝えていた。本当は近くでジェノサイドスレイ同士の戦闘の話を聞いていたが真偽のほどが不明なため黙っていた。何よりまだジェノサイドスレイが近くにいることで他のものが不安がる。
二人は伝えた後、別室にいるリザにジェノサイドスレイのことを話した。
アイル「噂程度のものだったけど、ジェノサイドスレイが活動していることは確か。」
リザ「そう……」
同士討ちなら敵が減って喜ばしいことなのだが、人が死んでいるため複雑な心境だった。このまま待つだけでいいのか、そんな不安もあった。
スジュン「一番の問題はキル・コープスのことだ。死体がまだ出てきていないため生きている可能性がある。その場合、また奴隷解放軍として動き出すかもしれない。そうなったらジェノサイドスレイは勢いを取り戻すし、俺たちも選ばなくてはならない。」
戦うか逃げるか、戦うにしても誰と何と戦うかリザには重たい選択だった。それでも答えは自ずと決まっている。
リザ「私たちはそれでも戦う。同じ奴隷の奴隷解放軍やジェノサイドスレイ、軍、自由の民だろうと戦い抜いてみせるつもりよ。」
いくら表向きの目的が一致していてもキル・コープスを許すつもりは微塵もなかった。
リザ「私たちはそのつもりだけど、アイルさんはまだ残ってくれるの?」
アイルは元は奴隷倉庫の職員で奴隷解放団に参加する理由が薄い。リザにとっては今も彼がここにいることが疑問だった。
アイル「リザさえ良ければ残るつもりだ。助けてもらった恩もある。それにもう私以外に奴隷倉庫職員はいない。ジェノサイドスレイやキル・コープスにみんな殺された。姪もあの事件で亡くなって姉も行方不明。おそらくもう……いない。仇を討つとかそういうのではないけど、この世界を変えてみたい。何もせずにいるのはもう嫌だから。」
アイルは隠していた想いをリザに伝えた。きっと彼の考えは他の者たちとそう大差はない。多かれ少なかれ皆何かを抱え、そして変えたいと願っている。
彼らは希望を信じて明日を迎えた。今ある命がきせきと積みかねた屍の上にあるとも知らず。どんな絶望も皆でなら乗り越えられると信じていた。




