【ピストル口径三択問題(と弾薬選定)】
『SNAFU』の設定では――
4・6ミリ弾:NATO採用トライアルの評価点を反映して5・7ミリ弾にやや見劣りする。
5・7ミリ弾:複数の乱射事件で〝無防備な〟被害者たちを相当数死傷させた反面、マインドセットと身体反応が大きく異なる〝防備な〟悪人たちに向けて使用した法執行関係者の評価がとても渋く、そこを反映して一般的なピストル口径にやや見劣りする。別名〝法外な値段の22口径マグナム〟。
レベルⅢAソフトアーマーを着た相手には、両者とも適切。ソフトアーマーを着ていない相手には、不適切とは言わないまでも、急所を外したときの出血量の面で、また軟組織に対する貫通力の面で(なにせ両者とも質量が小さすぎる)、もっと大きな孔を開けてもっと深く刺さる一般的な口径に分がある。
そして当然、モンスターはレベルⅢAソフトアーマーなんて着ているわけがない。
それでいくと、9ミリ弾は現実世界で黒死病ばりに人を殺してきた歴史を持つ。人間サイズの二本脚モンスターや大型犬サイズの四本脚モンスターには、有効かも。でっかい二本脚には、効果のほどがちょっと読めない。でっかい四本脚には……出くわさないことを祈るのみ。
心の天秤は9ミリに大きく傾いているが、〝ミニライフル弾〟の低反動と有効射程もすこぶる魅力的で……。口径違いを二挺用意したい誘惑をアキラは振り払う。一ポイントたりとも無駄にできない。
「ケヴさん、9ミリをタップ」
「またわけのわからんリスト。これは?」
「9ミリ弾を作ってる弾薬メーカー」
検索範囲を絞るために、各種チェックボックスから〝for Self-Defense〟以外のチェックマークを外す。
自衛弾薬の大きな潮流は二つ。
弾頭が花弁のように広がって過剰貫通を防ぎつつ内傷を拡大させるJHP(被甲ホローポイント)弾。
弾頭に発生する空圧でもって軟組織を切り裂き空洞化させるFTM(流動伝達単一構造体)弾。
信頼性はFTM弾のほうが上だが、それだけでは決められない変数/問いがある。
銃火器と弾薬の相性は?
ハイエンド弾薬は滅多に弾詰まりを引き起こさないため、この点はそこまで心配しなくていい。
もう一つの問い:選んだ弾をうまく撃てるのか?
高性能な弾を外しまくっていては、性能以前の話。比較的低性能な弾でもうまく当てられるのなら、撃たれる側には致命的。
標準的かつ最も確実な選定方法:複数ブランドの複数種類の製品を用意して何百発も試射。
アキラはゲームでよくそうした。くそ忌々しいリアルでは、現状では、時間の面でも、環境の面でも、ポイントの面でも、そんな贅沢は許されない。
となると、『SNAFU』の経験頼り。現実世界にどの程度応用できるのかは甚だ疑問だが――というか、この数時間でゲームとリアルの差が浮き彫りになってきているが――そこ以外に指針がない。
〝ピストルONLY部屋〟で好まれた三強ブランドは、フェデラル、スピア、ホーナディ。アキラが贔屓にしていたG9はトップ5にも入っていない。が、拳銃で最もキル数を稼いだのはG9ディフェンス社の弾だし、モノホンも信頼性抜群で超高性能だと聞くし、究極的には好みの問題でもあるし、願掛けの意味も込めて、軍/法執行機関用の七七グレインAPC(徹甲軟組織空洞化)弾をチョイス。とりあえず二箱、四〇発までカウンターを回してショッピングカートに入れる。
と、メッセージがポップ。
9桁のロットナンバーを入力してください
【GND******‐***】
入力のない場合は【GND41K001
‐001】が支給されます
「ロットナンバーとは?」とケヴ。
どのメーカーのどの工場でいつ作られたかを意味するコードだよ、とアキラは声に出さず答える。パソコンを自作する人には常識だが、同じ工場で同じ品質管理検査をパスした同じCPUでも、ロットによって性能にバラつきがある。弾薬も事情は同じ。一発一発の発射速度が安定しているロットもあれば、不安定なロットもあり、中には不良弾薬に起因するマルファンクション連発のくそロットもある。
メモが手元にない今、当たりロットなんてさっぱりだが、ロット選びの大雑把な安全策なら承知している。ゲーム世界で第三次世界大戦が勃発する2040年10月以降に生産された弾薬は、24‐7体制で休みなく稼働する工作機械の摩耗により年月を追うごとに品質が低下していく。逆に開戦前のロットは平均的な性能の弾薬を引く確率が高い。『SNAFU』プレイヤーはまるでワインの話でもしているかのように2039年を当たり年と呼び、とりわけ四月から九月のロットに高い信頼を寄せていた。ラッキーナンバーはゼロを含む鏡文字。もしハズレを引いたら、数字の組み合わせを変えて買い直せ。
「細かいことは今度。ぼくがやるとおりに入力して」
ケヴに自分の画面を見せながら、アキラはロットナンバーを手入力する。
「まず数字で〝39〟。次はアルファベットの〝D〟」軍のコードで四月。「また数字で……えーと、〝310013〟」最後の六桁はゲームでよく当たりを引いた思い入れのある数字だ。
ケヴの手入力を見守り、【GND39D310‐013】と打ち込まれたのを目視確認する。
続いて、ハイエンド狩猟弾薬。
今度は〝for Backcountry〟以外のチェックマークをすべて外す。
こちらは二種類の弾薬を選ぶ。
旧機軸:分厚い毛皮と脂肪と筋肉と骨を貫いて内臓に達するHCFN(高硬度鋳造先端扁平)弾。
新機軸:弾頭重量と形状を変えることで貫通力に特化したFTM弾。
前者は〝クマちゃん〟マップでの経験よりむしろ、実話を参考に、フルパワー弾薬の製造で名高いバッファローボア社の一四七グレイン・アウトドアーズマンをチョイス。後者は、個人的な好みからG9ディフェンス社のプラスP一二四グレイン・ウッズマンをチョイス。各四〇発。ロットナンバーも先と同じだが、この二つは民生用弾薬なので【#310013】と少し単純。
三種類とも少しお高い。
一発平均、一・八ポイント/約二七〇円。
弾薬は銃火器本体よりも重要なファクター。絶対にケチれない。
「次は右下のファイアアームズ・マニュファクチュアラーズをタップ」
有名無名の銃器製造メーカーが売れ筋の9ミリ拳銃をラインナップの〝旗艦〟にしているため、このリストは長い。フルパワー弾薬を安全に撃てる拳銃に自動検索範囲が絞られていても、まだ長い。
アキラの選考基準(安く上げたいけれど一定以上の性能もほしい)に適うブランドは――
次回、アキラくんの選ぶピストルは妥当なのか? 「自分なら〇〇ブランドの〇〇にする」や「EDCの〇〇に命を預ける」や「なんでデザートイーグルがねぇんだ、デザートイーグルは最強なんだ!」といったご意見・ご感想をお聞かせいただければ、そして宮廷言葉や演劇言葉で殴り合っていただければ、幸いです。




