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【ギア選定】




「PPEはパーソナル・プロテクティヴ・イクイップメントの頭文字。この世界で言う鎧とか兜みいたな防具」

「ふうん。なんかずらっと出たぞ」

「PPEの種類と、その選択項目です。アイプロをタップ。リストからバリスティックアイウェアを選択。次はシューティンググラス。いま出たリストは、メーカーです。シューティンググラスの製造業者」

「〝メーカー〟って工房みたいなもんか?」

 アキラのイメージする工房は親方と弟子が壺やら楽器やらをしこしこ作っている場所だが、時間に追われている今、話を広げたくないので「そんな感じです」と答えておく。

「で、どの工房がいい?」

〝チュートリアル〟で支給されたスミス社の製品はとてもかけ心地が良かった。でも今は予算がタイト。ヌーブ時代に使っていたのは……

「リストの上のほう、ESSをタップ。製品リストが出たら、クロスボウをタップ」

「した。ちっせえ窓が出た」

「上の矢印で〝+1〟にしてください。それが購入数で、隣が必要ポイント」

「四〇ポイント。高いの、これ?」

「リーズナブル。でも高性能。アイシールドは……スモークグレイで。色見本の一番下」

「したぞ」

「ポップアップ右上のショッピングカートの絵をタップ」

「ショッピングカートとは?」ケヴが問う。

「地球で買い物に使う……いや、時間があるときに。今はただ、右上の絵をタップしたらチェック済みのお買い物リストができる――それだけ覚えてください。使い方は……」

 ショッピングカートに入れた装備、数、費用の細目、カートからの削除方法などを、ケヴは一度聞いただけで完璧に覚えてしまう。理解力と順応性がとても高いようだ。

「一連の流れはこんな感じ。あとは右下にある〝BUY NOW〟をタップで、購入決定」

「決定すんの?」

「いえ、あとでまとめて買います。いったんカートの画面、消してください。次にいきましょう」

 PPE内の小カテゴリーに戻り、次はイヤプロを選ぶ。ゲームに登場しなかったイヤプロの優良モデルなどアキラは耳くそほども知らないが、つい先ほどテクニカルデータを読み比べた即席学習で大枠はつかんでいる。大きくは耳マフ型と耳栓型の二種類があり、一定レベルの遮音オンリーの受動型と、環境音を取り込みつつ騒音をカットする能動型に分かれる。

 音がろくに聞こえないのはヤバイから、受動型はナシ。音響の質がだいぶ劣るようだから、能動型の耳栓タイプもナシ。使う予定のない内臓無線短距離交信機能やら何やらを備えた多機能かつ高価すぎるのも、ナシ。そこで、〝チュートリアル〟でお世話になったイヤプロ、サファリランド社製リバレイターHP4・0を選択。これはこれで四二〇ポイントと躊躇する値段だが……諸々を勘案すると大枚をはたかざるをえない。

 そしてLBE。

 拳銃フェーズでは戦闘ベルトしか買えない。

 でも悪くない。

 サスペンダーやハーネスと組み合わせれば古典的なウェブギアへと変貌し、相当量の装備を携帯できる。

 上半身前面のスペースを広く使いたいのならウェビング付きボディアーマーもあるが、防弾パネルや防弾プレート抜きでも割と重い上、見るからに暑苦しい。背中がスカスカのハーネスになっていたモジュラーベストでさえ熱がこもって体力を奪われたのだから、夏場のボディアーマーはサウナスーツも同然だろう。

 太いショルダーストラップにMOLLEマイナスのウェビングが施してあるHハーネスと、医療用ガードルに見えなくもない幅広の戦闘ベルトを選ぶ。

 さらに、アサルトパックなる名前から連想される勇ましさゼロの小型リュックサック、TACOの模造品みたいなオープントップ拳銃弾倉ポーチを一〇個、発煙・催涙手榴弾用のフラップ型ポーチ六個、PDAをバンジーコードとフラップでしっかり保持・保護してくれるアームバンド、バイオハザードの対処に乗り出した科学者が被りそうなガスマスクを、ショッピングカートに入れる。ガスマスク以外はどれも安物で、すぐ破れたり裂けたり〝崩壊〟したりするかもだが、この辺の装具は当座を凌げればいい。

 そして最後に、武器。

 大カテゴリーの〝SMALL ARMS〟から小カテゴリーの〝HAND GRENADE〟へ進み、発煙手榴弾と催涙手榴弾を三個ずつ選び、小カテゴリーのリストに戻って〝PISTOL〟へ。

「地球でもピストル、使ってるんだな」

 爪切りの話でもしているかのようなケヴの物言いに、アキラは眉を吊り上げる。

「この世界にもあるんですか、ピストル?」

「あるよ。短いマスケットだ。長い得物だと邪魔になる騎兵なんかが使ってる」

 あれか。

 ぼくを撃ち殺そうとした二人の騎兵。三人組の一人。

 危うく心が飛びかけたものの、ケヴの問いかけがアキラを現実に引き戻す。

「消えちまったデカい銃、あれは使わねえの?」

「今はまだ使えません。細かい話は――」

「あとで、か?」ケヴがタップする。「項目が二つ出たぞ」


  ・AMMUNITION

  ・FIREARMS MANUFACTURERS


 使う銃を目的に適った弾薬/口径から絞り込むか。贔屓の銃器製造メーカーから絞り込むか。

 アキラは前者のやり方に慣れている。

「アムニションをタップ」

「弾って意味だよな? また項目。ケースレス・アモとカートリッジ」

「カートリッジで」アキラは即答する。

「この二つ、何が違う?」

「詳しいことは追い追い」

「そればっかだな。今度は……なんか数字がめっちゃ出た」

 その長いリストの中で光っているのは、三つ。


   4・6x30mm

   5・7x28mm 

   9x19mm


「これは?」

「弾の種類」

「光ってるのと暗いのがあるが?」

「光ってるのは選べる弾。暗いのは、今はまだ選べない弾」

「今はまだ、ね。どれにすんの?」

「ちょっと待って」

 アキラはピストル口径リストを見つめる。

 ぼくの判断は正しいのか?




次回、アキラくんの選ぶ弾は妥当なのか? 「自分なら〇〇口径で〇〇ブランドの〇〇弾にする」や「EDCのCZに〇〇をこめてる」や「なんで45ACPがねぇんだ、45口径は最強なんだ!」といったご意見をお聞かせいただければ、そしてビジネス文書やお嬢様言葉で自由闊達に殴り合っていただければ、幸いです。



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