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【悩ましいお買い物】




 これじゃ『ボニー&クライド』コースのほうが望みがあるのでは? とアキラが考え直し始めたとき、ケヴが言葉を継ぐ。

「んな死にそうなツラすんな。大物にはそう滅多に出くわさねえよ。フツーの野生動物と同じで、デカブツは個体数が少ないんだ。あたしが読んだ資料にはそうあったし、カセリナでの経験もそいつを裏付けてる。むしろ気をつけるべきは、小型と中型の二本脚だ。やつらはだいたいどこにでもいる」

「その小型と中型――」

「人間様よりだいぶタフ」ケヴが先回りして答える。「でも不死身じゃない。剣で殺せる。槍で殺せる。弓矢で殺せる。当たりさえすればマスケットで殺せる。魔術がなくても対処できる」

 なら……いけるか?

 キル数が初心者帯を抜けるまでは装備のアンロック条件がぬるいし? アンロックしさえすれば、そして贖うポイントさえあれば、エントリーレベルからハイエンドまで、なんでも好きに使えるし? スタートラインのハンドガンだってそうだし? 夜に休める場所だって用意してもらえるみたいだし? 〝人間様よりだいぶタフ〟という点は気になるけれど……いけるか? 

 いけると信じよう、とアキラは自分を無理やり納得させる。軍隊相手に絶望的な鬼ごっこ兼かくれんぼよりは見込みがあるはずだ。

「ケヴさん、装備の組み合わせ決めちゃうので、五分だけ待ってもらえます?」

「三分でできないか?」

「じゃあ三分で」 

 大前提:ゲームオリジナルの架空メーカー製品は地雷原。近未来装備であれ現行装備であれ、実在メーカー製品を選ぶべし。 

 その大前提を基に、アキラは〝当座絶対に必要なものリスト〟を頭の中で作成する。


   装弾数が多いフルサイズの自動拳銃

   あるのとないのとでは対応距離と命中精度に

  大きな差が出るドットサイト

   ハイエンド自衛弾薬

   ハイエンド狩猟弾薬

   目くらましの発煙手榴弾

   怪物に効くかどうかは謎だが、催涙手榴弾

   ガスマスク

   弾薬ポーチ

   手榴弾ポーチ

   各種ポーチを留めておくLBE(荷重支持

  装備)

   アイプロ

   PDAを固定しておくアームバンド

   食料と飲料水

   予備のPDAやらなんやら、こまごましたも

  のを入れておくリュック


 そして〝あったらいいものリスト〟も作る。


   何かまともな衣類

   何かまともな靴

   帽子


 ピストル周辺機器の大部分がロックされているのは痛い。

 でも本当に怪物を殺すことができたら、割とすぐ手に入る。

 割とすぐ手に入らないものを、アキラは切実に欲する。

 作戦行動支援機器/ガジェットがほしい。しかしガジェットは、拳銃フェーズの次の段階、散弾銃フェーズに進むまでアンロックされない。何度も命を救ってくれた破砕手榴弾もほしい。しかし破砕手榴弾は、散弾銃フェーズの次の段階、SMGフェーズに進むまでアンロックされない。

 とにかく、散弾銃フェーズまでポイントをたくさん残しておかないと。とても高価なガジェットを手に入れられないまま日暮れを迎えたら、きっと余命を分単位で計ることになる。

 なので、〝あったらいいものリスト〟は後回しにする。衣類と靴はせいぜい数百ポイントだが、吝嗇家モードのアキラはその数百ポイントを惜しむ。目立つ馬車で移動する以上、偽装に気を使っても仕方がない。裸足にもすっかり慣れてしまった。

〝当座絶対に必要なものリスト〟のあれこれをショッピングカートに入れて総額を出す。

 約三二〇〇ポイント。

 よし、と思ったところで、必要なものもう一つ思いつく。

 あのイヤプロ。うん、ないとマジ困る。モノホンの銃声は耳が痛くなる上、一時的に耳が馬鹿になる。将来的にはつんぼのリスクがあるとも書いてあった。短時間の耳鳴りですら、緊急時のコミュニケーションに支障が出るのは想像に難くない。

 しめて三六〇九ポイント。

 アキラは増えた総額を睨む。

 まあ……大丈夫。

 アンロックのボーナスポイントと殺害ポイントをざっと計算してみるに、戦闘手当なしでも、ガジェット諸々にギリギリ届く。

 それから、選択した拳銃を撃ったときの反動がいかほどのものか試算する。

 たぶん問題なし。

 しかし〝購入〟は押さず、ショッピングカート内の各装備をいったんキャンセルしてしまう。

 選んだ口径と弾に迷いがあるのだ。これがゲームなら〝おっけ、この弾じゃ無理、ほかのやつ試そ〟とリスポーンに頼れるけれど、一発勝負のくそリアルじゃ……じっくり考えたい。時間がない。進めながらきちっと決めよう。

「お待たせしました。ケヴさん、始める前に一ついいですか?」

「言えよ」

「ケヴさんにはよくわからないものがいろいろ出てくると思いますけど、細かいことは、買い物のあとで現物を出すまで待ってもらえます? 物があったほうがわかりやすいので」

「りょ」

「こいつのシステム面に関しては、ま、やってるうちに覚えます」

「それもオッケ」

 アキラはまずポイントの役割を説明し、あとで大きな買い物があるから要節約、もしケヴさんが一人で買い物をすることになったときはぜんぶ使ってしまわないように、と注意する。

「ポイントが日本の通貨単位?」

「とは違くて……あー、ややこしいので、また今度。とりあえずやってみましょう」

 ケヴの画面を横から覗きつつ指示する。

「まずPPEをタップ」






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