↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
73/86

【モード変更】




 上下逆さにPDAを覗き込むケヴが得心した声を出す。

「これか」

「〝これ〟って?」

「お仕事だよ、お・し・ご・と。アルマ=クフがおまえに任せるっつってたやつ。間違いねえだろ。ミッションって書いてあるし」

「ケヴさん……日本語読めるんですね」

「ああ、なんかフツーにな。英単語もわかるぜ。ちなみに、ミッション1はなんだった?」

「エクサリオ軍から逃げろって。で、ケヴさんに会うように誘導されました」

「ああ、やっぱそんな感じか。なんにしろ――」

 ケヴがアキラの胸を指先で小突く。

「――決まりだな」

「いや、待ってください」

「何を待てって? 元々カセリナに行くしかねえんだぞ。そして戦女神はやれと仰せだ。おまえは選ばれ、仕事は開示された。天命だ。おまえも今はっきりと、これ以上ない形で、神に指さして〝行け!〟と言われたんだ。女神クラブへようこそ」

「ちょっと待って。メッセージがまだありますから」

 アキラは二件めの通知をひらく。

     

 【重要】

  ミッション2の難度に鑑みて装備の支給方法

  をシングルプレイの脱出イベント・モードから

  マルチプレイ・モードへ移行します。移行に際

  してマルチプレイの初心者マップ、通常マップ、

  チーム戦専用大規模マップに準拠した以下の諸

  機能が開放されます。

   ・アンロック

   ・アーセナル

   ・SHOP 

   ・ポイント

   ・チーム作成

  これらの諸機能を現実世界でシームレスにご

  活用いただくために以下の機能が追加されま

  す。

   ・QS(クイック・スワップ)

 【注意】 

  マルチプレイ・モードに変更した時点で現在の 

  逃走支援キット装備はデリートされ、マルチプ

  レイの初期装備でのリスタートとなります(P

  DAはデリートされまれません)。PDAを装

  具に装着している場合、逃走支援キット装備の

  デリート時に落下するなどして破損、故障する

  恐れがあります。変更前にPDAを手に持つか、

  しっかりとした平面に置いてください。

 【マルチプレイ・モードに変更】

  〈YES〉

  *モード変更を手動で行わない場合は300

   秒後に自動変更されます。

 

 逃走の前提条件のこの変化はプラマイどっちだ? とアキラは判断に迷う。

 メリットは、ある。

 好みや要求に応じた自衛手段の強化だ。

 デメリットも、ある。

 初期装備が貧弱。索敵や夜間行動を補助するガジェットが一切なく、購入できる銃火器はハンドガン――ハンドガン!――のみ。

 自動小銃と拳銃とでは火力に雲泥の差がある。

 カービンをデリートされたら、どうにもならない。

 ほとんど死刑宣告だ。

 本物のピストルは扱いが難しくてろくに当たらなかったというのに。

 当たらない拳銃で人食いモンスターに接近戦を挑むだなんて、想像するだにぞっとしない。かといってエクサリオ軍から逃げ回るのも……

 アキラは無理やり気を落ち着かせて、先のケヴの問いを言い換えて自問する。

 訓練と装備と(魔法という名の)火力の充実した追跡能力に優れる人間の軍隊に袋の鼠にされながら『ボニー&クライド』ばりの壮絶で無慈悲なラストシーンを回避すべく無駄くさい悪あがきを試みるか。それとも、道具を作ったり使ったりする(つまり相応に知能が高い)人肉嗜好グルメどもに自分由来の頬肉や肩ロースを狙われながら一か八かで脱出ルートを辿るか。

 とても深い肥溜めか。二センチくらい浅いかもしれない肥溜めか。

 どっちも吐き気を催すくらいご免だけれど――

 ――まだしもドア・ナンバー2のほうがマシに、現代兵器ゴリ押し戦法が効きそうに、思える。

 アキラは目を上げる。ケヴが眉をひそめてメッセージを読んでいる。

「意味わかんねえんだが。日本語はわかるぜ。でも内容が……」

「ケヴさん」

「ん?」

「準備を整えてカセリナに行きましょう」

 ケヴが探るようにアキラを見る。

「どういう心境の変化だ? このチンプンカンプンな文章と関係あんの?」

 アキラは投げ槍に肩をすくめる。

「その仕草の意味は?」

「この場合は、言語化しがたい複雑な心模様の表明」

「なんにしろ――」ケヴが片側の口角をゆるめる。「女神より神託を授かりし使徒とその従者。笑えるよな」

「ぜんぜん笑えませんよ」応じながら、PDAを手に持ってYESをタップする。

 モジュラーベストやカービンの重量がいきなり消えてアキラはビクッとする。

 ケヴもビクッとする。

「ぜんぶ消えちまったぞ」

「大丈夫です。消えるって書いてあっ――」

「おま、血だらけじゃねえか。肩以外も怪我してんの、おまえ?」

 殺された可哀想なロフト兵について説明しながら、アキラはヴーヴー振動しているPDAのタッチスクリーンに触れて、新着通知にさっと目を走らせる。


 【重要】

  マルチプレイ・モードへ移行したことによりア

  ンロック機能が開放されました。

  マルチプレイ・モードへ移行したことによりア

  ーセナルが開放されました。

  マルチプレイ・モードへ移行したことによりS

  HOPが開放されました。

  マルチプレイ・モードへ移行したことにより初

  期ポイント7000が支給されました。

  マルチプレイ・モードへ移行したことによりチ

  ーム作成機能が開放されました。

  マルチプレイ・モードへ移行したことによりQ

  S機能が開放されました。

  *詳細はヘルプを参照してください。


 設定画面を出して、増えた機能の中から真っ先にSHOPをタップする。




もしよろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると執筆の励みになります。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。