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【7択問題】




 SBRはカービンと外観がほぼ同じで、操作方法が同じで、弾倉も同じだ。

 でなければ詰んでいただろう。

 足を止めてSBRの使い方を確認する暇もなく、アキラは新手に補足される。偵察騎兵を殲滅した地点から五〇〇メートルも離れていない勾配をのぼっている最中に、二〇騎前後の軽騎兵がせまってくるのを認め、アキラは緩い斜面を一気に駆けのぼる。

 飲み水を得るべく進路の目印にしていた水車小屋はすぐそこだ。辿り着けば川か水路がハラスの障害になるかもしれない、と期待したのも束の間、畑を抜けるなりどうにもならないと判明する。農道脇の水路は騎馬突撃を阻止するどころか、園児の突撃すら阻止できないほど幅が狭く、浅い。アキラはひと跳びで水路を越え、少しでも有利な地形を求めて水車小屋の奥の倉庫へ駈ける。

 その二〇歩めで時間が尽きる。勾配を登り切った騎兵隊がアキラを視認し、サーベルを抜いたり石弓を構えたりしている。速度を上げて突進してくる。

 アキラはチャージングハンドルを引いてセイフティを解除し、銃口を向ける。

 SEMIで右から左に速射すると、約三分の一はハラスが転倒したり、乗り手が落ちたりする。セレクターをAOUTまで回して、残りの三分の二に小刻みな連射を浴びせる。予備の弾倉を叩き込み、さらに連射する。

 ゲームどおり、短銃身のSBRはカービンよりも反動が強い。

 連射も、増大した発射炎と共にXM2038より激しく暴れる。

 そして、銃声がめちゃくちゃやかましい。

 さらには、発砲時に発生する銃口衝撃波が空気の壁となって肌を叩き、ピリピリ刺す。

 人馬そろって農道に達したのは僅か一騎。致命傷を負ったのか、ハラスも乗り手も水路を堰き止めるようにして横たわったまま微動だにしない。畑に視線を転じると、ご主人様ぬきで元気そうに駆けているハラスが三頭。姿は見えないが、アキラを罪悪感をでいっぱいにするほど痛ましい鳴き声を上げているのが一頭。

 風がやむ。

 右手の穂が微かに揺れている。

 アキラは片膝を突き、セレクターをSEMIに戻して狙いをつける。植物のベールの向こうに人影が見えるなり発砲し、右太ももの端を削るも、相手が委細構わず畑を出て突進してきて、その動きを止めるためにもう一発食らわせる。

 SBRが消えて第四の作業台が現れる。

 四個のM67破砕手榴弾。

 破片が敵プレイヤーのHPと機動力を削る危害半径は一五メートル。即死または行動不能に至らしめる殺傷半径は五メートル。

 アキラは手榴弾を足元に落とし、作業台を蹴倒し、その陰に隠れて“野球玉”を拾い上げる。

 使い方は、映画やゲームの投擲モーションでなんとなくわかる。

〝なんとなく〟が災いして、安全レバーを握り込まずにプルリングを引き抜いてしまう。金属音と共に〝スプーン〟が脱落するのを目にしたとたん、ミスを悟る。信管作動。慌てて投擲する。超軽量の砲丸くらいの重さの凶悪な鉄の塊が、まだ騎兵が潜んでいるかもしれない畑に消える。アキラは作業台の陰に伏せる。鈍い炸裂音。二発めのプルリングに指をかけながら体を起こし……息を呑む。畑から騎兵が現れたのだ。血まみれで、ぎこちない歩き方をしている。その顔面は剃刀で切り刻まれたかのようにズタズタ。そしてばたりと倒れる。

 ボロ雑巾のような騎兵の死体をアキラは見つめて、プルリングから指を離しかける。けれども、自分の命がすべてにまさる。今度は〝スプーン〟を握り込んでピンを抜き、投げる。手から離れた直後に安全レバーがリリースされ、そのタイミングで遅延信管が作動し、爆発音が響くまでに四秒ほどの間が空く。一投ごとに一〇メートル前後ずらし、三投めで人間の悲鳴を聞いたような気が……

 最後の一個を握りしめながら様子を窺う。

 アドレナリンが体内を駆け巡っているせいか、胸が早鐘を打ち、息が浅い。指先が冷たい。デカすぎる銃声のせいで耳が遠く、心音と呼吸音が頭の中で響く。

 三〇数える。

 動きなし。

 アキラは震える手の中の手榴弾に目をやる。

 これを使い終わったら、次はどうなる?

 A:悪夢の米軍シナリオ開幕。

 B:米軍シナリオの初期装備出現。

 C:EU陸戦群シナリオ/ロシア陸軍シナリオ/人民解放軍シナリオのチュートリアル装備出現。

 Ⅾ:マルチプレイ開幕。

 E:マルチプレイの初期装備出現。

 F:マルチプレイの個人データ装備出現。

 G:何も起こらない。

 Aはおそらくない。Gもない気がする――ここまでおかしなことが続いたあとでは、なおさら。Ⅾもないと信じたい。異世界に迷い込んだ同胞と撃ち合いだなんて、救いがなさすぎる。きっとBからFのどれかだ。Fが望ましい。アーセナルには山ほどの武器が保管されてる。少々の追っ手ぐらい余裕で追い払えるありとあらゆる武器が。

 これがもうちょいカジュアルな『CoD』や『BF』のシステムなら良かったのに、とアキラは混乱気味に思う。そしたら怪我が時間経過で自然治癒したり、衛生兵になって瀕死の重傷を瞬時に完治したりできたかもしれないのに。ゴリゴリのリアル路線の『SNAFU』にはそれがない。救急キットはあるものの、後送ヘリや後送車両の来援まで出血を止める役にしか……

 ごちゃついた思考を頭から振り払い、ホント頼むよ、Fでお願い、と運を天に任せる心持ちでアキラは最後の手榴弾を投擲する。炸裂音と共に苦し気なハラスの鳴き声がやむ。

 即席の遮蔽物/作業台が消える。




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