骸の王
ファミレスの一角。
火ノ宮楓は真剣な表情で話していた。
「骸の王。千年破壊出来なかった、自我を持つ所有者不在の武器」
向かいに座る橘湊は元気よく手を挙げる。
「僕は世界一可愛いです!」
楓は無視した。
「武供で武器を作るには、原則として一人につき一つ」
「パフェ食べたいです!」
「何故なら骸の王は、数多の武供を生贄にして作られたから」
そこで湊が楓の皿へ手を伸ばした。
「楓さんのからあげ一つ貰いますね」
楓の額に青筋が浮かぶ。
「聞けや!」
店内に響くほどではない。
だが十分大きな声だった。
湊はもぐもぐとからあげを咀嚼する。
「聞いてますよ」
「じゃあ私が何話したか言ってみて」
楓は腕を組む。
湊は少しだけ考える素振りを見せた。
そして自信満々に答える。
「骸の王が可愛くて、数多のからあげを生贄にして作られたって話ですよね」
沈黙。
楓はゆっくりと顔を覆った。
「本当になんなの……」
数分後。
楓は諦めたようにコーヒーを口にする。
「で。アンタ一人で倒せるの?」
湊は首を傾げた。
「楓さんは当然として、この前戦った斧使いの人も欲しいですね」
楓の動きが止まる。
「いや……斧使い?」
嫌な予感がした。
「戦った?」
「強かったですねぇ」
湊は楽しそうに頷く。
楓は額を押さえた。
「相馬じゃん……」
そして深いため息を吐く。
「家に来たの?」
「散歩中に会いました」
「家でじっとしてろって言ったじゃん」
「散歩は大事です」
全く反省していない。
楓は再びため息を吐いた。
「まぁ、もういいや」
疲れ切った声だった。
「雨宮にもバレた後だし」
「まぁ、殺されないと思いますし良かったじゃないですか」
湊は満面の笑みを浮かべる。
「僕の完璧な作戦のおかげですね」
「違う」
即答だった。
楓は真顔で言う。
「雨宮を味方に付けたから」
「強いんですね! あの人」
「強さは置いといて」
楓は首を振る。
「あの女はアンタの殺害命令を実際に取り消した」
湊が目を丸くする。
楓は指を一本立てた。
「顔面が識別出来ない死体を用意する」
もう一本指を立てる。
「武器を作ろうとした所をテロリストに襲撃させる」
さらに一本。
「そして、そいつらが持ってる筈のない爆弾で全部吹き飛ばす」
湊はしばらく黙り込んだ。
やがて。
「エグすぎません?」
「やるんだよ」
楓は即答した。
「しかも手柄は自分で持つ」
「うわぁ」
「邪魔な人間には責任ごと押し付ける」
「うわぁ……」
「最後に全部まとめて抹消する」
湊は真顔になった。
「酷い話ですねぇ」
楓はコーヒーを飲み干す。
そして静かに言った。
「発端はアンタだけどね」
湊は視線を逸らした。




