ツンデレ
雨宮紬は頬杖をついたまま首を傾げた。
「楓ちゃん。なんで武供殺さなかったの?」
火ノ宮楓が言葉に詰まる。
「それは……」
「僕が可愛くて愛くるしいからです!」
元気な声が割り込んだ。
全員の視線がそちらへ向く。
いつの間にか湊が窓際に立っていた。
紬が目を細める。
「へぇ……」
「ちょっ……」
楓が慌てて立ち上がる。
だが紬は人差し指を唇に当てた。
「楓ちゃん、お口チャック」
次の瞬間。
湊は窓の外へ何かを放り投げた。
数秒後。
少し離れた場所で爆発音が響く。
窓ガラスが微かに震えた。
それを見ても紬は表情を変えない。
「爆弾を沢山仕掛けました!」
「ふーん」
興味深そうに頬杖をつき直す。
「お話は何かな?」
湊は得意げに胸を張った。
「史上最悪の刀――骸の王を破壊します!」
そして大きく両手を広げる。
「そうすれば、僕は殺されません!」
力強い肯定だった。
紬は少しだけ考える素振りを見せる。
「乗ると思う?」
湊の動きが止まった。
「さっきの爆弾。制約がある筈」
「まっさかー」
露骨に視線を逸らす。
紬は気にせず続けた。
「スナイパーライフルみたいな武器を出せるなら、遠くから交渉出来たよね」
「思いつかなかったんです!!」
即答だった。
「なるほど」
紬は素直に頷く。
そして更に続ける。
「じゃあ、さっき窓から投げたのは何で?」
「え?」
「指差して遠くの建物を吹き飛ばせば良かったじゃん」
湊は固まった。
数秒後。
「思いつかなかったからです!!」
「なるほど」
紬はもう一度頷く。
そして笑顔のまま尋ねた。
「もう一度聞くよ」
「乗ると思う?」
湊はしばらく考え込む。
やがて何かを閃いたように顔を上げた。
「僕が死んだら楓さんが落ち込んで衰弱死します」
紬は即答した。
「それは大変だ!」
ぱっと笑顔になる。
「乗るよ」
「は?」
楓が素で聞き返した。
「んな訳無いでしょ」
「ツンデレなんです」
湊は満足そうに頷く。
紬も楽しそうに笑った。
「ツンデレで可愛いねぇー楓ちゃん」
楓は無言で頭を抱えた。




