変態
「やっぱり対策課の食堂は美味しいですし、タダで素晴らしいです!」
橘湊は満足そうに唐揚げを頬張った。
幸せそうな顔で味噌汁を飲む。
そんな湊へ、隣の席から声が掛かった。
「あれ? タダじゃないですよ?」
白い髪の少女――ユキが不思議そうに首を傾げる。
湊も首を傾げ返した。
「そうなんですか?」
「カードをピッてしたら、お金払いませんでしたよ?」
「給料天引きです、それ」
「あ」
湊は数秒考えた。
そして納得したように頷く。
「それなら問題ありませんね」
「そうですか?」
「楓さんの給料なので」
ユキが固まる。
「えー……それは良くないですよー」
珍しく真っ当な意見だった。
だが湊は自信満々に胸を張る。
「僕は可愛いので許されます」
ユキは感心したように目を輝かせた。
「確かに!」
力強く頷く。
「可愛いなら大丈夫ですね!」
湊も満足そうに頷き返した。
誰も大丈夫ではなかった。
その時だった。
「そこに居たのか」
低い声が響く。
二人が同時に振り返る。
相馬玲志だった。
ユキの顔がぱっと明るくなる。
「玲志様!」
勢いよく立ち上がると、自分の首輪に繋がったリードを差し出した。
「はい!」
玲志は無言でそれを受け取る。
ユキは嬉しそうに続けた。
「連れて行くなら引っ張らないとですね!」
玲志はしばらく黙り込んだ。
やがて。
「もうヤダ……」
心の底から疲れ切った声だった。
湊はそんな玲志を見て感心したように頷く。
「僕、賢いので知ってます」
嫌な予感しかしなかった。
玲志が眉をひそめる。
「何をだ?」
湊は自信満々に答えた。
「変態って言うんですよね」
沈黙。
玲志は無表情のまま答える。
「俺の事言ってるんだとしたら」
一歩前へ出る。
「トイレの詰まり取りの素材にしてやるよ」
湊は素早く椅子の後ろへ隠れた。
「図星でしたか!」
「違う」
即答だった。




