ユキ
玲志は目の前の少女を見て露骨に嫌そうな顔をした。
白い髪。
白いワンピース。
首には見慣れない首輪。
そして何より。
妙に距離感が近い。
「よろしくお願いします!」
少女は満面の笑みを浮かべた。
玲志は眉をひそめる。
「えっと……確か名前は」
「ユキです!」
元気よく答える。
「違うだろ」
玲志は即座に切り返した。
「いや、絶対本名じゃねぇだろ」
ユキは首を傾げる。
「首輪付けてるので猫っぽく扱ってください!」
「話聞けよ」
「良い子にしたら撫でてください!」
「嫌だけど」
即答だった。
ユキが本気で傷付いたような顔をする。
「なんでですか?」
「なんで良いと思った?」
数秒の沈黙。
ユキは真剣に考え始めた。
玲志は大きくため息を吐く。
「一つ聞いて良いか」
ユキの目が輝く。
「答えたら撫でてくれますか?」
「……分かった」
玲志は諦めたように答えた。
どうせ何か理由があるのだろう。
そう思った。
「なんで骸になった?」
ユキは迷うことなく答える。
「今が一番可愛いと思うんですよ、私」
「うん」
「骸になれば年を取りません」
玲志は黙り込んだ。
数秒後。
「なるほど」
「ですよね!」
ユキは嬉しそうに身を乗り出す。
「答えたので撫でてください!」
玲志は再び黙り込んだ。
逃げるという選択肢も考えた。
だが約束してしまった。
仕方なく頭へ手を伸ばす。
優しく撫でる。
ユキは目を細めた。
「嬉しいです、玲志様!」
「……ちょっと席外してくるから待っててくれ」
「はい!」
満面の笑みだった。
玲志は立ち上がる。
そして一直線に雨宮紬の部屋へ向かった。
ドアの前で立ち止まる。
一秒考える。
やっぱり考えるのをやめた。
次の瞬間。
ドゴンッ!!
鈍い音と共にドアが吹き飛ぶ。
「玲志君!?」
紬が椅子から飛び上がった。
「何してんの!?」
玲志は真顔だった。
「とりあえず遺言言え」
「物騒だなぁ!」
紬は慌てて手を振る。
「今は玲志様だったね!」
「死にたいのか?」
「引き入れる条件だったんだよ!」
紬は必死に弁解した。
「世界一強い従斧の主の玲志様のペットになりたいから叶えてくださいって!」
玲志は無言になる。
数秒。
さらに数秒。
そして静かに頷いた。
「オッケー」
「分かってくれた!?」
「遺族に伝えとくわ」
「待って待って待って待って!!」




