バグ
「対策課で一番頭のおかしい人間、誰だと思う?」
雨宮紬が頬杖をつきながら尋ねた。
相馬玲志は迷うことなく人差し指を向ける。
「アンタ」
紬は予想していたかのように机の下から鏡を取り出した。
玲志の顔を映し、満足そうに頷く。
「さて、冗談は置いといて」
「冗談だったのか?」
玲志が呆れたように眉をひそめる。
紬は無視した。
「一つ聞くね」
「なんだ」
「骸って何?」
「満月の日に死体が動き出したモノだろ」
玲志は即答する。
「で、骸を殺す方法は?」
「無い」
今度も迷いは無かった。
「そもそも死んでるからな。細切れにするか燃やすかで対処する」
「そうだね」
紬は満足そうに頷いた。
そして指を一本立てる。
「じゃあ次。強い武器の特徴は?」
「適合者が少ない」
「正解」
紬は笑う。
「逆に言えば、適合者じゃなくても強い武器もある」
「不変の鎖とかか」
「そうそう」
玲志は腕を組んだ。
「話が見えねぇな」
「自我を持つ骸が居るんだよ」
沈黙。
玲志がゆっくりと顔をしかめた。
「前提からおかしいだろ」
「何が?」
「骸は死体だろ」
紬は楽しそうに笑った。
「主従の首輪と死のリングは知ってる?」
「死のリングは知ってる」
玲志は即答する。
「強大過ぎる力を得るが十秒も付けてりゃ死ぬ欠陥品だろ」
「大体合ってる」
紬は頷く。
「主従の首輪は、首に嵌めると主従契約を結べる武器」
「便利そうだな」
「双方の同意が必要だけどね」
「あー」
玲志は納得したように頷いた。
「だから無名なのか」
「で、その首輪には欠陥がある」
紬の笑みが深くなる。
「主が死んでも、首輪の中に残った魂が従者を操るんだよ」
玲志は数秒黙り込んだ。
やがて。
「察した」
「察した?」
「頭のおかしい奴が居たんだろ」
「正解」
紬は楽しそうに手を叩く。
「自分を主に設定した状態で首輪を装着」
「満月の日に死のリングを使用」
「そのまま骸になった」
玲志は天井を見上げた。
「馬鹿じゃねぇの」
「まだ続きがあるよ」
「聞きたくねぇな……」
「骸になっても死のリングの効果が続いてる」
沈黙。
玲志は真顔になった。
「確かにそいつ頭おかしいわ」
紬はニコニコしながら尋ねる。
「なんでこの話したと思う?」
「危険だから気を付けろ、とか?」
「あ、違う」
紬は笑顔のまま言った。
「私の部下にしたから、面倒よろしく」
玲志は数秒固まる。
そして静かに言った。
「一番頭おかしいのテメェだよ、クソ女」




