お月様
「おい、武供」
背後から声を掛けられ、橘湊が振り返る。
「あ、斧使いさん!」
相馬玲志は眉をひそめた。
「そうそう。覚えてたんだな」
そして腹を指差す。
「腹に穴を空けやがったクソ野郎」
「許して下さいよぉ」
湊は全く反省していない様子で両手を合わせた。
玲志はため息を吐く。
「で」
「骸の王を破壊するなんて本当に出来んのか?」
湊は自信満々に胸を張った。
「破壊すれば皆ハッピーです!」
「質問に答えろ」
即答だった。
「出来ます!」
「根拠は?」
「自信です!」
玲志は頭を抱えた。
「次の満月が楽しみだな……」
すると湊が人差し指を立てる。
「知ってます?」
「千年前はお月様は赤くなくて、一ヶ月に一回って規則的に満月になったらしいですよ!」
「賢いなぁ」
玲志は適当に頷いた。
「義務教育受けてない割には」
「フフン!」
湊は得意げに胸を張る。
「火葬の文化も、満月になると生き物の死体が骸になって暴れるから広まったらしいですよ!」
「賢いなぁ」
「僕は賢いんで!」
満面の笑みだった。
玲志は遠い目をする。
「いやぁ……その賢さ少し分けて欲しいわ」
湊は嬉しそうに頷いた。
「馬鹿に付ける薬が無い事も、賢いので知ってます!!」
沈黙。
玲志の額に青筋が浮かぶ。
「死人に口無しって知ってるか?」
「知ってますよー、勿論」
湊は元気よく答えた。
玲志は数秒黙り込む。
やがて。
「…………」
深いため息を吐いた。
「クソ女の次に嫌いだわ」




