可愛いは正義
雨宮紬は頬杖をつきながら橘湊を眺めた。
「湊君は何が出来るの?」
湊は迷うことなく答える。
「長所は可愛い所です」
「可愛さで骸の王は破壊出来ないねぇ」
紬は肩を竦めた。
湊は真顔で頷く。
「可愛さは万能ではありませんから」
「そうなんだ」
紬は適当に流した。
そして思い出したように続ける。
「不変の鎖を斬って脱走したらしいけど」
「面白い事するよね」
「可愛さで斬りました」
「なるほど」
紬は何故か納得したように頷く。
「見えない武器を操り、不変の鎖を断ち切る」
「それに可愛い」
「完璧だね!」
「ですです!」
湊は嬉しそうに頷いた。
紬は笑いながら続ける。
「それにしても驚いたよ」
「インスティンクトを扱える武供とはね」
「可愛さの次に凄いです!」
「順位低くない?」
紬は思わず吹き出した。
そして指を一本立てる。
「インスティンクトは武器の本能を呼び覚ます能力」
「例えば従斧」
「あれが引き出す力は過重」
「重さを自在に操れる」
湊は感心したように声を漏らす。
「凄いですね」
「それだけじゃない」
紬は楽しそうに笑った。
「従斧の恩恵で主人には高い治癒力が与えられる」
「便利ですね」
「その代わり」
紬はあっさり続けた。
「見限られたら即死の呪い付きだけどね」
「怖いですー」
湊は全然怖そうではなかった。
「インスティンクトを扱う人間は大きく二種類」
「片方は適合者ですよね!」
「そうそう」
紬は頷く。
「玲志君と楓ちゃんがそれ」
「武器に選ばれた人間」
そして少しだけ真面目な顔になる。
「もう片方は稀代の天才」
「どんな武器でも力を引き出せる人間」
「その天才が」
紬は湊を指差した。
「自分自身を武器にした」
「武器になった際の自分の力まで引き出せる」
「恐ろしい話だよ」
湊は胸を張った。
「褒めても何も出ませんよ!」
「褒めてるんだけどなぁ」
紬は苦笑する。
そして少しだけ目を細めた。
「君を殺さなかったのは何でだと思う?」
「可愛いからです」
即答だった。
紬も即座に頷く。
「そう!」
「可愛いからってのもある!」
「ですよねー」
「それと」
紬は笑顔のまま続ける。
「君を武器にした時、その力を引き出せる適合者が見つかる保証が無いから」
湊は数秒考えた。
そして結論を出す。
「可愛いは正義ですよねー」
「だよねー」
紬も満足そうに頷いた。




