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エピローグ前編 再びの思い出の地で

ミライの世界に繋がると言われている完全無欠洞窟。

通称・完璧洞窟またはカンペ―キ洞窟に挑んだサマー部の四名。

しかし難関と言うだけあって道は途絶えてしまう。

仕方なく戻ることに。


黄昏時。

「ごめん。ちょっと寄り道するわ」

俺を信じてついて来てくれた仲間には悪いが約束の場所へ。

昨夜惜しみつつも別れたがもしかしたらミライの声が聞こえるかもしれない。

声が聞こえないとしても待っているかもしれない。

どうしても約束の場所へもう一度。

無茶を言って困らせるがアイミが賛成してくれた。


「ふざけるな海! アイミちゃんも! 」

文句があると陸は引かないがこれくらい問題ない。

何と言っても俺たちはミライに会うために洞窟にまで来た。

どうやってあちらの世界に行けるかの参考にだってなるかもしれない。

決して無駄ではないだろう。


ハアハア

ハアハア

全速力で昨日別れた約束の場所へ。

さあここからが勝負だぞ。

もしミライの声が聞こえるならそれは俺を待っていることになる。

昨日の今日だけに未練を残しているかもしれない。

見えなくても会えなくてもいい。ただ一瞬だけでもミライの声が聞こえたらな。

その想いで約束の場所へ走る。


俺は戻ってきたぞミライ。俺はここにいる。

せめて声だけでも聞かせて欲しい。それが俺の偽らざる気持ち。

だが当然ミライはいない。未練を残して別れたのは俺だけだった。

残念だ。とても残念だ。


ミライ! ミライ! ミライ!

心の中で叫び続けるも止まらない。ついには口から洩れてしまう。

それほどの強い想いに駆られる。

「バカ野郎! 諦めるな! 」

陸の励ましが心に響く。

「ちょっと! 海は悪くないでしょう」

そう言って甘やかすアイミ。

ありがたいが少々恥ずかしい。いつまでもミライを想い続けるのは不可能。

そんなことは百も承知のはずなのにそれでも諦めきれずにミライを呼ぶ。


閉ざされた世界。結局のところ昨日までのことも今日のこともすべてが無駄。

そんな気がしてどんどん虚しくなっている。なぜこうなってしまったのか?

後悔の念に苛まれる。昨日あれほど苦しんだ。まだ乗り越えられていないよう。

乗り越えたと思ったのは単なる錯覚。ああ…… ミライに会いたい。

一体どうすれば会えるんだ? 誰か教えて欲しい。


今は仲間がいるからどうにか立っていられる。

堪え切れずに涙が溢れ叫びたくなる衝動に駆られる。

それほど追い込まれてしまう。

もはや幻影に憧れる彷徨える魂。脱け殻。生きていると言う実感さえ薄い。


「しっかり海! 大丈夫だから。心配いらないからね! 」

アイミは俺を思って励ましの言葉をかけ続ける。

だがその程度で立ち直れるならもうすでに立ち直っていておかしくない。

しかしどうだろう? 結局は昨夜のまま。いや悪化したとさえ言える。

相変わらず希ちゃんは無言。陸は陸なりに精一杯励ましてくれる。

信じてついて来てくれた皆には感謝しないとな。

でもだからってミライへの想いが消えることはない。


もう間もなく日が沈む。

昨夜と同様に白い光が出現しては消えてを繰り返している。

ミモリによればこの集落で目撃談が多数の奇妙な現象だそう。

陸はその白い光に異丹治たちを誘い込むといつの間にか姿を消したと話す。

どうせ奴のホラ話だろうが希ちゃんもアイミも異丹治が実際にいたと。

この現象が起きるのはてっきりミライたちと関係あるかとばかり。

でも違ったらしい。とすれば一体どういうことなのか?

解明は俺たちだけでは不可能。


「おい大丈夫か海? 」

「光が…… 光が導いてくれる。へへへ…… 」

「おいしっかりしろ! 海! 海! 」

もうどうにもならない。止めようがない。

ああ導かれて行く。


再び出現した白い光。

約束の場所に降り注ぐ無数の光。

この集落では一体何が起きてるのか?


「おいお前たち! 早くそこから離れろ! 」

ミモリが大声を張り上げ指示を送る。

「どうしたんですかミモリさん? 」

陸もアイミも希ちゃんも大人しく従おうとする。

しかし待ってくれ。俺はまだ諦めてない。

ここでせめてミライの声を聞けるなら留まりたいと思っている。

間もなく日暮れ。これ以上長居するのは危険だが昨日だってどうにかなった。

だから今日だって大丈夫だろう。

この光が不可能と言われた二つの世界を繋ぐ扉になっているかもしれない。

そうでなくてもこの光は何かある。偶然にしてはでき過ぎている。


「馬鹿野郎! 早くお前も来い! 」

皆言われるままにミモリのところへ。鶴さん宅へ戻ろうとする。

「でもミモリさん…… 」

閉ざされた希望に僅かながら光が差したと言うのにこのまま帰れるか。

俺は最後の最後のチャンスにかけるんだ。

もうありもしないと分かっているのにそれでもそのない可能性に賭けようとする。


「おい何をやってる? 早く! 」

ミモリの指摘はもっとも。もう夕暮れで危険を冒すような時じゃない。

もしどうしても行くなら昼間にすべき。そんな風に誰しも思うしミモリも言う。

「俺の我がままを許してくれ! どうしてもミライが…… 」

どんなに正論を吐かれようと俺はここに留まる決意をした。

「大馬鹿野郎! ミライはもういない。お前だってよく分かってるだろうが! 」

呆れた様子のミモリ。


「ねえ本気なの海? 」

アイミは行動を共にしようとする。しかしそれではダメだ。

俺は一人でミライを待ち続けなければならない。

仲間はとても大切だけど皆で待ってもミライはきっと姿を見せない。

そしてミライへの道しるべも消えてしまうだろう。

俺の勝手な妄想だとしてもそれでいい。やれることをやりたい。

常識とか理性など関係ない。可能性がなくてもいいんだ。

ただ納得できればそれでいい。諦めがつくまでここで待ちたい。


「海。お前はどうしようもないな。どこまで人に迷惑を掛ければいい?

もう子供じゃないだろう? いい加減成長しろよな! 」

ミモリに失望されてしまう。あーあやってられない。

でもたとえ誰に失望されようと関係ない。俺の信じる道をただ進むだけ。

もう常識では測れない現実がある。それに背を向ける方がよっぽどバカだ。


「ミモリさん。あなたなら俺の気持ち分かるでしょう? 」

俺とミライ。ミモリとリンネ。

よく似た数奇な運命に翻弄された二人。

悲しみも苦しみも痛みもすべてここで起きた。

五年前に出会った二人はついに再会を果たしたがそれは幻だった。

ミライと俺は決して会えない。それが運命だった。

悲しい真実。でもそれでも俺たちは姿も見れたし会話だってできた。

紅心中伝説の者たちよりも幸せだったと思う。

だからってその思い出を噛みしめるだけではダメだ。

伝説のように一緒に散らないならせめて僅かながらの希望があっていい。


「悪いミモリさん。俺の我がままを聞いてくれ! 」

「しかし…… 俺にはお前たちを守る使命がある」

ミモリは引かない。

「いいんじゃないの海の奴の好きにさせてやれば」

諦めの陸が説得を始める。どうやら味方してくれるらしい。

奴にはその方がお得なんだろうな。

最近はおかしな暴走もせずに頼りがいがある。

「おいおい。裏切るなっての。海はただしがみつきたいだけだ」

ズバリ言いやがる。それはミモリがそうだったと言ってるようなもの。

まったく情けない。俺はそこまでじゃない。ただ真実が知りたい。それだけだ。


「放っておこうよ。なあ希ちゃん」

陸は希ちゃんに振る。

「私はどっちでも…… 」

「だから俺の責任になるんだよ。まだ高校生だからな」

保護者面するミモリ。まあ父さんから任されてるようなものだから。


「海は海。ミモリさんはミモリさん。考えが違うから好きにすればいい」

アイミは当然俺の味方。

「まったく甘やかしやがって。ここで厳しくするのが本当の優しさだろう? 」

ブツブツ文句を言い出すミモリ。納得が行ってないらしい。

まあ当然だよな。俺だってよく分からないんだから。


「だから私は一緒に残る。あんたは? 」

「俺は帰る。希ちゃんはどうなの? 」

「うん…… 」

どっちとも取れないが俺を気にしてくれてるらしい。だから味方だ。

「おいお前ら…… 」

大きなため息を吐くミモリ。


「よし決まりだな。さあ海。好きなようにしろ」

陸が勝手に話を終わらせる。

「ちょっと待ってくれ! 俺の立場はどうするんだよ? 」

ただの見守りであるミモリにはどうすることもできない。

説得に応じなければ黙って家に帰るしかない。

「お願いだよトケエモン! 」

久しぶりに呼んでみる。

「分かったよ。だったら風邪ひくなよ。俺は戻るからな」

ついにミモリは折れた。


「じゃあ俺も」

「従います」

陸と希ちゃんは大人しくミモリの後ろに着く。

「私は海と一緒だから」

アイミは当然とばかりに俺の後ろに引っ付く。

ありがたいがただの俺の我がまま。一緒に待たせるのはさすがに悪い。


「ほらアイミも戻ってくれ。俺一人でいいから」

突き放すがアイミは決して放そうとはしない。

どうせアイミは説得に応じない。

仕方ないのでつき合ってもらうことに。



             エピローグ後編へ続く

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