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国外追放されたマッドサイエンティスト、何を血迷ったか世直しを始めてしまう~狂科学者のオリジナル武器無双~  作者: 日和崎よしな
第2章 剣聖ホーリスと風の射手アルチェの救国

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第90話 力なき国の末路①

 ぐったりしたエルフの民たちは、中央広場の噴水前に並べられた。

 その先頭に里長のアルヒーゴ・スティッコが座っている。


「調子は戻ってきましたか?」


 ベントはエルフの民たちを拘束しなかった。

 GESの効果から回復すれば自由に動くことができる。


 そんな彼らにベントは釘を刺した。

 もしひとりでも妙な動きをすれば、ふたたびエルフの民全員がGESの餌食となると。


 拘束がなくともエルフ族はベントに対して無力なのだ。


「話くらいはできるさ。で、里をどうするつもりだ?」


 里長はうなだれて答えた。

 GESの効果から回復しきっていないのだろうが、ふて腐れているようにも見える。


 そんな里長をベントは見下ろした。


「私は戦争に勝利したので、このエルフの里をいかようにもできます。しかし、私はエルフの里の存続を認めます。もちろん、条件付きですが」


「自治は認めるが、ウィルド王国の一部として吸収されるわけか」


 里長は長い息を吐いた。


 ベントの足を見つめたまま顔を上げない。


「いえ、私はそれに関してはノータッチです」


「なに? どういうことだ?」


 里長が顔を上げた。

 険しい顔をしているが、その緑の瞳はわずかに光を宿していた。


 ベントは警戒のためエルフの民たちを視界に入れながらも、里長に視線を向けて説明する。


「べつにいいと思うんですよね、いまのままで。領土問題が未解決の状態でも、均衡が取れているのなら、それはそのままでいいじゃないですか」


「じゃあ何を要求するというのだ」


 ベントは注意を引くことを意図して大きく息を吸った。


 そしてはっきりした口調でそれを提示した。


「私の要求はふたつ。ひとつ目は開国することです。今後の鎖国を禁止します。ふたつ目はあなたを里長から解任し、新たな里長を擁立(ようりつ)することです。あなたの再任は永久に禁止します」


 ベントは彼のいだく懸念に配慮し、エルフ以外が里内に移住するのを禁止することは認めた。


 だが里長の表情は渋かった。


「認められん。とうてい、認められん……。ウィルド王国の使者でもないただの一個人が、何の権利があって――」


 ベントは小型GESの銃口、すなわち露出した一次放射器を里長のひたいに突きつけた。


 押し黙った里長に顔を近づけ、ベントは口調を強めた。


「いまここで私にあるのは、権利ではなく権力です。権利を与えられる側ではなく、与える側なんですよ」


「ウィルド王国が認めるものか!」


 里長もなかなかに強情で、ひたいに汗をにじませながらもベントをにらみ上げた。


「おや、ウィルド王国に泣きつきますか? あなたにとっての敵国に?」


「ウィルド王国は長耳族の里を自国領だと思っている。貴様が勝手に支配したところで、ウィルド王国が黙っているはずがない」


「それは私とウィルド王国の問題であり、あなたには関係ありません。親の介入を期待する子供みたいなことを言うのはやめなさい」


 里長は変わらずベントをにらみ続けている。


 あまりに強情な里長に、ベントは軽くため息をつくと、小型GESを向けたまま後方に下がった。

 そして視線を鋭くした。


「アルヒーゴ。私はこれから、ながーい講釈を垂れます。あなたはそれを一言一句、単語のひとつすら聞き漏らさぬようしてください。これは命令です。いいですね?」


「…………」


 返事はない。

 否定もなかった。


 本来は使う必要のない状況なのだが、もしこれでダメなら盲信隷属薬を飲ませようと考えながら、ベントは講演者の身振りで説教を始めた。


「まず大前提として、エルフの里を独立しているひとつの国家だと言ったのはアルヒーゴ、あなた自身です。そして、国家というのは最上位の枠組です。それより上はありません。それを踏まえ、もし国家が侵略を受けたらどうなるか。さあ、考えてみてください。国家は最上位の組織単位ですから、どんな暴虐も、どんな理不尽も、自力で跳ねのけるしかありません。土地や民を守るすべての責任は国家元首であるあなたにあります。誰も助けてはくれません。同盟国のひとつでもあれば助けを求めることもできますが、排他的なあなた方にはそういった友達はいないでしょう? だったら侵略者の支配を受け入れるしかないんです。守れなかったんだから、仕方ないんです。それが国というものなんです」


 ベントは白衣の左ポケットの中で盲信隷属薬を握りしめていたが、その手から力を抜く。

 ついに里長が折れたのだ。


「わかった。あんたの言うとおりだ。この期に及んで私が抵抗することに意味はない。国家と認められたうえでのことなら、なおさらだ」


 ベントは小型GESを白衣の右ポケットにしまった。

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