第152話 超硬装甲①(中央軍・セルフィートSide)
後衛の役割は、前衛が討ち漏らした敵を掃討し、敵をウィルド王城にたどり着かせないことである。
ピオニールの勇士で構成される中央軍の後衛は、前衛の活躍のおかげで手持無沙汰になっていた。
だが気を緩めている者などいない。それは彼らの所属ギルドのマスターたるセルフィート・メイジェスが軍隊長としてこの場にいるからに違いなかった。
当のセルフィートは後衛部隊の仲間に背を向け、立ったままその視線を遠景に注いでいた。前衛部隊が戦う様子を観察しているのだ。
その彼女のフォンに、前衛部隊長であるウォルグから通信が入った。
「ウォルグか。どうした?」
「ドリル戦車が止められん。手を貸してくれ」
銃撃音や金属のきしむ音がうるさかったが、ウォルグの力のある声はセルフィートの耳にもしっかりと届いた。
「わかった。全体の戦況はどうだ?」
「ロボットのほうは半分以上撃破したが、ペースは落ちている」
「そうか。やはり疲れてきたようだな。では前線メンバーを退かせて休ませろ。後衛が前に出て迎撃する」
一旦通信を終わり、セルフィートは妹のマイネを呼んでから後衛メンバーに号令をかけた。
「これより後衛が前衛と入れ替わりで敵ロボットの撃破にあたる。なお、私は敵の強力兵器に対処するため、その間の指揮はマイネに任せる」
「え……?」
マイネが姉を二度見して固まったが、セルフィートは彼女の両肩に手を置いて力強くほほえんだ。
「頼んだぞ!」
「あ……うん。まあ、なんとかなるっしょ……」
「その意気だ!」
セルフィートはピオニールの勇士たちとともに前線へと走った。走ってくる前衛メンバーとすれ違った先で、敵ロボットと対峙する。
セルフィートにはドリル戦車という難敵が待っている。敵ロボットのことはほかの勇士に任せて素通りしてもいいのだが、新しい槍を試したくて相手をすることにした。
セルフィートは敵ロボットの真正面から走って近づいた。
ロボットがセルフィートを射程圏内に捉え、重機関銃を備えた右腕を持ち上げる。
その瞬間、青い光が下から上へと走り、ロボットの右腕は肘から先が地面に落下した。
さらに鉄球ハンマーの左腕が動きはじめたころには、セルフィートの槍が胸の白い装甲を貫いていた。
「これはいい。鉄が水のように柔らかい」
セルフィートが槍を引き抜くと、青い光が姿を現わした。
それはやはりベントが開発してセルフィートに与えたものだった。
レーザー・ランス。
口金より先の穂の部分、つまり槍の刃の部分に青いレーザー光をまとわせることができる。
倒れたロボットを踏み台にして、セルフィートはさらに前へと駆けた。
敵ロボットがもう1機向かってくる。
レーザー・ランスは穂先の反対側にある石突きの部分に硬い金属の輪が付いている。
セルフィートがそれを右腕に着けている腕輪に当てると、カチャッという音がして、腕輪から出てきたフックが石突きの輪と噛み合った。
「そいやっ!」
セルフィートはレーザー・ランスを投げた。
青い光がまっすぐロボットへと飛び、今度は初撃で胸部装甲を貫いた。
レーザー・ランスの石突き輪にはワイヤーがつながっている。それはさっきの腕輪から伸びており、腕輪のボタンを押すとすごい勢いで巻き取られた。
セルフィートは飛んで帰ってきた高速のレーザー・ランスをうまくキャッチした。
「これは……取り損ねたら危ないな。私でなければ死にかねん」
だがこれはセルフィート用なので問題ない。セルフィートがその武器に満足していることは、彼女の笑みが何よりも物語っていた。
2機のロボットを撃破したセルフィートはふたたび走り、そしてウォルグたちの元にたどり着いた。
「待たせたな。それで、状況は?」
ウォルグはドリル戦車に加えた攻撃とその結果をセルフィートに聞かせた。その間、セルフィートとギレスはドリル戦車と横並びになって歩いていた。
「何か策はあるか?」
そう訊くウォルグの視線はセルフィートの槍に向いていた。
「私も私の武器が通じるか試すとしよう」




