第148話 剣聖の本領(北軍・ホーリスSide)
「ヤーニン、ここからは1体ずつの撃破に切り替えよう」
「ホーリスさん、俺、5列目もいけます!」
「大丈夫なのか?」
「はい!」
ほんの少しの休憩を挟み、ヤーニンは走りだした。
ホーリスもそれを追う。
1機撃破。2機、3機と順調に撃破していく。
だが5列目の折り返しである6機目でそれは起こった。
「あっ……」
ヤーニンがこけた。
そこはまだ重機関銃の射程圏内である。その照準がヤーニンへと迫る。
「させるかあっ!」
ホーリスが剣を投げた。
青い光の線が回転しながら飛んでいき、白い装甲に突き刺さった。
そこはロボットの背中。きっちりと急所を貫いていた。
ロボットの両腕がダラリと垂れる。その勢いで白い巨体は仰向けに倒れた。
「大丈夫か!」
「あ、はい……」
ヤーニンは立ち上がると、横たわるロボットに視線を向けた。
ヤーニンに怪我がないことを確認すると、ホーリスも倒れたロボットに視線を向けた。
「こちらグイル。何があった?」
「剣を投げたらロボットが刺さった側に倒れて、剣が回収不能になりました。すみません。こちらはもう敵を弾切れにさせることしかできません」
「わかった。引き続き頼む」
報告を終えたホーリスは駄目元でロボットを持ち上げようと試みたが、ロボットはビクともしなかった。
「すみません、俺のせいで……」
「いや……」
ホーリスの目が、頭を下げるヤーニンの腰に留まった。
「その剣、ボクに使わせてくれないか?」
「え、あ、もちろんです!」
ホーリスはヤーニンから剣を受け取り、柄の握り心地や剣身のサイズ、それから剣の重さや振ったときの感覚などを確かめた。
「こちらホーリス。剣を調達したので引き続き敵を撃破していきます」
「大丈夫なのか? レーザー・エンチャンターはもう使えないんだろう?」
「剣さえあれば問題ありません。マスターこそ大丈夫ですか? だいぶ息を切らしているようですが。戦士を引退した身なのだから、あまり無理はしないでください」
ホーリスの言うとおり、グイルの息はかなりあがっていた。
ひとりで1列目の5機を撃破したので無理もない。
だが休む暇はない。彼にはまだ10機のロボットが控えている。
「そうはいかないな。家を踏み荒らされて抵抗しない者などいない。ここにいる以上、俺は事務員だったとしても戦う」
「わかりました。こちらの残り14機は必ず仕留めます」
フォンから聞こえる重い銃撃音をBGMに、ホーリスは走った。
1機ずつでは時間がかかりすぎるので、さっきまでと同様にふたりでロボットの列に沿って駆け抜ける。
ヤーニンが引きつけ、ホーリスがロボットのふところにもぐる。
ホーリスが狙うのは胸部ではなく四肢の付け根。
流麗な剣さばきによって、あっという間に四肢が本体から切り離された。
撃破スピードはさっきまでとほとんど変わらない。
ホーリスの手数は4倍になったが、踊るように滑らかな動きで次々とロボットを行動不能にしていく。
ロボットの胴体や両腕が落下するたびに激しい音が響く。
「くっ!」
ホーリスが5列目最後の1機に初撃を加えたとき、刃が通らなかった。
ロボットのターゲットがホーリスに切り替わるが、刃の位置を変えて斬りつけることですぐに左腕の切断に成功した。
そのまま右腕と両脚も斬る。
「どうした?」
「剣が刃こぼれしただけです。ヤーニン、悪いけどこの剣は折れるまで使わせてもらうよ」
「はい!」
「ホーリス、あまり無理はするなよ」
装甲がない部分とはいえ、ケーブルも金属でできている。
そんな硬いものを斬っていては、剣もどんどん刃こぼれしていく。
前衛は残り10機。
ヤーニンの剣で撃破した数は4。
残り10を剣が耐えられる可能性は低い。
しかも、3人の息はかなり荒くなっている。
フォンはそんな3人の息遣いだけを勇士たちに伝えていた。
「あ、あの! 俺も戦います!」
誰かが言った。ヤーニンの声ではない。
もちろん、グイルでもホーリスでもない。
サーフェの勇士の誰かが言ったのだ。
「俺も!」
「僕もやります!」
「よし、半分は前衛に戻れ! 半分は後衛で俺とともに戦え!」
グイルの号令に気合の大合唱が応えた。




