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国外追放されたマッドサイエンティスト、何を血迷ったか世直しを始めてしまう~狂科学者のオリジナル武器無双~  作者: 日和崎よしな
第2章 剣聖ホーリスと風の射手アルチェの救国

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第106話 ピオニールのマスター代理②

「そうだな。進退は個人の自由だ。プログレスに移りたいのなら、ピオニールを脱退してプログレスでランク5thからリスタートすればいい」


「ボクはそれでも構わないよ」


 ホーリスが即座に答えた。


 ベントは即座に首を横に振った。


「いえ、時間の猶予はあまりないので、ランク1stのまま来ていただく必要があります。さっきも言ったように、ランク1stの勇士を引き入れてプログレスを大ギルドにすることが目的ですから」


 ホーリスが少し寂しそうな顔をしたので、ベントは「シエンスの脅威がなければ、友人としてランクに関係なく歓迎したいところですが」とフォローを入れておいた。


 セルフィートが組んでいた腕を解き、両手を左右の腰に当てた。


「移籍となるとギルド間の手続きの問題になる。マスター代理である私が認めなければ通らない」


 ベントの目論見(もくろみ)は失敗したかに思われたが、しかしこの展開はベントにとっては想定内のものだった。


 ただ、こうなるともう最終手段を持ち出すしかない。


 誰もが薄々は想定しているであろうこの手段を。


「ならばセルフィートさん、あなたに決闘を申し込みます。私が勝てばホーリスさんを移籍させてください」


「受けなければ済む話だ」


 その返答も想定内。


 ランク1stのプライドを刺激したところで答えは変わらないだろう。


 だったら逃げ道を奪うしかない。たとえそれが倫理にもとるやり方であったとしても。


 すべてはウィルド王国をシエンス共和国の侵略から守るためなのだから仕方がない。


「受けていただけないのなら、力ずくであなたを私の傀儡(かいらい)にして無理やり了承させます。バーキングのマスターのように」


 バーキングのマスターであるカリナーリ・アルテは盲信隷属薬によってベントに服従させられている。


 といっても、カリナーリの自我はかなり強く、薬がどこまで効いているかは定かではない。


 単純に力でねじ伏せられたから言うことを聞いているだけの可能性もある。


 しかしカリナーリがベントの傀儡になっているという事実はセルフィートも聞き及んでいるようで、いまの言葉はないがしろにはされなかった。


「いずれにしろ戦うことになるか。ならば決闘を受けて勝利の報酬を約束させたほうが得というもの」


 ベントの宣言は脅迫に値するものなので、セルフィートは自警権を行使してベントを逮捕することができる。


 だがそのためには、結局のところ一戦交えなければならない。


 勝った場合のうま味と負けた場合のリスクを(かんが)みると、決闘という形で戦ったほうが賢明というわけである。


「ええ。あなたが勝てば、どんな要求にも応えますよ」


「私が勝てば、そうだな……ピオニールの勇士全員にエアバイク改を無償で提供してもらおう。戦士にも、職員にもだ」


 捕らぬ狸の皮算用でもしているのか、セルフィートの微笑にギラつきが加わった。


 もしかしたら最初からこういう展開に持ってくる魂胆だったのかもしれない。


 一度はそう考えたが、さすがにそれは邪推が過ぎるだろうと思いなおし、ベントはその可能性については切り捨てることにした。


 なんにせよ、力ずくで解決できるのであれば、これほど楽なことはない。願ったり叶ったりである。


「それで構いません。明日にでもギルド経由で果たし状を送ります。場所や日程の希望があれば聞きますよ」


 決闘の段取りに関する調整が済むと、セルフィートはひと足先にホームから外へ出ていった。


 ベントが自分もプログレスのホームへ帰ろうと一歩を踏み出したところで、ウォルグが声をかけてきた。


「ベントよぉ、おめぇがピオニールに来るって選択肢はねえのか?」


「プログレスを拠点として研究室や工場を建てているので、拠点は移せません」


「そうか。それは残念だ」


 ウォルグは「まあ、頑張れよ」と最小限の応援を残してホームの奥へと入っていった。


 ベントもピオニールのホームを出ると、ホーリスとディーアがホームの外まで見送りにきてくれた。


「ベント殿、ピオニールの勇士はかなり多いけれど、大丈夫なのか?」


「たしか60人くらいいたはずです」


 ベントは自分を心配してくれるふたりに対してキョトンとした顔を向けた。


「決闘は1対1ですよ」


「いや、それはそうなんだけど、そうじゃなくて……」


「もしかしてエアバイク改の在庫を心配しているんですか? 私が負けた場合の処遇が何であろうと問題にはなりませんよ。私が勝つので」


 ホーリスとディーアは顔を見合わせた。


 夜風が赤と緑の短い髪を揺らす。


「ベントさんの心配なんて無意味でしたね、師匠」


「ああ、そうだな」


 ふたりの顔にまとわりついていた不安の色はすっかり消えていた。

 むしろ笑みすら浮かべている。


 ベントがエアバイク改にまたがると、ホーリスがすぐ横まで駆け寄ってきた。


「ベント殿。言いそびれていたが、叡士爵の奉受、おめでとう」


「ありがとうございます」


 ベントは小さな笑みと会釈で応えてから、自分のホームに帰るべくエアバイク改をメシス橋へと走らせた。

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