↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
国外追放されたマッドサイエンティスト、何を血迷ったか世直しを始めてしまう~狂科学者のオリジナル武器無双~  作者: 日和崎よしな
第2章 剣聖ホーリスと風の射手アルチェの救国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
106/178

第105話 ピオニールのマスター代理①

 ホーリスの移籍を歓迎していない目は、リベールのほかにもうひとつあった。


「ピオニールのマスター代理として、ホーリスの移籍は認められないな」


 セルフィート・メイジェスである。


 さっきのリベールは完全に個人的な感情で異論を挟んできたが、セルフィートはマスター代理というポジションを持ち出してきた。


 赤と黒を基調とした騎士服をビシッと着こなし、美しく長い黒髪に赤いケープが映えている。

 ピオニールのマスター代理という立場的な説得力はじゅうぶんに有していた。


 視線で射抜かれそうなキリッとした目には威厳があり、そんな彼女が発する言葉には重みがあった。


「マスター代理? 初めて聞いたシステムなのですが、それはどういったものですか?」


「ピオニールのマスターは不在にしていることが多くてね。だがそれではギルドとしての判断が必要なときに決裁が遅れてしまう。だからマスター不在時には私がその決裁権を預かっている」


 ピオニールのマスターであるエメル・ポーアはまだ現役だとベントも聞いている。


 だが最前線で活躍しているのはセルフィートだって同じはず。なぜマスターなのに不在が多いのか。


 そのような些細な疑問点はたくさんあるが、すべて確認していては話が進まない。


 ベントは必要なことだけを順に確認することにした。


「マスター代理についてはわかりました。しかし、ホーリスさんがどこのギルドに在籍するかは個人の自由ではないのですか? なぜギルド側が移籍に口を差し挟むのですか?」


 ふたつのポーカーフェイスが向かい合って火花を散らす。


 ベントは完全なる無表情だが、セルフィートは余裕のある笑みをずっと維持している。


「それはピオニールが特別なギルドだからだ。緊急時にはウィルド王城を守護する役割を担う。つまり、ピオニールの勇士は半ば公人という位置づけでもあるのだ」


 それからセルフィートはウィルド王国の最高戦力たるランク1stの勇士がピオニールに集中している妥当性をも説いた。


 ホーリスは戦力が過剰だと言ったが、それは北方で起きたスタンピードにおいてはそうだったとしても、もしシエンス共和国が攻めてきた場合にはそうとは限らない。


 むしろいくら戦力があっても多すぎるということはない。


 ウィルド王城やピオニールはウィルド王国において特に内陸部に位置し、すなわち地理的にシエンス共和国との国境に近いのである。


「シエンス共和国相手にいくらランク1stの勇士を集めたところで無駄ですよ。むしろ私はシエンス共和国に対抗するためにホーリスさんをプログレスに引き入れたいのです」


 当然ながらそれだけを言っても全員の頭上にハテナが浮かぶので、ベントは意図するところを詳しく説明した。


 ウィルド王はまだ情報を公にしていないが、シエンス共和国との戦争の時が近くまで迫っている。


 その戦争において、ウィルド王国側を動かすのはベントになる。


 先日、ウィルド王から叡士爵(えいししゃく)を授かったのも、それを想定してベントの発言力を増すためだった。


 しかし、それでは足りない。


 ベントが所属するギルド・プログレスは全ギルドで最弱と言われている。


 ウィルド王国の勇士たちも最弱ギルドの勇士に動かされたくはないはずだ。


 プログレスに大ギルドの仲間入りをさせる必要がある。


 プログレスに所属しているのは、ランク2ndの勇士は現役を引退したマスターのグイル・マステルのみで、ほかはランク3rd以下。しかも人数も少ない。


 だから、大ギルドにしかいないランク1stの勇士を入れることで、プログレスを大ギルドに仲間入りさせたいのである。


「ベントよぉ、いちおう訊くが、なんでホーリスなんだ? ピオニールにはランク1stは3人いる。マスターを除けばな」


 セルフィートが何かを言うより先に、ウォルグが質問を投げてきた。


 表情に感情はのっていなかったが、なんとなくホーリスへの嫉妬心から生じた疑問のようだった。


「ホーリスさんがアルチェさんと仲がいいからです」


「……それだけ、なのか?」


「そうですよ。ギルド内に不和があると面倒ですから」


「そ、そうか……」


 ウォルグはククッと愉快そうに笑った。


 みんながウォルグに注目したので、ウォルグはその視線を押し返すように手を振った。


「邪魔したな。話を進めてくれ。ちなみに俺はベントを応援するぞ」


「ありがとうございます」


 話の中心はふたたびベントとセルフィートに戻った。


「ベント殿、王家から通達されたのならば従うが、現状では君の話を鵜呑みにできないし、了承もできない。君の叡士爵に貴族級の権威があるとしても従えない。ランク1stの勇士には貴族以上の権威性がある。強い凶獣を倒すには頼らざるを得ない存在だからな」


 ウィルド王国とシエンス共和国の国交はあるものの、シエンス共和国による技術力の独占が両国の緊張状態を生んでいた。


 表面的には互いにただの隣国だが、内心では敵国と認識している者がほとんどである。


 しかし現状、戦争になるとまで思っている者は少ない。


 緊張状態のなか個人の暴走を生まないためにも、シエンスと戦争になることを直前まで伏せる王家の判断は妥当といえる。


 だからこそ、必要な相手にはベントが個人的にシエンスとの戦争について知らせ、準備を進めなければならない。


「そうでしょう、セルフィートさん。権威性が重要なのです。だからこそホーリスさんの引き抜きが必要なのです。ところでセルフィートさん、いくらピオニールの勇士が公的な位置付けにあると言っても、個人の進退は個人の自由ですよね? 個人の権威性で言っても、ホーリスさんはあなたと同じランク1stですよ」


 セルフィートはベントの言を受けて腕を組んだ。

 元々鋭い目つきがさらに鋭くなっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。