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国外追放されたマッドサイエンティスト、何を血迷ったか世直しを始めてしまう~狂科学者のオリジナル武器無双~  作者: 日和崎よしな
第2章 剣聖ホーリスと風の射手アルチェの救国

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第103話 ヘッドハンティング①

「ごめんくださーい」


 そう言ってピオニールのギルドホームに入ったとき、他人の機微に無頓着なベントでもただならぬ雰囲気を感じ取った。


「すみません、取り込み中でしたか?」


 毛を逆立てたウェアウルフの巨漢、ウォルグ・エフカイン。


 それから、勇士にしては小柄な赤髪の少女、ホーリス・ウォルド。


 対峙するふたりの(かも)し出す空気は、隙を見せた者から焼き殺しそうだった。


 そのふたりが同時にベントへと視線を移した。


「……よお、ベントじゃねえか」


 先に反応したのはウォルグだった。


 牙を剥き出しにしていた彼は、ベントを見つけるや、まとっていた熱をじんわりと放出した。


「どうも」


 ベントがウォルグからホーリスに視線を移すと、彼女も険しい顔を崩し、苦笑を浮かべた。


「ベント殿……。見苦しいところを見せてしまったね。ピオニールに何か用かい?」


 ベントにとって、このふたりがにらみ合う状況に遭遇するのは2度目である。


 前回は邪魔をするなと邪険にされたが、今回は違う。


 ベントは遠慮なく本題に入ることにした。


「ええ、まあ。ピオニールというか、ホーリスさんに用があって来ました。ホーリスさん、うちのギルド、プログレスに移籍してもらえませんか?」


「えっ?」


 ベントの言葉にホーリスが固まった。

 ホーリス含め、そこにいるピオニールの5人全員が目を見開いて固まっている。


 しばしの沈黙が場を覆ったが、そこで最初に口を開いたのはウォルグだった。


「いいじゃねえか。ピオニールの戦力は過剰って言っている当人に引き抜きの打診が来たんだ。断る理由はねえはずだ」


 ウォルグがホーリスの背中をバシンと叩き、ホーリスは3歩ほど前に押し出された。


 ベントとホーリスの距離が、さっきまでのウォルグとホーリスの距離になった。


 ホーリスは気まずそうにうつむいて視線を逸らした。


「ベント殿、お誘いは嬉しいけれど、弟子のディーアを残しては行けない。すまない……」


「ディーアさんがよければ、ふたり一緒に来ていただいても構いませんが」


 ベントとホーリスの視線が同時にディーアに向く。


 追随するように、ウォルグ、セルフィート、リベールの視線もディーアに注がれる。


「え、あ、あの、私は……」


 ディーアは視線を右往左往させて戸惑いの色を見せたが、拳を握るとホーリスの目をまっすぐに見つめ返した。


「私は、プログレスには行きません。でも、師匠は己の望む道に進んでください」


「だけど、ディーア……」


 ディーアを想い、ゆらめくホーリスの瞳。


 しかしその瞳の先にあるのは、エルフの強き眼差しだった。


「師匠、私、里に帰ります。私、ずっと考えていたんです。半端な気持ちでエルフの里長の座にいちゃいけないって。このまま里長を続けるのか、誰かに引き継ぐのか、それを決めるためにも、いまは現里長としての役目を果たすべきだと思うんです」


 そう言い切ると、ディーアは柔らかくほほえんだ。

 それから「里長がずっと里を離れているわけにはいかないですから」と付け足した。


「わかった。じゃあボクは快くベント殿のお誘いを受け入れようと思う」


 ディーアの微笑がホーリスにも伝染し、柔らかな視線がベントへと向けられた。


 しかしベントは無表情である。


 ベントはまだ目的を達成できたと考えていない。

 この場にはまだホーリスの移籍を歓迎していない目がある。

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