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国外追放されたマッドサイエンティスト、何を血迷ったか世直しを始めてしまう~狂科学者のオリジナル武器無双~  作者: 日和崎よしな
第2章 剣聖ホーリスと風の射手アルチェの救国

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第101話 埋まらない溝①(リベールSide)

 1日が経ち、時は夕刻。


 セルフィートに3つ目の依頼品を納めたリベールは、ホームの共用テーブルでぐったりとしていた。


 今日の納品物はセルフィート専用の戦闘サポート機械。


 セルフィートがリベールの想定を超えてそれを使いこなしたため、昨日のような酷評は受けなかった。

 むしろ満足している様子だった。


 最低限の労いしかもらえなかったのは、昨日のマイナスが利いているからに違いなかった。


 リベールは胃痛の原因たる納品をどうにか乗り切ったが、昨日までの疲労と昨日からの心労で完全にくたびれていた。


 そんなリベールだが、ギルドホームの玄関から赤髪の少女が入ってきたのを見るや、すぐに姿勢を正した。

 ホーリスにはだらしないところを見られたくないからである。


 ホーリスのすぐあとから、彼女の弟子であるエルフのディーアも入ってきた。


 以前はよくふたりで行動していたが、最近だと一緒にいるのは珍しい。


 そもそもディーアがギルドに顔を出したこと自体が久しぶりだった。


 リベールがホーリスに声をかけようと立ち上がったとき、ホームの奥からドンと激しく扉が開かれる音がした。


 重い足音と振動を響かせてやってきたのは、ウェアウルフのウォルグだった。


 タイミング的に標的のにおいを嗅ぎつけてやってきたのだ。


「おい、ディーア!」


「えっ、はい。何でしょう……?」


「なんでしょう、じゃねーよ! おまえ、エルフの里長になったんだろうが。だったらエルフの非礼の落とし前をつけろよ」


 エルフの非礼。

 その話はリベールも耳にしたことがある。


 以前、エルフの民がエルフの里外の森でウェアウルフを凶獣ドギーと間違えて攻撃したという事件があったらしい。


 さいわいながら放たれた矢は外れたが、矢を放った当のエルフは詫びるどころか「紛らわしい!」と毒づいて去っていったという。


 ドシドシと床を鳴らして進むウォルグ。


 ディーアはホーリスの横を抜け、怒りの熱気を放つウェアウルフの元へと駆け寄って見上げた。


「その話はうわさでは耳にしましたが、エルフの民からは報告を受けていません。謝罪するにしても、まずはエルフの里で事実確認をさせてください」


 ウォルグが眉間にしわを刻んだ。

 目が鋭くなり、牙を剥き出しにする。

 長い爪が握り込まれている。


 ディーアのうしろでホーリスが剣の柄に手を添えた。


 リベールはホーム内を満たす緊迫感で溺れそうになった。


「だったら、さっさと確認してこいよ! 礼儀のないやつが正直に名乗り出るとは思えないがな。それでもし犯人がわからなかったら、ウェアウルフの言いがかりとでも言うのか? なあ、エルフの里長さんよ」


 ウォルグの高圧的で一方的な物言いに、ディーアは口を引き結んでいる。


 他人事ながらリベールの胃にダメージが入る。「もし彼女が自分だったら」などと想像したくはないが、つい想像してしまう。


 何か言うとウォルグの逆鱗に触れそうだし、沈黙していても神経を逆なでしそうで詰んでいる。


 リベールが小さくなって気配を消していると、逆にディーアの前に出て勇敢にも恐ろしい顔を見上げる者がいた。


 もちろん、ホーリスである。


「ウォルグ、いい加減にしろ。里長だろうが何だろうが、当事者でもないディーアに強く当たるのは大人のすることではないよ。ランク1stの勇士としての品格にも欠ける。ディーアの師匠として、そしてキミと同じランク1stの勇士としても見過ごせない」


 ホーリスの毅然とした態度に、ウォルグはいっそう毛を逆立たせた。


 全身から熱気が放たれ、ホームが暑くなる。


「ホーリス、テメェにも文句があんだよ。しかもテメェは当事者だ」


「ボクに心当たりはないけれど、いちおう聞いてやる。どうせ言いがかりだろうけれど」


 ウォルグの口元がヒクついている。


 ふたつの鋭い視線がぶつかり合う。


「おまえ、エルフを助けてそのお礼にエアバイク改をもらったらしいな」


 厳密にはアルチェを助けたお礼としてベントがホーリスにエアバイク改を贈ったのである。


 アルチェはエルフなので、ウォルグの言うことは間違いではない。


「何が言いたいの? 単なる嫉妬なら、これ以上は取り合わないよ」


「ふざけんな! そんなわけねーだろ! スタンピードへの対処は勇士全員の役割だ。おまえが本来の持ち場ではないエルフの里を助けてそのお礼にエアバイク改をもらっている間に、ほかの勇士たちがおまえの抜けた穴を埋めてんだぞ」


「はっきり言ってピオニールの戦力は過剰だよ。戦力不足で窮地に陥っていたエルフの里を助けに行くことは理にかなっているし、妥当だと思うけれど」


 ピオニールの勇士たちがちらほら退散しはじめるなか、リベールはできるだけ視線を逸らしつつ、ふたりのやり取りに耳を傾けつづけた。


 ウォルグとホーリスは元々犬猿の仲だった。

 ウォルグが嫌いなエルフ族をホーリスがよくかばうからである。


 そして最近はウォルグのホーリスに対する当たりがいっそう強くなっている。


 その原因は明らかになっていて、きわめてレアなランク1st向けの依頼がホーリスに取られたからだった。


 遠方からの依頼となると、どうしても長距離を速く移動できるエアバイク改を持っているホーリスのほうが適任になってしまう。


 ウォルグにとって、ホーリスは目の上のたんこぶなのだ。

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