第65話 一段落?(表)
「金星、本当に大丈夫なの?」
いわゆるチンピラに絡まれたわけだが、あれから数時間が経過し、俺たちは昼食を取っていた。俺と紫苑は今、自動販売機で皆のドリンクを取ってきているところだ。
あの後、騒ぎを聞きつけた周囲の大人たちが集まり、俺たちの安否を確認してくれた。ライフセーバーの人も来て、次に同じようなことがあれば厳重に注意をすると言ってくれた。幸い、相手の姿はそれ以降見かけていないが、また現れる可能性もゼロではない。
「平気だ。そんなことよりも、紫苑さっそくだが頼みごとがある」
「何?」
「コーヒーのブラックは飲めるか?」
「えっ?何急に?飲めるけど」
「間違えて、ブラックを押してしまったから飲んでほしいんだ」
「別にいいけど……」
紫苑は少し戸惑いながらも、俺が渡したブラックコーヒーを受け取り、飲み始めた。
「ありがとう。それじゃ、皆のところに戻るか」
「待って…………」
俺と紫苑は少しだけ話をした。
数分後、皆が座っている席へと戻ると真希が俺の下へと駆け寄ってきた。
「兄さん!紫苑さんと何を話していたの?」
真希は紫苑をお姉さんとして慕っている。理由は「ある部分が大きい」からだそうだ。首元から下、おへそから上の大山だとは思う…………
「別に、大したことじゃない」
軽く言葉を濁したが、真希の目はじっと俺を見つめている。
「嘘、兄さんが嘘をついてる」
確かに少しばかりごまかしている部分はあるが、そこまで話すような内容ではない。紫苑と俺だけの会話だ。
「何もな」
「兄さん!?」
真希は俺をじっと睨みつけた後、大きくため息をつく。そして、次の瞬間、視線を紫苑に向けた。
「紫苑さん、兄さんと何を話していたの?」
「えっ……えっと、本当に何も特別なことは話してないよ。ただの世間話」
紫苑は少し戸惑いながらも落ち着いた声で返す。しかし、真希は納得していない様子で紫苑を指さした。
「怪しい……紫苑さん!私と勝負をしましょう!」
「えっ?どうしたの急に?」
「もし、私が勝ったら、話の内容を聞かせてもらいます」
「ちょ、ちょっと待って!勝負って何をするつもり?」
紫苑が慌てた様子で尋ねると、真希は胸を張って宣言する。
「もちろん、水泳勝負です!」
「水泳か……でも、真希ちゃんには勝てる気がしないなぁ」
「紫苑さん、負けるのが怖いなら、ちゃんと正直に話してくれてもいいんだよ?」
真希の挑発に、紫苑は少し困った表情を浮かべる。
負けず嫌いの紫苑は顔を少しピクッと動かした。
「うーん、わかった。勝負に乗るよ。でも条件がある」
「条件?」
「私が勝ったら、金星を一日だけ借りるから」
「なっ!まぁまぁいいでしょう!勝負です!」
こうして、戦いの火ぶたは切って落とされたのであった。




