第64話 どこに行ってもトラブル(表)
「おいおい、何してんだお前ら」
駿斗が真希たちを囲んでいた男たちに声をかけた。
男たちは高校生くらいに見える。プールに浸かっているせいで身長は分かりづらいが、そのがっしりとした体つきから、運動部に所属している可能性が高い。人数は6人。周囲の人々は関わらないようにと距離を取っているが、遠巻きに状況を見守っている。
「なんだよ、知り合いか?つまんねぇなぁ……まぁ、構わないけどな」
一人、金髪の男が真希の肩を掴みながら話を続けた。
「なぁ、俺たちと遊ばないか?」
「何、この手?」
「おっ、いい顔するねぇ~どタイプだわ!この子、俺の彼女ってことでいい?」
金髪は仲間たちにそう言いながら笑う。
「勝手にしろ」
「はぁーい、ってことで君、今日から俺の彼女ねぇ~」
男が調子に乗って真希の肩を引き寄せようとしたその瞬間、真希がピシャリと言い放った。
「やめてっ!私を触っていいのは兄さんだけだから!」
金髪の男は一瞬ポカンとした表情を浮かべたが、すぐに顔を歪め、誰かを探すように視線を動かした。
「お兄さんがいるのかぁ~それは挨拶しないといけないなぁ~。どこにいますか~お兄さん~?」
真希の視線が俺に向けられる。金髪はそれを見逃さなかった。
「ほほう、君がお兄さんかぁ~」
「おい!いい加減にしろ!」
駿斗が我慢ならなかったのか、強い口調で声を上げた。すると、金髪は振り返り、苛立った表情を見せる。
「うっせぇな!!!俺は今、お前じゃなくてそっちのお兄さんに話してんだよ!!!」
金髪の怒鳴り声に、駿斗は一瞬たじろいだが、すぐに立て直した。
「これ以上何かするなら、大人を呼ぶぞ」
駿斗の冷静な言葉に金髪は舌打ちをし、真希の肩から手を離した。そして、ゆっくりとプールから上がり、駿斗の前に立つ。
水から現れたその体は鍛え上げられた筋肉と190cm近い長身で、一見して威圧感がある。金髪は駿斗を見下ろしながら、不気味な笑みを浮かべた。
「てめぇ、邪魔すんじゃねぇよ」
そう言いながら、金髪の男は腕を伸ばし、駿斗の首元を掴むと、力任せにゆっくりと持ち上げた。
「くっ!」
駿斗も175cmと身長は高い方だが、目の前の男と比べると小柄に見える。今ではその足が完全に地面から離れ、宙に浮いている状態だった。
ここで実力を発揮してこの男を倒すのは簡単だが、そんな行動は目立ちすぎるし、避けたい。ならば、別の方法を取るしかない。
俺は金髪の腕に手を乗せ、大げさに情けない声を張り上げた。
「や、やめろーーー!!!」
金髪は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに険しい表情を浮かべ、俺の方を睨みつける。そして、突然振りかぶって俺の顔面を殴りつけた。
衝撃で俺は後方へと飛ばされ、床に転がる。体に響く痛みと共に、周囲の視線が集まるのを感じた。
「お兄さんだからって、調子乗んなよ?」
金髪は吐き捨てるように言ったが、その場に漂う雰囲気の変化を感じ取ったのか、周りの視線を気にして少し表情を曇らせた。
「おい、お前、やりすぎだって!」
仲間の一人が金髪の腕を掴み、慌てて止めに入る。
それもそのはず、俺が大声を出したせいで周囲にいた人たち全員の目をくぎ付けになっており、俺が殴られるところを目撃していたからだ。周囲の視線は最悪であり、いつ大人を呼ばれるか分からない状況になっていた。
「チッ!……くだらねぇ。逃げるぞ」
金髪は舌打ちしながら駿斗をプールへと放りなげ、仲間たちと共にその場を離れていった。




