第63話 水着は最高かもしれん。いや、最高だ(表)
プールに来てから数時間が経過していた。
背中の傷を隠している絆創膏は、まだ剥がれていない。
春歌が作ってくれた俺専用の絆創膏、通称「ガーゼたん」は、肌の色に溶け込むように作られており、近くから見ても気づかれないほどだ。
小学校の頃、プールの授業でこれを使って凌いでいたのを思い出す。他の奴に傷を見られたら大騒ぎになることは火を見るよりも明らかだったからだ。
合宿の際に岩で背中をぶつけたときは剥がれてしまったが、こうしてしっかり貼り直せば問題ない。
まぁ、成長したこの筋肉はどうしようもないので、今回はラッシュガードを着ている。
水の音や人々の笑い声が絶え間なく響く中、俺は少し離れた場所で座りながら周りを眺めていた。
「にしても、こういう場に来ると、自分が男であることを嫌でも自覚するよな」
隣にいる駿斗が突然そんなことを言い出した。
「……水着って、最高だな」
駿斗がしみじみと言葉を続ける。
「あぁ」
俺もつい、頷いてしまう。
真希や夏菜、千明たちが平坦なプールでボールを飛ばしながら遊んでいる。水しぶきが弾ける中、楽しそうな声が響いてくる。
その光景を、俺と駿斗はただ静かに眺めていた。
所持金は1000円になった俺、しかし、今は不思議とここに来てよかったと思っている自分がいる。
「なんて言うか、あの見えそうで見えないハラハラがなんともまぁ、いいスパイスなんだよなぁ~」
「……そうかもな」
駿斗って以外とおじさんみたいなことを言うんだよなぁ。
そんなことを心の中で思っていると、駿斗が俺のことをじっと見てきた。
「あっ!お前、今、俺の事おじさんだと思ったろ?」
感が良すぎると、困ることもあるんだが………
「お前に嘘は通じそうにないな」
「そりゃ俺に嘘がつけるのは、この世で一人くらいなものよ」
「そんな人物いるのか?」
「いるんだわこれが………困った困ったって、あいつら男どもに絡まれてるぞ?」
駿斗が驚いたような声を上げた。
視線を向けると、確かに向こうで遊んでいた男たちがぞろぞろと真希たちに近づいている。最初は軽い挨拶程度かと思っていたが、今では完全に囲むような形になっている。
まさか、真希たちを囲むとは何と自殺行為……いやいや、ここは行くべきだな。
俺と駿斗はその場へと急いだ。




