第62話 金はないが(表)
ここはかなり大きいプールだ。
中央には流れるプールがゆったりと蛇行し、その周囲には子供たちが遊べる浅瀬やスライダーがいくつも配置されている。さらに奥には、大人向けの静かなエリアもあり、リゾート感を漂わせるジャグジーや日陰でくつろげるパラソルが整然と並んでいる。
周りには色とりどりのビーチチェアが並び、訪れた人々の笑い声や水しぶきの音が絶え間なく響いていた。どこを見ても開放的で、夏らしい活気が溢れている。
着替えが終わり、女子更衣室から少し離れたところでプールを一望していた。
そんな俺は気分が下がっていた。
理由はお金だ。
本当はせっかくプールという遊び場に来たのだから楽しめばいい。そう考えることが出来ればどれだけ気楽だったか。
しかし、交通費、入場日、水着代で軽く1万円は飛んだ。
それに良太への刀の依頼料、アームドを渡せなかった分の偽り料、そして駿斗への資金渡し…………現在、俺の貯金残高は1000円だ。
ここまで、金欠に陥ったことがなかった俺は、かなり焦っている。正直、今日の誘いは土壇場でキャンセルしようと思っていたのだが、真希が俺の思考を読んだかの如く睨みつけ『絶対に来い』と圧を掛けてきたのだ。
こうなっては仕方ないと満を持してきたが、結局こうして気分が下がっている。
「兄さん……おまたせ」
数分間、ぼんやりと考え事をしていた俺の前に、水着姿の真希が現れた。
明るいブルーの水着は、真希の活発さと清楚さを引き立てていて、正直、似合っていると思った。
「どう……かな?変じゃない……よね?」
真希は少し照れたように、視線を泳がせながら俺に尋ねた。その様子はいつもの堂々とした彼女とは違い、少し新鮮だった。
「似合ってるから安心しろ」
俺がそう言うと、真希は一瞬驚いた顔をしてから、照れ隠しのように笑った。
「そ、そっか!よかった!じゃあ、行こう!」
真希は再び俺の腕を引っ張り、勢いよくプールの方へと向かおうとする。
その時、もう一方の腕に何か柔らかな感触を感じた。
「まっ、待って!!!」
そちらを振り返ると、夏菜が顔を赤くしながら俺の腕を掴んでいた。
「わっ、私も………見てほ……しい……」
夏菜の声は震えていて、小さくなっていく。真希と違って、どこか不器用な感じがする。俺は少し困ったように眉を下げながら、夏菜を見た。
「見てほしいって……」
そう尋ねると、夏菜はますます顔を赤くして俯きながら、震える手で自分の水着を指さした。
彼女が着ているのは、淡いピンクのフリル付きの水着だ。彼女の雰囲気に合っていて、可愛らしいと思った。
「……似合ってるが……駿斗に見せなくていいのか?」
俺がそう言うと、夏菜はほっとした顔を見せたのもつかの間、すぐに夏菜が固まってしまう。
「ちょっ!ちょっと!あの話は忘れてって言ったじゃん!!!」
後ろの方で見ていた紫苑が駆けつけて俺の背中を叩いてきた。
「駿斗がいなければ別に問題ないと思うが」
「問題大ありです」
「5人ともお待たせ~ってあれ?駿斗君は?」
「流れるプールを堪能中だ」
俺が指を指すと、そこへ千明は視線を送る。
「本当だ。じゃあ、皆で行こうよ!」
「あぁ」




