第60話 今までのこと そして……
春歌は俺の幼なじみであり、Rの「命」として重要な役割を担っている。
彼女の両親もまた「命」として活動しており、その後継者となるべく、春歌は幼い頃からさまざまな医療技術を叩き込まれてきたという。
その訓練内容は、想像を絶するほど厳しく過酷なものだったらしい。一例を挙げるなら、亡くなった人間の解剖を実際に行ったことがあるという話も聞いた。普通の精神では耐えられないような環境で育ち、その中で彼女は驚異的な集中力と耐性を身に着け、最年少で医療技術を習得した。
一郎と戦う数週間前のこと。
良太の技術と、春歌の医療技術を合わせて作り上げた万能医療器具「クモちゃん」
が完成した。
「できたぁーーーーーーー!!!!!でも、これで何をするの?金星がどうしても作ってほしいって言うから興味本位で作ってみたけど」
「我右腕よ。それは僕も気になっていたところだ。さすがに聞かせてくれるんだろうな」
「戦力を増やすためだ」
「えっ?」
「はっ?」
「とりあえず、これを大量生産してくれ。そうだな、おおよそ1000個といったところか。いや、あればあるだけ有難い」
「えっ?」
「はっ?」
一郎と出会った。
俺は刀を捻り、一郎の息の根を確実に止めた。
その後、「クモちゃん」を一郎の体内へ忍び込ませる。小型の機械が無事に作動し、死んだはずの一郎は再び息を吹き返した。
俺は、部屋にいる3人に向けて話を始めた。
「Rを壊滅させるだぁ?……金星、お前、本気で頭どうかしちまったんじゃねぇか?」
「金星、それ、本当に言ってるの?」
「我右腕……」
「そうだ、俺はRを壊滅させる。そのためには、お前たちの力が必要だ。」
「はっ!付き合ってられるかよ!」
一郎がベッドから降りようとした瞬間だった。突然、彼の体に電気のようなものが走り、全身を痙攣させながら床に倒れこんだ。
「ぐはっ……!」
床に伏したまま、一郎が俺を睨みつける。
「てめぇ……何しやがった」
「俺に従わないなら、お前は俺にとってただの邪魔者だ。俺の言うことには従ってもらう。拒むなら、このように体内に仕込んだ『クモちゃん』の電気ショックで弱らせ、いずれ殺すまでだ」
「クソが……!」
「憎しみを俺に抱いても構わない。だが、お前の本当の自由は訪れることはないかもしれない」
「どういう……ことだ」
「ある人物を加えた時に話す。それまでは、待て」
「チッ」
この方法を使い、俺は、戦力となり得る強者たちを次々と仲間に引き入れていった。一郎と同じように、『クモちゃん』を体内に忍び込ませて支配する。これの繰り返し。
もちろん、すべての人間を支配下に置いたほうが効率はいい。しかし、それでは俺の計画が露見するリスクが高まる。そのため、少数精鋭で戦力を増大させる方針を取った。慎重に選び抜いた者たちを支配下に置きながら、俺の計画を進めていく。
そして迎えた林間合宿の日。そこで俺は、この世界の裏側に隠された秘密の一端を『織田』から聞いた。
爆弾が発動しないという希望を得た代わりに、24歳以上の全人類がRの支配下という絶望を得た。
爆弾を処理することから始めなければならなかった俺にとって、大きなメリットと同時に、さらに大きな作戦を考えなければならなくなった。
その後、合宿で対峙した『鈴木』もまた、俺の敵ではなかった。しかし、強かった。激しい戦いの末、俺は鈴木の体内に『クモちゃん』を仕込むことに成功した。
鈴木は任務のターゲットだったためだ。一度、目に預けた。
…………鈴木にそっくりの焼死体を。
目は勘違いをし、俺の報告書を受け取ったが、未だに気づかれていない。
そして鈴木も、俺に従う者の一人となった。
現在
俺は今、紫苑を戦力に加えようとしている。
……絶望に抗うためには「00」が必要だ……




