第58話 本性を暴く覚悟
俺は足を負傷している。台の上に立つリーダー的な奴の実力も不明、周囲には武装した敵が複数。そして広場には5000人近くの人質がいる。
俺ひとりなら何とかやりようはあるかもしれないが、ここには真希と夏菜もいる。それに周囲の人が邪魔だ。動けば「R」の存在が露呈するだけでなく、俺が普通の中学生ではないとバレる。それだけは避けなければならない。
非常に厳しい状況だ……紫苑がいなかったらの話だが。
俺はこの状況が始まってから、背中越しに座る紫苑の行動をずっと伺っていた。
この出来事はすべて偶然だ。そう……ただの偶然。
俺と真希がショッピングモールに来たのも、夏菜と紫苑が同じ日にここにいたのも、そして大阪の奴らがここを襲撃してきたのも。
一見、最悪に見えるこの状況。だが、実は悪くない。
紫苑は俺と真希が『R』の関係者だとは知らない。それが今の俺にとって唯一の救いだ。そして、紫苑が仲間思いであることは俺も知っている。彼女なら必ず動くだろう……俺たちを助けるために。
話し合いが通じる相手ではない以上、この状況を打破する方法は一つしかない。
『実力行使』
もし紫苑が他の組織で教育を受け、並外れた身体能力を持つのなら、必ずその力を使うはず。その瞬間、彼女の本性が明るみに出る。
本当は、プールで仕掛ける予定だった。だが、この状況を利用しない手はない。
数分後、その瞬間は訪れ、紫苑はついに動き出した……
周囲の人間をあっという間に倒し、台の男へと切り込む。
紫苑が殺気を出したと聞いた時、信じたくはなかった。けれど、目の前の光景は真実だ。受け入れよう………紫苑が他の組織に所属している者だと………俺の敵だと。
いや、冷静になれ。夏菜がどこかの組織に所属していることは明らか。そして、俺たちRがその組織の情報を得られていない理由はひとつ。関係者を捕らえたとしても、遠距離から射殺されること。まるで、使い捨ての武器のように。
ならば、今回も……
そう思った俺は広場のガラス壁から、店の外を見た。
「本当にいるとは」
おおよそ300メートル離れたビルから小さな銃口がこちらを向いている。
それを見た俺はあることを決める。




