外伝 紫苑 2 ワタシの決意
あれから、私が戻って来ることはなかった。
ずっとワタシのまま………。このまま、戻ってこないんじゃないか。そう思い始めていたある日。
「今日は買い物に付き合ってくれてありがとう!」
ワタシは夏菜とショッピングモールへ買い物に来ていた。
「 I 」に確認してもらったけれど、結局何も分からなかった。任務が継続できるならば、私自身のことはどうでもいいらしい。兵器として見られている以上、そんな反応は当然だとは思うけれど、それでもなかなか心にくるものがあった。
でも、対処法がないのなら、せめてこの時間を大切にしよう。そう思い直して、夏菜の誘いに乗ったのだ。
いずれ、私が戻って来ることを信じて。
「うんうん。ワタシも来たかったから気にしないで」
開店と同時に店に入った私たちは、1階の店をどう回るか相談していた。そんな時、ある人物を見つけた。
「あああああまままままのののののののーーーーーーー」
「ほんとだね。それに、あれは真希ちゃんかな」
「ままままきちゃんっ!???」
「金星の妹だよ」
「ふぅーならよかっ」
「血は繋がっていないらしいけどね」
「ダメーーーーー!!!」
本当にかわいいなぁ~この子は。今まで男子に興味がなさそうだったのに林間合宿から急に恋する乙女になっちゃって。
そんな夏菜を見ていると、ワタシも普通の恋をしてみたかったなぁ~と思ってしまった。
ワタシが天上を見ながらそう思っていると夏菜が構わず、ワタシの手を握って歩き出す。
「紫苑!追いかけるよ!!!」
「分かったよ」
私たちは金星を追いかけることになった。
「夏菜~!」
「何?……あっ!真希ー!また金星に近づいてって……何あの際どい服!!!」
私たちはもう1時間も同じ店に滞在していた。ワタシはすっかり見飽きていたが、夏菜の近くを離れることもできなかった。周囲の男たちの様子がおかしかったからだ。それに
………男の匂いがしない………
ワタシの鼻が効いているなら、少なくとも普通の男ではないということ。
男たちは店の商品を手に取るふりをしているが、その視線は間違いなく私たちを捉えていた。
そして、館内アナウンスが響いた。直後に、男たちは一斉に武器を取り出し、私たちを囲み始めた。
「この程度の人数なら問題ないけど……でも」
「え、何何何?この人たち誰?私のファン?」
近くには夏菜がいた。軽率に動けば、彼女を人質にされるのは目に見えていた。
ワタシは身動きが取れず、結局、夏菜と共に拘束されて広場へ連れて行かれた。
広場に到着してから数分後、金星が撃たれた。銃弾は左足を貫き、床に血が滲んでいく。
「あっ!」
隣にいた夏菜が思わず声を上げそうになった瞬間、ワタシは彼女の口を手で塞いだ。今はダメ!と小声で囁くが、夏菜の目には動揺が浮かび、彼女は金星のもとへ歩み寄ろうとした。
「んんん!」
その表情はこれまで見たことがないほど必死で、強い意思が読み取れた。彼女の気持ちは理解できたが、この状況では致命的だ。ワタシは迷った末に、夏菜を気絶させるしかなかった。
「ごめん……」
そう呟きながら、夏菜をゆっくりとその場に横たわらせる。
数分後、また二人の人間が撃たれる銃声が響いた。その瞬間も、ワタシの頭の中は冷静に状況を分析していた。
目の前に立つリーダーと思われる男………その目は狂気に満ちている。
広場には約5000人の人間がいるけれど、ワタシたちが次に撃たれるかもしれない状況。
他の人たちは正直どうでもいい。でも、夏菜、真希ちゃん、それに金星は別。この人たちには生きてもらいたい。
そう思ったワタシはあることを決心し、夏菜の頭を優しく撫でた。
「夏菜……こんな私と友達でいてくれて、ありがと」
小さく呟くと、ワタシはゆっくりと立ち上がり、深く呼吸を整える。そして手にあるものを握り締めた。
「ん?なんだ女、死にたいのか?」
男たちが警戒する中、ワタシは叫ぶ。
「みんな伏せて!!!」
その叫びと同時に、ワタシは投げナイフを放った。ナイフは男たちの眉間を正確に射抜き、彼らは次々と地面に崩れ落ちていく。周囲の緊張感が一気に高まる中、男たちの銃口がこちらを一斉に狙い、銃弾が雨のように迫ってきた。
ワタシは素早く体をひねり、弾道を冷静に読みながらその場を切り抜ける。さらに腰から短剣を引き抜き、鋭い刃で放たれる銃弾を弾き返す。そのたびに鋭い金属音と火花が飛び散る。
台の上に立つリーダーの銃口がこちらを狙う。視線が交錯した瞬間、ワタシはその銃弾を紙一重で避け、隙を突いてさらに周囲の敵を仕留めていった。
数秒後には、周囲を囲んでいた敵はすべて地に伏していた。
短剣を構え直し、ワタシは広場の中央へ向かって一気に走り出す。




