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アルガナイ…力を失ったルシファー 学園生活を謳歌する?  作者: T.T
二面

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第57話 異常者

「あんたぁ〜今、喋ったなぁ〜」


「ぐっ……!」


 痛みが右足に走る。予備動作はほとんどなく、反応する間もなかった。弱体化する前の俺なら避けられたはずだが、今は………

 そんなことを考えている間にも、足から流れ出た血が床を赤く染めていく。


「兄さん!」


 真希が慌てて自分の服を裂いて止血しようとするのを、俺は視線で止めた。


「でも……!」


 必死に止めようとする彼女を抑えつつ、俺は震える手で出血箇所を押さえた。


「痛そうやなぁ~。けど、お前さんが口開こうとするからやで。ほれ、周りを見てみ?」


 男の声に促され、俺は出血を抑えながら顔を上げた。


 周囲には暗い表情を浮かべる人々が床に座り込んでいる。彼らの目には恐怖が宿り、誰も声を発しようとしない。その様子を冷淡な目で見下ろす武装した男たち。 空気は張り詰め、恐怖が支配していた。


「みんな声を出さんように必死にこらえとるなぁ。クックックッ、声を出したら次は自分かもしれんって思っとるんやろ。おもろいなぁ~!人が恐怖する顔って、ほんまに飽きへんわ!」


 男は広場中央に設置された台の上で笑いながら周囲を見回し、楽しげに声を張り上げる。

 やがて笑い声が止むと、男は大きく息を吸い込み、真剣な眼差しでこちらを睨みつけた。


「俺らは、ここを拠点にする以外にも目的があんねん。のぅ~、お主ら……アールって物、知っとるか?」


 アール、その名前に、俺の脳裏に一郎の姿が浮かんだ。一郎もそれを追っていた。こいつらも、同じものを探しているのか。


「なぁ!どうせこの中にRの関係者がおるんやろ? 今すぐ出てきてくれへんか?

それでアールについて、ちょーっとだけ教えてくれたらええんや。話してくれるなら、この場の全員を解放したるわ。けどな……黙っとるつもりやったら、全員無事とは限らんでぇ?」


 男の冷酷な声が広場に響き渡る。緊張が極限に達する中、広場全体が静まり返っていた。時間だけが、無情にも過ぎていく。



 10分経過……誰も名乗り出る者はいなかった。


「はぁ~……まぁ、それはそう簡単には出てこんわなぁ~。よっしゃ、こうしようか!とりあえず、10分ごとに一人ずつランダムに殺していくわ。情報を知っとるお前さんが出てこん限り、人は次々に死んでくでぇ。ん?あぁ、もう10分経っとるな」


 男は悪魔のような笑みを浮かべ、台の上から近くにいた一人の男に向けて銃を構えた。


「バンッ!」


 銃声が響き、広場の空気が凍り付いた。撃たれた男が声も出せずその場に倒れる。鮮血が床に広がり、周囲の人々は恐怖に震えた。


「ほらほら、一人殺したでぇ~。次は誰が死ぬんやろな?」


 悲鳴を上げた女性に男の視線が向けられる。


「喋んなって、うるさいのぅ~」


「バンッ!」


 再び銃声が響く。女性はその場に崩れ落ちた。男の無慈悲な行動に、人々の悲鳴が増すばかりだったが、誰も抗うことができない。


 今回の敵は、明らかに異常者だ。

 凄まじい聴力、そして予備動作がほとんどない早撃ち、それを可能にしているのは、恐らく奴自身の性格が原因だろう。先ほどのように、気に入らない者や都合の悪い者は容赦なく殺す。ためらいもないその行動は、奴の狂気そのものを物語っている。


 こういった敵との対峙は、非常に厄介だ。相手の思考が予測不能な上、常識が通じない。奴の行動原理が読めない以上、下手な動きはできない。


 だが、奴の戦闘能力の一端は見えた。

 もちろん、ここに至るまでの情報が少なすぎるため、まだ何か隠し持っている可能性もある。それを確かめたいが、時間がない。時間をかかるほど犠牲が増えるのは明白。一刻も早く片付けた方がいいが………それは紫苑次第だ。



 紫苑が行動を起こさない限り、俺が守るべき人物は『3人』………

 どれだけ、犠牲を増やそうと、この『3人』さえ守れば今はいい。


 しかし、行動を起こすのならば………その時は……

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