表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルガナイ…力を失ったルシファー 学園生活を謳歌する?  作者: T.T
二面

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/139

第51話 夏休み(表)

 林間合宿が終わり、数日が経った。そして、俺たちは夏休みに突入した。


 夏休み期間中、学校内への立ち入りは基本的に禁止されている。しかし、図書室だけは例外で、月曜日と火曜日の二日間だけは、利用が許可されている。


 今日は夏休み初日。部活を終えた俺は、汗を軽く拭きながら図書室へ向かった。


「よぉ、来たな!」


 図書室の扉を開けると、駿斗、紫苑、夏菜の3人がすでに席について待っていた。

 彼らとは今日、一緒に課題をやる約束をしていたのだ。


 昨日の夜、突然誘いの連絡が来たときは驚いたが、宿題を早めに終わらせるのに越したことはない。習い事が夜に控えているとはいえ、誘いを断る理由も特になかった。


「あんまり大声は出さないほうが……って、俺たちしかいないのか」


 図書室を見渡してみるが、広い部屋の中に俺たち四人以外の姿は見当たらない。

 少し安心しながら3人の方へ向かうと、駿斗の隣に紫苑、その前に夏菜が座っている。この配置からすると、俺は自然と夏菜の隣に座ることになりそうだ。


 だが……少し気まずい。


 ちらりと夏菜に目をやると、彼女は両腕を机の上に置き、顔を伏せている。猫背になった姿勢のせいで表情がうまく見えない。俺のことをどう思っているのかもわからないが、嫌われている可能性が高いのは確かだ。


『本当に座っていいのか……?』


心の中で自問しながら、ゆっくりと椅子を引き、腰を下ろした。

夏菜は特に何も言わなかった。彼女の無反応に少し安堵しつつ、そのまま座ることにした。


「さぁて、宿題をやりますか」


 駿斗の言葉をきっかけに、俺たちはそれぞれ夏休みの課題に取りかかった。


……


 静かな図書室の中、黙々と筆を動かす時間が過ぎていく。時計を見ると、始めてからおよそ30分が経過していた。


「……あ、あの!」


 突然、夏菜が大きな声を上げた。驚いて手を止め、ゆっくりと彼女の方を向く。


「ここ、分かんなくて……」


 夏菜は少し顔を赤らめながら、そっと数学のノートを俺の方へ差し出した。その動作は緊張しているのか慎重で、「スーッ」と音が聞こえそうなほど静かだった。


「ああ、そこか」


 目の前に駿斗がいるのに、なぜ俺に渡してくるのか。ますます意味がわからない。 

 紫苑に関してはなんとなく予想がつく。男の匂いがしない駿斗に誘われて、特に断る理由もなかったのだろう。気軽に応じたというところだ。加えて、夏菜の付き合いという側面もあるのかもしれない。


 だが、夏菜の行動だけは謎だ。

 今日の誘いに乗ったのも、駿斗との距離を縮めるためだと思っていた。しかし、ここで俺に質問をしてくるとは。これでは本末転倒だ。せっかくの機会を自ら逃しているように見える。


 ラーメン屋の件で、千明が好きな人、つまり駿斗を目の前にしたとき、驚くほど緊張していたことを思い出す。もしかして、夏菜も同じ状況なのだろうか?


 そう考えながら、俺は夏菜に近づき、ノートを指差して教えようとした。


「ここは……」


 俺が説明を始めようとしたそのとき、夏菜は咄嗟に体をずらして距離を取ろうとした。しかし、その勢いで椅子がぐらつき、今にも倒れそうになる。


「おい!」


 反射的に右腕を伸ばし、夏菜の肩を掴んで引き寄せた。結果的に、彼女を抱き寄せる形になったが、それは一瞬のことだった。


「おい、大丈夫か?」


 夏菜は数秒間、驚いたように俺の顔をじっと見つめていたが、次の瞬間、顔を真っ赤にして椅子から立ち上がった。


「わ、私……トイレ行ってくるーーーー!!!」


 そう叫ぶと、彼女は慌てて図書室の出口へと向かって走っていった。その後ろ姿を見送りながら、俺はなんとも言えない気まずさを感じていた。


「ふふっ、面白いね。ねぇ、駿斗」


「ははは、確かにな」


 紫苑と駿斗は、一部始終を見ていたらしく、笑いながらこっちを見ている。


「いや、別に面白いところなんてなかったと思うが……」


「いやいや、面白かっただろ。なぁ、紫苑」


「うん。めちゃくちゃ面白かった」


「……どこがだ?」


 俺が納得いかない様子で尋ねると、2人は顔を見合わせ、さらに笑いを堪えきれない様子で肩を揺らしていた。


 俺には彼らの感覚がまったく理解できなかった。


「それはなぁ~」


 駿斗が笑いを引きずりながら、意味ありげに言葉を濁す。


「金星が気づかないとダメなんだよね」


 紫苑が楽しそうに付け加えるが、何のことかさっぱりだ。


「そ、そうか……」


 訳が分からないまま、俺は曖昧に返事をして話を終わらせることにした。


 数分後、夏菜が戻ってきた。顔にはまだ少し赤みが残っているが、何事もなかったかのように席に着く。俺たちはそれぞれ宿題に集中し始め、再び静かな時間が流れ出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ