第48話 いるはずのない人物
俺は任務を終え、保健室のベッドに横たわっている。
外を歩いていた時、坂から転んで怪我をした、という適当な理由をつけてここに身を置いている。実際に体中に怪我をしているため、特に何も言われることはなかった。
治療を終え、ベッドで横になりながら、駿斗にメールで事情を説明し、『部屋には戻らず、ここで休むことにする』と伝えた。
そして今、真希に任せていた任務の報告をメールで確認している。
俺があの時間、あの場所に千明、駿斗、紫苑、颯太を集めた理由は、ただ告白を防ぐためだけではない。
それは『監視』の任務だ。
紫苑とは小学3年生の頃からの付き合いで、これまで監視を続けた結果、特に問題のない人物だと判断していた。
しかし、中学に上がってから状況が一変した。男子の人数が増えた影響なのか、紫苑は小学校の頃とは比べ物にならないほど男子を嫌うようになったのだ。
颯太の言う通り、紫苑が俺と駿斗以外の男子と話しているところを見たことがない。男の先生との会話でさえ、必要最低限に留めている状態だ。
小学校の頃も男子を嫌う傾向はあったが、その感情を表に出すことはなかった。
明らかに異常だ。
まだ、単に男嫌いというだけの可能性も捨てきれない。しかし、紫苑が何かしらの問題を抱えている可能性は高い。それがRに関係しているのか、それとも別の組織に属しているのか、慎重に再確認する必要がある。
一時的なものだと高を括り、これまで見逃してきたが、もう放置するわけにはいかない。
だから、真希に紫苑の監視をさせていた。
颯太の告白に協力し、紫苑と一対一の状況を作り出し、接近させ、反応を見るために……。
予定通り、颯太は振られ、紫苑に近づいたらしい。
その時に、紫苑は、『近づくな』と大声で叫んだそうだ。
そして、真希は確かに感じたらしい……紫苑から放たれる恐ろしい『殺気』を……
しかし、千明が来たことにより殺気は収まり、その場から千明の後に続いて立ち去った。
……
もしもこの時、千明が来なかった場合、つまり第三者の存在がなかったら、紫苑は颯太に何をしていたのだろうか。
その決定的な瞬間を抑えられなかったため、確実に100%、黒とは言い切れない。
いや、俺があの場に千明と駿斗を呼びさえしなければ、見えたかもしれないな。
紫苑の本性が。
……
……颯太の告白に協力したのも、千明の告白を防ぐのも、ついでだ。
白だと分かっている奴らに用はない……。駿斗は別だが。
全ては紫苑の本性を暴くため。
誰もいない裏庭ならば本性を見せやすいと思い、ここを選んだが………………
正直、成功してほしくない気持ちが心のどこかにあった。
俺は真希に『よくやった』と返信を送った後、全身の力を抜き、目を閉じた。
殺気か……それを普通の中学生の女子が……ね……。
俺は紫苑との思い出を振り返りながら、その日を終えるのであった。




