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アルガナイ…力を失ったルシファー 学園生活を謳歌する?  作者: T.T
巨大な壁

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第49話 そこにあるが何もない(表)

合宿3日目


 朝は思いのほか慌ただしかった。

 起床後、部屋に戻って保健委員の仕事を済ませ、朝食を取る。食事が終わると、部屋の片付けと荷物の整理を行い、それらをバスへと運んだ。


 その後、広場に集合。先生方からこれからのスケジュールについて説明があり、最後に学年代表が現地スタッフへの感謝の言葉を述べた。


 すべてが終了したのは予定よりも早い9時20分。距離の都合もあり、早めにバスに乗るよう指示が出された。

 俺たちはスタッフの見送りに手を振りながら寮を後にし、観光名所へと向かった。


 意外だったのはバスの中の静けさだ。行きのようにカラオケや友人とのおしゃべりで賑やかになるかと思いきや、多くの人が寝ていた。起きている人たちも周囲に配慮し、小声で会話をする程度だった。バス内には、走行音とエアコンの音だけが響いていた。


 俺の隣には紫苑がいる………いや、今はいない。

 バスに乗る際、なぜか後ろの席にいた夏菜と紫苑が席を交換し、現在、俺の隣には夏菜が座っている。


 バスが出発してから一時間が経過したが、未だに沈黙が続いている。

 お互い寝ているわけでもなく、ただ、話していないだけだ。ここまで気まずい状況が他にあるだろうか……。


 俺は、生憎、夏菜に嫌われている。

 夏菜から声を掛けてくれれば、それに応じるつもりで待っているのだが、一時間が経過しても、状況は変わらない。


 夏菜は顔を赤く染めながら、俺の方を一切見ず、じっと前の席を見つめて座り続けている。

 どうやら、声を掛けてくる気配はないらしい。


 自分から話しかけるべきかと何度も迷ったが、結局、勇気が出せないままだ。

 話しかけたら迷惑になるのではないか………そんな考えが頭を支配しているのだ。


『それにしても、なぜ紫苑は夏菜と席を交換したのだろう?』


 この気まずい状況をどうにかしてくれと願っていると、ようやく夏菜が口を開いた。


「ね、ねぇ」


「ん?」


「あ、あの山……綺麗ねぇ~」


「そうだな」


………


『……終わりなのか?それとも俺が終わらせたのか?』


 自慢ではないが、俺は会話のキャッチボールが下手だ。この短いやり取りを、どうにか面白くする自信もない。

 そんなことを考えていると、後ろから紫苑のため息が聞こえてきた。


「はぁ~」


『いや、専門外だ。俺にこの難題を押し付けないでくれ。入試問題の方がまだ簡単だ』


 その後、夏菜からの会話は途絶え、再び沈黙の時間が訪れた。そして、バスは目的地に到着した。




 

 昔、日本は『新日本』と、『純日本』に分かれていた。

 お互いの領土の境界線となっていた場所が、現在も存在している。

 それが今、俺たちが到着した場所『『『 アルガナイ 』』』だ。


 ここは長野県の北端に位置し、「アルガナイ」の先端と呼ばれる観光地として有名だ。


 目の前には巨大な壁がそびえ立ち、その壁は南へ向かって真っ直ぐに続いている。

 これが山梨、静岡を貫くようにそびえ立っているのらしい。


 驚くべきことに、この壁はこれほどまでに巨大でありながら、建造の目的や歴史的背景が一切解明されていない。

 そのため、「そこにあるが、何もない」という意味を込めて、

 この壁は「アルガナイ」と名付けられたらしい。


 海外にある万里の長城のような建造物は、歴史や建造目的が明確に記録されている。しかし、この壁にはそれがない。

 記録の空白と圧倒的な存在感………この壁が持つ謎めいた魅力は、訪れる者を惹きつけずにはいられないのだろう。実際、俺たちの他にも大勢の観光客で溢れている。


 この周囲には他にも観光スポットが点在しているため、他のクラスはそれぞれ別の場所を巡っている。

 しかし、どのクラスも必ずこの「アルガナイ」を訪れることが決まっており、俺たちが見学を終えた後には次のクラスがここを訪れるらしい。


 壁の横には階段があり、バスガイドさんの案内で俺たちは壁の先端部分へと向かった。


 壁の上は意外にも広く、大人が5人ほど並んでも余裕のある幅だった。

 壁の側面には安全のためのネットが張られており、人が落ちないように工夫が施されている。


 さらに、壁の端には黒い鳥居が立ち、その前にはお賽銭が供えられていた。

 規模は小さいが、立派な神社であるとバスガイドさんが説明してくれた。


「この場所で願い事をすると、『何でも叶う』と言われていますよ」


 ガイドさんがそう話すと、大半のクラスメイトたちは笑いながら聞き流していた。

 しかし、いざ願い事をする段階になると、みんな真剣な顔つきで鳥居の前に立ち、静かに手を合わせていた。


 そんな皆の様子を見届けた後、ついに俺の番が来た。

 鳥居の前に立ち、ポケットから5円玉を取り出して賽銭箱に入れる。そして、軽く息を整え、両手を合わせた。


「………」


 その後、俺たちは壁の上を少し歩きながら景色を眺めた。霧がかかった山々と、果てしなく続く壁の風景はどこか非現実的で、ずっとここに立っていたいような不思議な気分にさせられた。

 最後に、全員で壁の上で集合写真を撮り終えると、少し名残惜しそうにその場を後にし、バスへと戻った。


 こうして「アルガナイ」の見学を終え、次の観光地へ向かうことに。そこでは、お昼に地元の名物料理を楽しみ、観光地特有のお土産をいくつか買い求めた。

 その後、再びバスに乗り込み、徐々に帰路についた。車内は少し疲れが見えるものの、みんな心地よい満足感に包まれているようだった。


 数時間後、無事に学校に到着した俺たち一学年は、長い一日を振り返りながら、すぐに解散となった。


  こうして、林間合宿は幕を閉じた。

 

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