第47話 恐怖という感情
俺は命の危機を咄嗟に感じたのかわからないが気づけば、数歩後ろに下がっていた。
しかし、その時はもう背後を取られていた。
「生憎ですが、今の君では僕に勝てません」
俺は足に力を入れ、瞬時に距離を取った。
何だあの男は?男なのか?声からして、男だと思うが、わからん。
全身が黒い鎧で覆われていて姿が見えない。
背中には、二本の刀が交差しており、頭は一本角が生えている。
息がつまるこんな感覚は久しぶりだ。
初めて父を相手にした時と似ている。
『勝てるビジョン』が見えないときに現れる、恐怖そのものだ。
こいつと戦ったことも、会ったことすら記憶にないが、本能が『勝てない』と今にも体が逃げ出しそうになっている。
「僕は今、イベントの最中でして、多忙なのですよ。ですので、君を相手にしている暇はありません」
目の前の黒い鎧は、ターゲットの足に触れた。するとアームドが『ガキン』と音を出し、箱の状態へと戻った。
男は彼女には目もくれず、それを持ち、この場から立ち去ろうとしていた。
「お前は誰だ。目的は何なんだ!」
「今は言えません。目的……今言っても理解してもらえそうにないので、そうですね……『Rの壊滅』……ですかね」
「なっ……」
「また会いましょう。金星君……」
黒い鎧は俺に背を向けたまま、 姿そのものが背景と一体化し、何処かへと消えた。気配がなくなり、俺はほっとしてしまった。
「あいつ、今、『Rの壊滅』って言ったよな……それに俺の名前を……何者だ……」
俺はターゲットを始末できたが、アームドは持っていかれ情報を掴むことができず、目の前に現れた黒い鎧に屈してしまった。
戦ってもいないのに負けを認めたのは、父以来初めてのことだった。
久しぶりに悔しいと言う感情が芽生え、あの時のことを再び思い出してしまった。
『ドンッ!……クソッ!」
近くにあった木を思いっきり蹴とばし、怒りをぶつけた。
俺は気持ちを抑え、寮へと急ぎ戻った。




