第43話 作戦(裏)
千明に手伝ってほしいと言われたあの日、駿斗の事情を説明し、延期を提案することもできた。
だが、提案してそれでも告白をすると言い出したら、俺がただ情報を教えたことになる。
千明とは長い付き合いだが、口が堅いかどうか曖昧な部分がある。
駿斗は俺にしか、あの情報を話していない。周囲が噂をし始めたら、真っ先に俺が疑われる。
駿斗との間に契約はあるが、信用ならないと思われたら面倒だ。
ならば、リスクをとらない方法で、告白を遅らせるしかない。
それは、目の前で他人が告白に失敗しているところを見せることだ。
合宿に行く数日前、俺は千明の他にもう一人、頼みごとをされていた。クラスの人気者で陽キャの宮島颯太からだ。
颯太が俺に頼みごとをしてきた理由は、彼の気になる相手、紫苑が関係している。
颯太が紫苑に惚れているという噂はクラス中で知られていた。だが、紫苑は男嫌いとしても有名で、彼のアプローチは一切受け入れられない雰囲気だった。
そんな中、俺が紫苑と普通に話しているところを颯太に目撃され、それがきっかけで話しかけられたのだ。
「なぁ、お前、紫苑と付き合ってんのか?」
「違う」
「じゃあ、なんで話せてるんだよ。駿斗はともかく、お前はなんていうか、違うだろ」
颯太の言葉には、少しの困惑と嫉妬が混じっているようだった。
『おい、その部分を詳しく聞こうじゃないか』と突っ込みそうになったが、火に油を注ぐだけだと判断して思いとどまる。
「まぁ、単に長い付き合いだからだ。それで紫苑が好きなのか?なら協力するぞ」
「え、はぁっ!そ、そんなんじゃねぇし!誰があんな冷徹で、髪が長くて、飯を美味そうに食べて、友達想いで、部活に一生懸命で、たまに見せるちょっとした笑顔がかわいくて………あとそれから」
「よし、手伝おう」
颯太の話が終わる気配がなかったので、途中で強制的に中断させた。
しかし、なんだこいつ、いわゆるツンデレってやつなのか?でも、彼が紫苑に惚れているのは間違いなさそうだ。
「ほんとか?」
「あぁ、それで………」
「なんだお前、意外といい奴なんだな!これ俺の連絡先だ、交換しとこうぜ!」
グイグイ来るな。こういうタイプは正直苦手だが、仕方ない。
「分かったから、話を聞いてくれ。俺の指示通りに動けば、紫苑に告白する環境を作ってやれる」
颯太は途端に真剣な表情になり、俺の話に耳を傾ける。
「環境は作ってやれるが、告白の成功に関しては保証できない。それは紫苑が決めることだ」
「あぁ、それは分かってる。けど、一つだけ聞いていいか?紫苑って今、フリーなんだよな?」
「悪いが、それは知らない。ただ一つ言えるのは、俺も駿斗も紫苑とは付き合っていない、それだけだ」
「そうか。なら、チャンスはあるってことだよな。紫苑がお前と駿斗以外の男子と話してるとこ、見たことねぇし。よし、お前の策に乗るわ!で、俺は何をすればいい?」
こうして颯太に、千明と同様の作戦を伝えた。
もちろん、この告白が成功することは考えていない。いや、成功しては困る。
そこで、紫苑が特別な感情を抱いていないであろう颯太を選んだのだ。彼の告白が失敗する可能性は高い。颯太の失敗する姿を千明に見せることで、彼女の告白への勢いを削ぎ、雰囲気を崩す狙いだった。
こうすれば、千明の失敗も単なる『タイミングが悪かった』という理由に帰結する。
俺が裏で糸を引いていることが知られることなく、計画通りに事は進む。
これで全て整った。




