外伝 夏菜 4 運が悪すぎた日?
天野金星にお礼を言おうとしたが、夕食は男子たちと集まっていて、レクリエーションの時は良太だっけ?と会話をしていていたため、言うタイミングがなかった。駿斗とも接触できなかったし、散々な一日を終えた。
二日目の朝を迎えた。
紫苑は保健委員だから一組女子全員の体温を記録して保健室に届けるのが仕事。
班の人の体温を聞いた紫苑は他の班の部屋へと移動しようとしていた。
「夏菜も来る?」
「へっ?」
「冗談冗談。なんか、さっきから私の方を見てくるから気になってからかっただけだよ」
「あっそういうこと」
「どうしたのなんかあった?また雪と幸子が………」
「違う違う、もういいよ。私、その件は昨日、駿斗君の話を聞いて終わったばかりでしょ」
「うそうそ。わかってるって」
「でも、私もついていこうかな。暇だし。それに星崎先生にもう一度、お礼を言おうかなって」
「いいね!」
こうして紫苑の後を追って他の班の部屋にお邪魔しては、好感度を上げていった。
全ての記録が終わった紫苑と私は保健室に着いた。
「ご苦労。あいつが書き終わったら記録してくれ」
「はぁーい」
「先生。昨日はありがとうございました」
「夏菜か。もう大丈夫そうだな」
「おかげさま………でっ!」
私は咄嗟に紫苑の後ろに隠れてしまった。紫苑は驚いた表情をする。
「どうしたの?急に隠れたりして」
「いや、なんでも~」
『どうして天野金星がここにいるのーーー!!!』
頭を下げていたせいで最初は気づかなかったが、机に座っている天野金星の姿を見つけた瞬間、体が咄嗟に動いてしまった。
よく考えれば、彼も保健委員だ。男子全員の体温を記録しに来たのだろう。そう理解したものの、冷静になればなるほど疑問が浮かぶ。
『いや、そもそもなんで隠れてるの私!?』
「それだけ急に動けるのなら安心だ。残りの合宿も楽しめよ」
「はっはい!」
私の声は少し裏返ってしまい、恥ずかしさで顔が赤くなるのを感じた。
朝食の時、次こそは!と、駿斗を誘って距離を縮めようとしたけれど。
「邪魔!!!なんで班の人と食べてるの!」
駿斗の班には他のモブと、天野金星がいる………から、話しかけることができなかった。
体験学習の時、今度こそは。
「だからなんで同じ班なの!邪魔ーーー!!!」
二度もチャンスがあったのに、近くに天野金星がいるせいで話しかける機会を失ってしまった。別に話しかけることはできたのだけど、なんていうか………そう!仲の良い友人との間に入るのが気まずかっただけ。
『ただ、それだけ………』
昼食の時、私は友達と食べていたけど、トイレに行ってくると言って、みんなの視界から外れた後、駿斗の席を探した。
『見つけた』
駿斗は仲の良さそうな友達五人組と食べていたけど、問題の人物がいないため、話しかけることができた。
「駿斗君、少しいい?」
すると、周りのモブキャラたちが先に小さい声で呟いた。
『夏菜さんじゃん!』『可愛い』『寝癖立ってないよな?』『まじかで見ると神々しいな』『美しい』
などと言ってくる。いつも通りの反応。でも、相変わらず駿斗は何も反応しない。
『やはりあなたは、手ごわいわね』
「いいぞ」
私は駿斗の席の隣に座り、話しかけようとしたその時………
『あれ?なんで言葉が出ない………私なんて言おうとしたんだっけ?』
「夏菜?」
「あっ、うん。ええとー………この後のイベント何になるのかなーって」
違う!こんな話がしたいんじゃない!もうキャンプファイヤーまで時間がないから、二人にきりになって誘おうと思ったのに!いや、次言えばいい、この話をさっさと終わらせて。
「そうだなー。ん?悪い、電話が来たから出ていいか?」
「うっうん」
『なんでこんな時にーーー!!!』
駿斗はその後、電話をすぐにやめ、首を傾げた。どうやらすぐに電話は切れたようだ。するとスマホをスライドした瞬間、体が少しビクつき、驚いた表情をした。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。急に済まないがトイレに行っていいか?」
「うん」
『あぁ~どうしてこうなるの』
駿斗が席を立った後、私は残ったモブキャラたちとの会話を早々に切り上げ、友達の元へ戻った。




