第39話 林間合宿(表)10 「???」
山登りが終わったのが9時45分。その15分後に雨は止んだ。
10時から12時までが自由時間となり、多くの者はお風呂に入ったり、部屋で友人と遊んだり、広場で雑談をするなどをして過ごしていた。
昼食の時間になった。
俺が食堂に到着したころ、駿斗は他のクラスの友人と一緒に食べており、班の四人もそれぞれ他のクラスの人たちと仲良く食事をしていた。俺は一人で食べるつもりで空いている席を探していたが、その時、佳がトレーを持って近寄ってきた。
「一緒に食べてもいいですか?」
今回の昼食は食券制で、食券機から好きな料理を選ぶ仕組みだ。
俺はラーメンとハンバーグのどちらにするか迷った末、ハンバーグを選んだ。だが、佳が持ってきたラーメンを見た瞬間、その湯気と香りの誘惑に負け、『ハンバーグじゃなくてラーメンにすればよかった』と少し後悔してしまった。
「ああ」
佳は嬉しそうに笑い、俺の隣の席に腰を下ろした。
「金星君、合宿は楽しめていますか?」
「楽しいぞ。イベントもそうだが、部屋で班の奴らとトランプやったり、こっそり枕投げやったり。まあ、どれも面白かった」
「それはよかったです」
「佳はどうなんだ?」
「僕も楽しめていますよ。でも、これからやる『???』が正直、一番気になってるんです」
「そうだな」
俺もそれが気になっていた。食堂にいる全員が同じことを考えているのが会話の断片から伝わってくる。先ほどから、誰もがこれから始まるイベントについて期待や予想を語り合っていた。
雨は止んだものの、再び降り出す可能性がある。それに、山道はぬかるんでおり、屋外イベントの実施は難しいだろう。それでも、わざわざ『???』と名付けて期待を煽るようなイベントが用意されているのだから、何か特別な内容に違いないという期待が高まっていた。
佳と他愛ない話をしながら食事をし、駿斗を見つつメールのやり取りをしているうちに、あっという間に『???』の時間がやってきた。
レクリエーションを行った大広場に一学年全員が集まると、スタッフさんがマイクを持って前に出た。
「これから君たちにはサバイバルゲームをしてもらいます!」
その言葉が響いた瞬間、会場は一気に盛り上がった。特に男子たちが歓声を上げている。しかし、その熱気も一学年代表の赤津先生の咳払いひとつで沈静化した。男子たちは肩をビクッと震わせ、一瞬で静かになった。
その後、サバイバルゲームの詳細な説明が始まった。
「実はこの施設、戦時中に実践訓練場として使用されていた場所が近くにあります。そこで今回、特別にその施設を使ってサバイバルゲームを行います!」
サバイバルゲームのルール
・試合形式
1組から7組までの各クラス、さらに先生とスタッフで構成されたチームを交えたトーナメント戦で進行する。
・勝利条件
フラッグ戦の形式で、以下のいずれかを満たしたチームが勝利となる。
攻め側:敵陣地に設置されたフラッグを奪い、自陣まで持ち帰る。または、敵チーム全員をヒットさせる。
守り側:制限時間までフラッグを守り切る。または、敵チーム全員をヒットさせる。
・試合の進行
各試合は3ラウンド制で行い、攻めと守りの役割は毎ラウンド、くじ引きで決定する。
・ヒットルール
インク弾が体や装備に当たった場合、「ヒット」と大声で申告し、その時点でフィールドを離れて退場。
一度退場した場合、復活はなし(その試合のみ)。
・注意事項
近距離戦闘や身体的な暴力行為は禁止。
ルール違反や禁止行為が確認された場合、その参加者はキャンプファイヤーや自由時間への参加が禁止され、代わりに勉強を義務付ける。
「以上がルールとなります。一気に話させてもらったのでこれからルールが書いてある紙を配布します。この後は、訓練場に行ってもらい1時間、銃を撃つ練習をしてもらいます。みなさん、我々に付いてきてください」
俺たちは指示に従い、訓練場へと向かった。
訓練場に到着すると、そこは広々とした敷地で、遮蔽物として使えそうな木箱や廃材、土嚢が点在していた。まるで映画で見るような戦場のようだ。
スタッフが整列した俺たちに向かい、使用する銃について説明を始めた。
「これが今回使用するエアソフトガンです。撃ち方は簡単ですが、最初に安全装置の確認をしてください。トリガーに指をかけるのは、射撃する瞬間だけです。誤射防止のためにも、取り扱いには十分注意してください。」
エアソフトガンは意外と重みがあり、本物の銃に近い感触がした。俺も手に取ると、思わず慎重な動作になってしまう。
スタッフが実演を交えながら説明を進めると、みんな徐々に操作に慣れ始めた。
次に、射撃練習の時間が始まった。俺たちはそれぞれ的の前に並び、スタッフの合図でエアソフトガンを構えた。
「最初の目標は15メートル先の的です。1人10発撃ってください」
トリガーは少し硬かったが、指に力を込めると『パンッ!』と軽快な音が響き、弾が勢いよく飛び出していった。次の瞬間、弾は的のど真ん中を打ち抜き、俺は思わず息を呑んだ。その感触は予想以上にリアルで、思わず背筋が伸びた。
練習が終わり、ついに本番が始まった。緊張感が一気に高まり、俺たちは攻撃側としてフィールドに立った。周囲を警戒しつつ、慎重に進む中で、心臓が早鐘のように鳴るのを感じる。
フィールドに足を踏み入れた瞬間、弾が飛び交う音が響き渡り、一気に緊張が高まる。先ほど離れた仲間が『ヒット!』と叫び、1人が退場したが、それでも冷静に進むしかない。俺たちは互いに協力し、少しずつ前進し、時折隠れながら、または攻撃を仕掛けたりした。
フラッグを奪うため、攻撃のタイミングを見計らい、全力を尽くす。
戦いを重ねるうちに、どのクラスも徐々に戦術に慣れていき、戦い方に工夫を見せてきた。
長い戦闘の末、最終的に俺たちの班は3位で終了。五組が1位という結果となった。




