第32話 林間合宿(裏)3 火種を生む
俺はクラスでは大体一人だ。
駿斗はクラスの人気者で、紫苑は夏菜と一緒にいることが多く、他数人とも仲良くしており、話す相手がいなかった。
授業が終わると十分間の休憩がある。
俺は自分の席で読書をするか、寝るふりをして過ごすため、トイレに行く以外は、基本教室にいた。
だから、教室で話すみんなの会話は勝手に耳に入ってくる。
俺は自分で言ってはなんだが、記憶力が優れているため会話は大体覚えている。
そして今回の件に繋がって来る。
入学してまだ数日しか経っていない頃、雪と幸子がまだ女王ではなかったが、すでに意気投合していた。
そんなある日の十分休みに、こんな話をしていた。
「私、駿斗君の事、気になっているんだよね」
「えっまじ?いいじゃん!」
「駿斗君かっこいいし、頼りになりそうじゃん。だから、付き合いたいって思うんだよね」
「雪ならいけるって!余裕で落とせるよ」
「ありがと!でさ、きっかけを作るために、学年委員になろうと思うんだ。」
「なるほど、確かにそれなら一緒にいられる時間が増やせるし、チャンスじゃん」
「でしょ!でしょ!だからさぁ、もし多数決とかになったら、私に投票してくれない?」
「わかった。そうするよ」
しかし、まだ取り巻きが少なかった雪は、多数決で見事に敗れた。
ここからは、ただの俺の予想だが、この頃から学年委員になった夏菜を目の敵にしていたのだろう。実際、雪は、夏菜を見るたびに嫌な顔をしていた。
雪と幸子は嫌がらせのタイミングを少しでも増やすため、あえて同じ班になり今に至るといった感じか。
学校内はあらゆるところに防犯カメラが付いているため、いじめを行った場合、すぐに気づかれてしまう。
だが、ここは防犯カメラがほとんどない山の施設。
昼食で誰もが、ご飯を作るのに夢中になる。先生たちも今はいない。
嫌がらせをするには、もってこいの状況だな。
………だが、都合のいいのはお前たちだけじゃない
この状況は任務を行うのに都合のいい状況でもある………
石窯に火をつけられることを確信した俺はわざと火を消した。
そして、薪と新聞紙を取りに行くという口実を作り、その場から離れた。
たくさん真希が積まれていた場所には、待ち合わせをしていた真希がすでに待機していた。
「兄さんは薪を拾いに来たのかな~?それとも真希を拾いに来たのかな~?」
人差し指を口元にくっつけ、体を左右に揺らしながら口を開いた。
「物を集めに、そしてお前に会いに来たんだ」
「少しは面白い反応をすると思ったのに………兄さんらしいね」
それは俺の苦手分野だ。
「そんなことよりも、頼みたいことが一つ増えた。あそこの班の火を定期的に消してくれ。お前が関与していることを気づかせることなく」
俺は紫苑たちの班を指さしながら言った。
「いいけど。なんでそんなことするの?」
「監視の任務で必要なことだ」
「そういうことなら。でも、なんか欲しいなぁ〜」
「後で、お前の願いを一つだけ叶える。それでいいか?」
「そこまでの褒美を渡すほど重要なの?」
「嫌なら………」
「嫌じゃ無い!わかったよ。じゃあ、早速やってくるね」
「頼む」
真希はその後、見事に役割を果たしてくれた。
万が一に備えてスタッフが置いていった消火剤を使い、気配を消しながら紫苑たちの目をかいくぐり、火を次々に消していった。
真希が気づかれそうになる場面もあったが、俺がわざと薪を落として注意を引き、フォローした。
その結果、計画通りに物事が進んだ。
6人の中で、里香と渚はおとなしい性格だ。一方で、夏菜と紫苑が火をつける役割を担っている。しかし、彼女たちが目を離した隙に火は消えている。
そして、周囲にいるのは雪と幸子の二人だけ。
火を消したのはこの二人ではないかという疑念が広がる。
無関係な二人は当然怒る。
この一連の流れが火種を生むことを俺は期待していた。




