外伝 千明 7 これは私が望んだこと
攫われて、話を聞かされ、頭が空っぽになって、生きろと命令された時
『私は父に会う』って決めた。
私はお母さんが亡くなってからお父さんを支えた。
朝が早い学校があるにも関わらず、家事をこなして、勉強もして、宿題もやった。
友達との約束も最小限にして、遊ぶのを我慢した。
コンビニやスーパーのご飯だけじゃこれから先、大変だと思って、料理の勉強もした。
…
けど、お父さんは何も、褒めてくれなかった。
……
自分から始めたことなのは分かっているし、ここまで育ててくれてた恩もある。
それにたくさんの幸せももらってきた。
でも、結局、父にとって大切なのはお金だった。私じゃなかった。どんな理由があろうと、お金の代わりに私を差し出した事実は変わらない。
『だったら、私はいらないね。ごめんね、余計なお世話だったね』
………
『なら!もっと早く言ってよ!!!返してよ、私の努力、時間。返してよ、今までの楽しかった思い出!』
……………
『私は、お母さんがいなくなっても、お父さんとならこれからも頑張れるって信じていたのに。お父さんに私は必要ないんでしょ?お金が必要なんでしょ?お母さんが必要なんでしょ?』
もう一度、お父さんに会う。
そして、私の時間を奪って私の人生を狂わせたお父さんを殺そうとも思った。
お母さんの元へ送った方が、この人は幸せなのかもしれない。そう思った。
………………………
ずっっっっっとこの時を待ち望んでいた。あの厳しい訓練に耐え、最終試験を乗り越えられたのはこの男を殺すことだけを考えて、頑張ってきたからだ。
心は痛まなかった。自分の手で殺せてよかったとすら思った。
「おいおい、用事があるからって言うから連れてきたのに。こりゃ後始末が大変じゃねぇか。まぁ仕方ないと思うけどよ、事前に言ってくれても良かったんじゃねぇか?」
山本は車から降り、一部始終を見ていたようだ。頭をかきながら言い、電話をかけた。
「よろしく~」
「はぁ~ったく、生意気になったもんだぜ。了解だ」
私は山本に後始末を頼み、家の中に入り自分の部屋へと足を運んだ。鏡に映る私は今、どんな顔をしているのか気になったのだ。
久しぶりに見る自分の顔は少し、大人びたような、あまり変わっていないような………………よく思い出せない。
けれど、今の私は涙を流している………………
『あれ?おかしいな。あの時、全部出し切ったはずなのに………いつものように笑いなさいよ』
『笑って』
『これはあなたが望んだことでしょう?』
『これから私はIの兵器となる。その前に、今までの生活と完全に縁を切るために………お父さんをお母さんの元へと送るために。そう願って…叶ったじゃない。喜びなさいよ私。喜び………』
「探したぞ。お前がどこにいったかとって、おい………はぁ~お前も結局人間ってことだな」
山本が私の背中をさすってくれた。
その後の出来事を私は覚えていない。これからも思い出すことはないだろう。
きっと………




