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アルガナイ…力を失ったルシファー 学園生活を謳歌する?  作者: T.T
憎悪

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外伝 千明 2 壊れた日

 毎日仕事から帰って来ると泣くようになり、何も言わずに自分の部屋に籠ってしまう。お酒を飲み始め、たばこを吸うようにもなった。


 そんなお父さんの姿を見るたびに、私以上に辛いのだと感じた。

 それはそうだ。お父さんの方がお母さんと一緒にいた期間も長いし、あんなに仲が良かった。お父さんは仕事で頑張っているんだから、せめて家事くらいは私がやって支えようと決めた。


 次の日から家事を始めた。母の手伝いで家事をしていたため、ある程度はできた。掃除、洗濯、ごみ捨て。けれど、料理は危ないからとお母さんに止められていたため、手が出せなかった。


 お母さんが亡くなっても、その言いつけは守らなくてはと思っていた。お父さんも料理ができないため、仕事終わりにごはんをコンビニやスーパーで買ってきてくれる。


 けれど、毎日同じようなものを食べていると体に良くないと知っていた私は少し危機感を持ち始めた。

 それに、弁当を食べる度にお母さんが作ってくれた手料理が恋しくてたまらなかった。

 食事をするとき、お父さんは食べながら泣いている。きっとお母さんを思い出しているのだろう。そんなお父さんを見る度に胸が苦しくなった。

 言いつけを言い訳にいつまでも、お父さんに苦労を掛けるわけにはいかない。


「せめて、自分でご飯くらい作れるようにならなくちゃ」


 お母さんが料理をしていた時に使っていた分厚い料理ノートを頼りに、料理の勉強を始めた。

 お母さんに謝りながら、ノートを開いた。けれど、ノートの中はほとんどが漢字で読めなかった。私はまず読めるようにしなければと、学校で辞書を使って、1つずつひらがなを振り書き直していくことから始めた。

 家事を続ける度に、母がどれだけ大変な思いをしていたのか、身に染みて分かるようになった。


 毎日、家事をしながら仕事に行き、家に帰っても家事をする。私が学校に行って、友達と遊んでいる間、どんな思いでこれらを続けてくれていたのだろうか。私も手伝っていたけど、ほんの一部だったんだなと痛感した。

 遊んでいないで、もっと手伝っていればよかったなと後悔した。もし、事故に遭う前に少し家事を手伝ってから、学校に行けばお母さんはもっと早くに家を出ていて、事故に遭わずにすんでいたのかな。そんなことをどうしても考えてしまう。

 母が亡くなってから三週間ほど経ったある日。いつもの時間に玄関のドアが開き、お父さんが帰ってきた。

 家事にも少しずつ慣れたので、今日は初めて料理をしてみた。といっても、お母さんが残してくれた料理本を真似て作った味噌汁だけど。でも、頑張った私を褒めてほしい!久しぶりにお父さんの笑顔を見たい!そんな思いでいっぱいだった。


「おかえ………」


「どうしてだ!」


 お父さんは部屋の壁をドンと叩き、買ってきたご飯を床に叩き落とした。驚いた私は一歩下がった。いつもより辛そうな顔をしているお父さんを見て私は元気を出してもらおうと勇気を出して、再び声をかけてみた。


「おっお父さん、今日、がんばって、味噌汁作ってみたんだ。よかったら飲んでみ………」


「うるさい!」


 持っていた味噌汁がこぼれ、私は床に倒れていた。右の頬が痛いと感じて気づいた。私は今、初めてお父さんに叩かれたのだと。

 すごく痛かったけど、泣かないように我慢した。泣くとお父さんを困らせるから。


「くっはぁはぁ………あっ………ちあ………っく」


 私の顔を見たお父さんはさらにひどい顔をして、走りながら階段を上がり、自分の部屋へと行ってしまった。


「お母さん、私、我慢したんだ………偉い?ねぇ………誰か………」


 誰もいない空間に呟いたけれど、返事は返ってこなかった。


 その日からは、お父さんの帰宅時間はどんどん遅くなった。

顔を合わせる機会も減り、会ったとしても私は話しかけることができなかった。話しかけると、また怒られる。そう思うようになった。私たちの間から会話は消え、家の中はまるで誰も住んでいないかのように静かになった。


 さらに三か月が過ぎ、私は夏休み前日を迎えていた。明日の学校が終われば夏休み。宿題を早めに終わらせて、少し休みたい。そんな気持ちで学校から家に帰った。

 友達の誘いはほとんど断ってしまった。

 最近、友達と一緒にいてもずるいなという気持ちしかわかない。みんな揃いも揃って、家族の話や、遊んでいる時の話ばかり。私はこんなにも頑張っているというのに。

 そう思いながら、帰り家のドアを開けると、黒いスーツの男たちが私に向かって襲い掛かってきた。急な出来事に私は驚いて、必死に手足をばたつかせ抵抗した。


「離して!」


 と叫んだが、男たちは無表情のまま私を抑え込み、手足をロープで縛り上げると、一人の男が私の体を軽々と抱き上げた。私は恐怖で頭が真っ白になりながら、どうにか助けを求めようと辺りを見渡した。

 その時、男たちの後ろに立っていたお父さんの姿が目に入った。助けを求めようと、必死に声を出した。


「助けて!お父さん」


 しかし、お父さんはその場で動かず『ごめん』と呟き、ただ私が連れ去られるのを見ているだけだった。


『え?なんで?なんで見ているだけなの?私、何か悪いことしたのかな?ねぇ教えてよ………』


 頭の中は、恐怖から疑問へと変わり、無数の問いと同時に何かが一気にあふれ出てくる。理解できないまま、私は車へと運ばれた。

 その後、私は眠らされ、次に目を覚ましたときには見知らぬ場所のベッドの上にいた。

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