第23話 期末テスト(裏)6 兄弟
一郎を処分した俺は、一息つく間もなく、真希の様子が気になり振りかえった
その瞬間、目の前を光る手裏剣と銃弾が同時に飛んでくる。
俺は剣を振り、金属音を響かせながらそれらを弾き返した。
「兄貴………兄貴………あに………くぁあぁあああああーーーーーーー!!!!」
駆け付けた二郎の叫び声が、倉庫中にこだまする。彼の怒りと悲痛が声に滲んでいた。
二郎が叫んでいるときに、俺は倉庫を見回した。すると、真希を見つけることができたが左足から血が流れ落ちている。
「兄さん、ごめんなさい」
真希の言葉は震え、痛みと悔しさが混じっていた。
俺は真希の姿を見た瞬間に、思わず全身に力を入れてしまった。
二郎を殺して真希を医者に運ぶと決め脳を回転させた。
すぐに、二郎の方へ体を向けたが、倉庫中に煙幕が巻かれ二人の姿がなかった。
気配で追おうと思ったが、真希を助けることが最優先と考え直し、真希の方へと向かった。
「ごめん………なさい………本当に、仕留めることができな………」
息を切らし、少し涙を流しながら、痛みに耐え、そう俺に言ってきた。
「いいから、喋らずじっとしていろ。無事でよかった」
俺は自分の服を引き裂き、真希の足に巻き付けて応急処置を施した。
「平気だよ!こんなきうぅ」
「いいか、傷はそんなに軽くない。お前は俺のように頑丈じゃないんだ。もっと自分の体を大切にしろ」
「………うん」
なぜか、顔が赤くなったがそんなことを気にせず、真希をおんぶし車の方へ向かった。
「やっぱりいいよ。自分で歩ける」
「怪我が悪化したらどうする?ここは兄貴させろ」
「本当の家族じゃないのに?」
「血は繋がっていなくても、お前は俺の妹だ。兄貴が妹を大切にするのが『普通』というものだろ。本からの受け売りだがな」
「なんか、言い方が気持ち悪い………変態」
「おいおい、そこまで言わなくもいいだろ」
真希は俺の肩に頭を擦り付け、小さな声で言った。
「悔しい」
真希は少し涙を流した。彼女の涙が俺の肩を濡らす。
「それは分かるが、まずはその傷だ」
「今日中に直す」
「いや、それは………」
「直す」
「分かったよ」
「直して、明日絶対に殺す」
「あぁ、その意気だな」
その後、政府の病院に車で向かい、真希は治療を受けた。
担当医は俺に薬を飲ませたあの医者だった。
「これで良し。取りあえず明日は安静にね」
「誰が、あんたの言うことなんか」
真希はこの医者が俺を弱くした者だと知っている。
俺は自分が弱くなったことを隠そうと努力したのだが、鍛錬をしていくうちに疑念を抱かれ、問い詰められた。仕方なく、真希に試験の後のことを言ったが未だに尾を引いているようだ。彼女の口調は荒々しく、怒りに満ちている。
『命』の役割を与えられた中で、この医者が最も優秀と称されている。
先ほどまであれだけの傷を負っていた真希の足が、今では何事もなかったかのように元通りである。
医療技術が発展したのもそうだが、数時間で原因を特定し、それを直す道を最短で見つけ出し、成功させる。間違いなくこの男の実力と言っていい。
「僕を嫌う気持ちは分からなくもないけれど、君の体を思って言っているんだ」
「ふん!信用できるか!」
「とりあえず、この薬を一日三回………」
「うるさい!」
真希は直してもらったのにも関わらず、不貞腐れの態度を取り続ける。
そんな真希を見て、医者はため息をつく。
「困ったなぁ~。一応警告はしたからね。それと」
医者は肩をすくめ、険しい顔で話を切り替えた。
「先ほど連絡があってね。二郎が路地裏で倒れているところがカメラで発見された。すぐに『目』の者が現場に向かったが、息を引き取ったそうだ」
それを聞いた瞬間、俺と真希は目を合わせた。
倉庫から車で離れ、病院に着いたのが45分。そして、真希の治療に掛かった時間は30分ほど。
つい、今しがた戦っていた二郎が亡くなった?この短時間に?
真希も同じようなことを思ったのだろう。歯ぎしりをしながら、とても悔しそうな顔をしている。
「誰が殺したのですか?」
「分からない。現場から分かるのは、一郎の遺体と、首を跳ね飛ばされた二郎の遺体だけだ。他に情報は上がってきていない」
「クソッ!私が殺すはずだったのに!!!あの時………もっと、ああしておけば………」
真希は拳を握りしめ、歯ぎしりをしながら悔しそうに言った。
想定外だ。
今のことを聞くまで、俺は明日二郎を始末しようと考えていた。
しかし、何者かが二郎を先に殺した。
一体誰だ?
俺は頭を回転させて考えたが、その人物を思い浮かべることができなかった。




