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アルガナイ…力を失ったルシファー 学園生活を謳歌する?  作者: T.T
この世界の裏側

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……怒りという感情……

 先ほどまで、俺は一郎を殺すことを躊躇っていた。


 それは事実だ。だが、それとは別に『あるもの』を待っていた。


 一度、俺が埋もれ、倉庫の壁に開いた穴から、ドローンがロケットを飛ばすかのように『あるもの』を飛ばしてきた。空気を切り裂きながら一直線に俺の手元へ向かってくる。

 俺は右手を伸ばし、それをしっかりとキャッチした。


 俺の体は、かつて施された薬の影響で神経伝達が鈍くなり、全盛期の10分の1ほどの力しか出せない状態にあった。

 3年の歳月が立ち、鍛錬によって肉体は成長したが、それでも全盛期の2割程度しか力を取り戻せていない。

 この状況を打破するため、あることを思いつき、3か月前、俺はある技術者に極秘の依頼をした。


『重さは軽く、ほんの少し握るだけで手から離れない。

 そして、鋼のように硬い…………そんな理想の武器を作ってほしい』と。


 その依頼はRに知られぬよう、最小限の連絡に留め、慎重に進めた。

 そして、今日、黄泉兄弟のもとへ向かう途中で、武器が完成したという知らせが届いた。

 俺は場所を指定し、倉庫まで届けるように指示しておいたのだ。

 そして今、その連絡が来た。


「なんとか届けたぞ、『我右腕よ』と」


 そして、俺の右手には『黒い鞘に収まっている刀』がある。

 一郎を殺すことに対して、情が絡んでいた。戦いの中で刀が届いたとしても、すぐに使おうとは思わなかった。


 しかし今は、状況が違う。


 一郎の言葉で、あの屈辱的な記憶が蘇り、今の俺には情けなど一切ない。

 『怒り』が、今の俺を支配している。

 試し切りもしていないぶっつけ本番だが、もはやそんなものにこだわる余裕はない。


「なんだそりゃ?刀か?まぁ、どうでもいいけどな」


 一郎は吐き捨てるように言い、一気に距離を詰める。剛腕になった右腕が振り下ろされる。


 その瞬間、俺は刀を抜いた。


「シュンッ!」


 一郎の拳が空を裂いた時には、俺はすでに背後にいた。

『ぼとっ』という音と共に、一郎の左腕が地面に落ちる。

 倉庫内に響き渡る、今まで聞いたこともないような悲鳴。

 一郎は右腕で必死に傷口を抑えるが、血は止まらない。


「て、てめぇ………何しやがった………!」

 

 一郎の声は怒りと混乱に満ちていた。

 だが、俺は答えない。ただ、冷ややかな視線を向けるだけだ。


 俺は確かに2割の力しか発揮できていない。

 だが、すべての力を足に集中すれば、速度だけは、圧倒的に引き出せる。


 それにしても、思った以上の仕上がりだな。

 足だけに力を入れ、手はただ剣に添えているだけ。切れ味は申し分ない。

 この刀を依頼する上で何度か代替品の刀で稽古はしていた。

 しかし、どの刀も俺のスピードと力に耐えられず、全て壊れた。だが、これは俺の動きについてきてくれる。一級品と呼んでもいいだろう。


 一郎は荒い息を繰り返している。右手で無くなった左腕の部分を抑えているが、手のひらの隙間から容赦なく血があふれ出る。


「な、なんでだ………なんでだぁーーーーー!!!!!あぁぁぁぁーーーー!!」


 一郎は暴走を始め、殺気を倉庫中に撒き散らす。

 血が出ているのにも関わらず、所かまわず剛腕を周囲に振ってきた。

 その度に衝撃波が発生しては、倉庫内の物が、吹き飛び、壊れていく。

 俺の方にも衝撃波は飛んできたが、軌道はすでに把握済みだ。


「俺は強えぇーーーーー!!!!負けるはずがねぇーーーー!」


 一郎は大きい声で叫びながら、衝撃波を無作為に放ってくる。

 俺は倉庫内を走りながら、衝撃波を避けては、剣で受け流すを繰り返す。

 少しずつ一郎との間合いを詰めていく。


「ヴァァァアーーーーーーーー!!!」


『俺は何としてでも………』


「アァァァ―――――!!!」


『目的を果たさなければならない』


「フゥゥン!!!!」


『そのために……』


「ドゥゥリャャャャアァァアーーーーーーー!!!!!!!!」


『お前は邪魔だ!』


 俺は足に力を入れ、一郎の懐へと飛び込むと同時に、俺は刀を振った。

 空間が切り裂かれるような音、一瞬にして数度の斬撃を浴びせる。

 最後の一撃は、鋭く深く、心臓へと突き刺した。


………


「グゥ………」


………


 一郎は最後に俺の頭を掴んできた。


 俺は一郎に最後の言葉を言い、そのまま刀を捻った。


「ア………」


 刀が肉を切り裂き、一郎の息の根を止める瞬間、彼の体が震え、瞳から光を失う。

 一郎の口から出た血が俺の体に大量に降りかかる。

 熱く、重く、瞬く間に俺の顔や服に染み込む。だが、それに目を向けることなく、俺はその瞬間を、確実に迎えた。


 刀を抜くと、一郎の体が崩れるように地面に倒れこむ。

 血だまりが広がり、倉庫の床に赤く染み込んでいく。


 その光景を目にしながらも、俺の心は揺るがない。

 俺は刀を振り、一郎の血を払った。


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