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アルガナイ…力を失ったルシファー 学園生活を謳歌する?  作者: T.T
この世界の裏側

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第22話 期末テスト(裏)5 雑念

 先ほどまで、心のどこかに雑念があった。こいつを殺したくないと。


 いくらでも攻撃を仕掛ける機会はあったが、動かなかった。いや、動けなかった。

 しかし、アームドをつけ衝撃波を放てるようになった一郎を前にして、危機感を覚え行動に移した。だが、返り討ちにあった。

 理由は分かっている。俺には、こいつを殺す気がなかったからだ。

 そんな甘い考えをしていたから、今こうしてダメージを食らっている。


 俺はこれまで多くの血を流してきた。

 自分とかかわりのない者たちなら、心を無にして命を奪うことはできた。任務の一環として、その命を奪うことに何の疑念も抱かなかった。


 だが、例外がある。初めての任務で千明のおばあちゃんを殺したときだ。この時の俺は、おばあちゃんとの思い出に浸り、殺すことをためらった。

 そして、俺は今もまた同じ過ちを繰り返している。 


『俺はこの仕事に向いていない』


 戦いの中で、俺はそれを痛感した。

 ターゲットが自分と少しでも関りがあると、殺すことをためらってしまう。

 こんな奴がこれから先、殺し続けることができるわけがない。

 自分が馬鹿だと理解している。一歩間違えれば死ぬのは自分だというのに。

 しかし、今、一郎の言葉で、あの日を思い出した。


 『絶望』と『希望』を知ったあの日のことを。


 あまりにも突然で、理不尽で、何もできない。これほどの屈辱を味わったことがなかった。

 俺はこの記憶を思い出すたびに怒りが込みあがってきては抑えてきた。

 だが、一郎の言葉が引き金となり、抑えてきたものが一気に溢れ出た。

 避けられるはずの攻撃を食らう。攻撃を繰り出すタイミングで思い通りに動かない。俺にとって、これ以上のストレスはないと言える。

 攻撃を食らう度に、与えるたび、今までの努力が無駄だったと突き付けられる気分になるからだ。


 俺はこれまで以上に鍛錬に臨み、必死に力を取り戻す努力を続けてきた。全ては、力の代償として、得た情報が正しいかった時に備えて。

 そして、目の前にいる一郎が、俺の進む道を阻む存在だと確信した。

 願いを果たすために、この戦いは避けられない。


 たとえ、一郎がかつての仲間であっても、俺は任務を遂行する。


「言えない」


「あぁーーー!?そのくらい応えてほしいんですがねぇ!!!あぁ虫唾が走るぜ!!!」


 一郎は頭を左手でかきむしり、先ほどよりも顔を強張らせ、さらなる怒りを露わにした。

 確かに一郎の言う通りではある。散々情報を話させておいてこちらが答えないのは卑怯というものだ。

 だが、もう決めたのだ。こいつを殺すと。

 ならば、言う必要はどこにもない。

 俺はそう勝手に決めた。


「お前があの日を思い出させるからだ。悪く思うな」


「はぁ~何だそれぇー。イラつくねぇ~」


 一郎は下げていた頭を上げ、俺の顔を見て微笑んだ。


「しかし、ようやく顔つきが変わったな。やる気になったか?あっ!?」


「あぁ、待たせたな」


「チッ、やっとかよ。なら、せめて見せてもらうか。今のお前の実力を!」


 一郎は一気に走り込み、ジャンプをし、左腕を前に出しながら身体を少し右外に捻り、勢いをつけようと右腕を斜め後ろに下げ、今にも殴りそうな体制を取った。

 俺は全身に力を込めて、姿勢を低くし前のめりになった状態で、一郎の懐に飛び込んだ。空中に浮いていた一郎の右足首を、右手で掴みそのまま力の限りを出し、前に投げ飛ばした。

 一郎の体は長座体前屈のような形となり、倉庫の方へ飛んだ。


「はっ?」


 俺は、前に出ていた左足に力を入れ、地面を踏み込んだ。

 倉庫に入った一郎は両足を曲げ、思いっきり地面に向かって叩き降ろし勢いを殺すことに成功した。

 しかし、その時にはもう俺の右手は、一郎の首元掴んでおり、勢いのまま地面に叩きつけた。

 地面との反発で一郎の全身が少し宙に浮き、俺は透かさず左足で先ほど俺が埋まった箱がたくさん置いてある方へ、一郎を蹴った。

 吹き飛んだ一郎は血を吐きながら、転がり箱の山へに衝突する。数秒後、崩れた箱が一郎に降り注いだ。

 俺は再び一郎に近づく。

 一郎は周囲の箱を衝撃波で吹き飛ばしたようだ。倉庫内に木の箱の残骸が飛び散り、埃が舞い夜の光が白く反射している。

 立ち上がり始めた一郎に向けて俺は拳を振るった。

 一郎はそれを右腕で弾くが、すでに俺の左足が腹部に届いていた。


「ぐはぁ!」


 そのまま体を捻り、右足で顔面に目掛け蹴りを入れた。

 一郎の体は横方向に一回転し、俺の方向に向いた瞬間、無数の連打を食らわせた。

 止められることも、受け流されることもなく、ただ、ひたすら殴り続けた。

 すると一郎が血を流しながら反撃しようと右腕を振りかざしてきた。

 俺はそれを右足で蹴り落とし、そこから体を一回転させ左足で首元に蹴りを入れた。

 一瞬、白目になった一郎だが、自ら舌を噛み、俺の足を左手で掴もうとした。

 それに気づいた俺は咄嗟に距離を取り、深呼吸し体勢を整えた。

 

 先ほどまでの俺は一郎を殺すことを躊躇っていた。

 しかし、それとは別にあるものを待つためでもあった。


「ぶはぁっ、はぁ~はぁ~。なんだよ、つえぇーじゃねぇか」

 

 吐き出した血を足で踏みつけ、腕で口を拭いた。

 

「済まないが、時間だ」

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