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アルガナイ…力を失ったルシファー 学園生活を謳歌する?  作者: T.T
この世界の裏側

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第19話 期末テスト(裏)2 再会

 目的地に到着し、遠くから倉庫を確認した。


「どうやら、倉庫に入るには、正面から入るしかないな」


 倉庫は正面にしか入り口がなく、天井に小さな穴が開いているが、俺たちが入れそうな大きさではない。ここから出入りできるのは、正面のドアだけだ。

 情報通りなら、倉庫内にいるのは二人だけだが、到着するまでに時間が掛かったため、その間に仲間が来ている可能性がある。

 しかし、倉庫の周辺に建物はなく、車も止まっていない。

 可能性は薄まったが、すでに中に潜んでいる前提で行動する。


 俺と真希は車を降り、倉庫に近づいた。

 ゆっくりと錆びついたドアを押し開けた瞬間、軋む金属音が薄暗い倉庫内に響き渡る。

 天井から吊るされた電灯が微かな光を放ち、鉄製の箱や古びた機械が影を作って迷路のように入り組んでいる。

 その迷路の手前にソファが置かれ、そこに黄泉兄弟が横たわっていた。ゲームをしていたらしいが、ドアが開く音に反応してこちらを向いた。


「誰だ」


 ゲームのコントローラーを握りながら低い声で問いかけてきたのは兄の一郎だ。

 薄暗さと距離のせいで、俺たちの姿までは見えていないようだ。

 一郎はソファから身を起こし、弟の二郎と何かひそひそと話しながらこちらに近づいてくる。

 距離が縮まるにつれ、険しかった顔が徐々に驚きに変わっていく。


「おい、お前、もしかして……金星か?そうだよな?」


 かつて、高くうるさいとまで思っていた声が、今は低く、威圧感を帯びていた。


 数年ぶりに直接見るが、情報通りで、成人並みの体格だ。シャツ越しでもわかる鍛え抜かれた筋肉がより印象を強めていた。同じ中学生とは思えない体格だ。

 弟の二郎は、起き上がった兄の後ろに隠れているため見えずらいが、兄よりも一回り小さいといったところだろう。しかし、兄弟そろって中学生離れした体つきだ。油断できないことに変わりはない。


「元気にしてたか?」


 二人は警戒してか、互いの距離が20mくらいになるところで足を止めた。

 俺たちと訓練していた頃の一郎は猪突猛進という感じで何も考えず突っ込んできたのだが、さすがに知恵がついたようだ。会話でこちらの様子を伺っている。

 二郎は人見知りで、常に一郎と一緒にいたイメージで、かなり大人しい奴ではあった。

 頭がいいため、的確に相手の弱点を突いてくる戦い方をしてきたのを覚えている。戦うとなったら一郎より厄介なのは間違いないはずだ。

 この二人を一人で同時に相手するのは骨が折れそうだが、真希がいるため、それはほぼないと言っていい。

 予定通り、俺は一郎を相手にする。ただ、それだけを考えればいい。


「あぁ。そっちこそ元気そうだな」


 俺も話しながら、様子を見た。


「てめぇら、ここに何しに来た?」


「まぁ、とりあえず、久しぶりの再会だ。少し話さないか?」


 一郎は苦笑し、頷いた。


「いいぜ。お前たちとは付き合いが長い方だからな」


 話ができる相手と判断した俺は、踏み込んだ話をして様子を見ることにした。


「さっそくで悪いが、お前らがうちの学校に爆破予告をした犯人で間違いないな?」


「爆破予告……あぁあれか、あれは自分たちのご褒美さ。組織から逃げ切ることができたからな!今日から、ここは俺たち二人の場所だって、宣伝したまでさ。爆弾をかなり置いたつもりなんだが、結局全部、警察に取られちまった。こっちの警察様は優秀だねぇ~。まっ、俺たちが明日学校にいる奴らを皆殺しにして拠点にすることに変更はねぇがな。少し手間が掛かるってだけだ」


 そういうことか。しかし、拠点にするというはどういうことだろうか。大阪のメンバーがここを拠点として動くということか。分からないがそうなると厄介だな。


「そうか。よく、目から逃げることができたな」


 俺と、一郎がこうして二人で話し合っている間、二郎と真希は視線がぶつかり合っていた。


「簡単じゃなかったぜ。まぁ、俺たちの実力が上回ってたってことだ」


 一郎は腕を組みながら話しているが、目線をしっかりと俺たち二人向けて放そうとしない。

 そんな中俺は、この騒動の中で最も気になっていたことを尋ねた。


「お前らが組織に歯向かったのはなぜだ。それに体内にあった爆弾はどうした」


 大阪の殺し屋が暴れ出したと聞いた時からずっと疑問だった。

 他の勢力であろう殺し屋たちが大阪で反乱を起こしたのは分かる。だが、ここ埼玉県に来て学校に爆破予告してきたのはRの矛であるはずの黄泉兄弟だった。

 有り得ないのだ。

 Rの矛は組織内で随一の戦闘能力を誇る。そのためRは、内部で反乱が起きないよう、俺たち矛の体内には爆弾を取り付けている。

 黄泉兄弟は大阪を担当していた矛だ。つまり、他の勢力に属した時点で爆弾は起動し、すでにこの世にはいないはずだ。

 しかし、今こうして俺たちの目の前に立っている。

 どういうことだ。爆弾の解除方法が分かったというのか。それとも、体内から抜いた?いや、それこそできない。レントゲンで確認したが、爆弾は心臓に張り付いている。父さんから聞いた話では、少しでも爆弾に触れた瞬間に起動すると言っていた。自由になるには、Rに装置を解除してもらうしかないはずだ。真意を聞き出さなければならない。俺の目的のために必要な情報だ。


 もし仮に、爆弾が俺の想像通りの代物ならば……『希望』が見えてくる。


「そりゃ、Rに命令されて金もらって生きるよりも、うまい話が出たからに決まっているだろ。もちろん関係ないお前たちに詳しくは言えねぇが、俺たちの仲間になるんだったら教えてやってもいいぜ」


 うまい話?大阪で何があったんだ。

 今の話を聞く感じ、誰かが大阪の殺し屋達に都合のいい何かを提示したということか。余程の報酬があるようだ。そうでなければ、逆らった死ぬ矛が寝返ったりしない。

 さては、もう報酬はもらっているのかもしれない。爆弾解除が報酬であったとしても、それは俺たち矛の自由を意味する。これ以上の報酬はないとも言える。


「質問に答えろ。爆弾は取り除いたのか。それとも解除をする方法があるのか」


 一郎はため息をつきながら、組んでいた右腕を腰に当て、左手で頭をかき始めた。


「お前、しばらく会わねぇうちに頭悪くなったんじゃねぇか。そんなの教えるメリットがないくらい分かんだろ」


 さすがに、聞き出せないか。これからそのメリットを渡して、話を聞くつもりだったんだが、それも無理そうだ。


「仲間にならないってなら、俺たちは敵同士だ。それに俺はもう色々話したぞ、次はお前が俺の質問に答える番だ」


 一郎は右手を前に出して、目を細め再び口を開いた。


「アールを寄越せ。組織の名前じゃねぇ。物だ」


 アール?Rは組織の名前だ。しかし、一郎が聞いてきたのは組織ではなく、アールと名の付く物だと言う。それを渡せと・・・意味が分からない。

 アールという物を俺は聞いたことがなかった。


「アールとはなんだ」


 一郎はため息をつきながら、右手を再び腰に当てた。


「はぁ、知らねぇのか。こりゃ、外れだな。すまん今のは忘れてくれ」


 そう言いながら、一郎の目は鋭く変わる。

 臨戦態勢を整えた一郎は拳を合わせ、二郎もナイフを持ち構えた。


「いや、やっぱ忘れなくていいぜ、俺が忘れさせてやる」


「知ってはならないことを知った、ということか」


「そういうこった!」


 一郎が俺の方に走りこんだタイミングで、後ろにいた二郎がどこかへいなくなっていた。

 『どこだ?』と思った瞬間、目の前から、一郎の拳が飛んできた。

 俺は腕を交差させてその一撃を受け止めた。

 ドンッ・・・重い衝撃が俺の体を後ろへ弾き飛ばす。

 その先に、風を切るとともに、ナイフが飛んできた。おそらく、姿を消した二郎が投げたものだろう。

 これに真希が反応し、持っていたナイフで弾き飛ばすと二郎に向かって突進し、鋭い一線を放つ。


「二郎!」


「なんだ真希!邪魔をするな!」


「それはこっちのセリフ!」


 二郎は身軽な動きで回避し、二人の攻防が始まった。


 俺の戦闘に二郎が入り混まないように、戦いながら離れた所へと誘導してくれた。


「ヒュー真希やるねぇ。実にやりがありそうだ。だが、それはお前も一緒だよな!金星」


 一郎はシャツを引き裂き、鍛え上げられた筋肉を露わした。欠陥が浮き上がったたくましい腕は、とても同い年とは思えない筋肉量だ。

 

「こっちも始めようぜ。あの時のリベンジマッチだ」


 一郎は拳を打ち合わせ、不気味な音を響かせながらゆっくりと歩み寄ってくる。

 ここまでの情報を整理すると、黄泉兄弟はRを裏切り、今は大阪の組織に属している。

 そして、体内に仕込まれた爆弾を何かしらの方法で無力化し、Rの追ってから逃げてきた。

 俺の通っている学校を拠点とするため爆弾を仕掛けたが、警察に撤去された。そのため、明日乗り込むつもりのようだ。

 正確な目的は分からないが、聞いた限りアールという物を回収するためってとこか。

 まずは、一郎の今の実力を見極めるか。


「……そうだな……」


 俺は深く息を吸い、構えを整える。全身の感覚を研ぎ澄まし、目の前の一郎に集中した。


 あの頃とは違う。一郎も、俺も……

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