第16話 心の世界(裏)4 消失
俺が小学四年生になったある日、その天罰が突然やってきた。
学校が終わるとRの呼び出しがあった。
『試験のため』とだけ説明され、連れて行かれたのは、何もかもが真っ白で、広大な部屋だった。
そこには他の矛の後継者たちが集まっていた。おそらく関東地方に住む、俺と同年代の跡継ぎばかりだろう。見知った顔もいくつかある。一緒に鍛錬を積んだ者たちだ。
他の地方の矛たちと会ったことはないが、大体の顔と名前、戦闘能力は把握しているため、見ればわかる。
辺りを見渡すと、正方形の箱のような空間で、床も天井も、四方の壁も全てが白く、かなり広い。関東地方に住む俺と同年代の矛の人数はざっと1000人はいる。その全員が、一枚床の上に立っている。
壁の上部には分厚いガラス窓が並び、その向こうにいる人が見えた。彼らが無表情のまま俺たちを監視しているのがこちらからでも分かる。
数分後に放送が入った。
「これより、試験を開始する」
内容は単純だった。
・相手を気絶させるか、戦闘不能にすること。殺しは禁止。
・仲間を作って集団で誰かと戦ってもいいし、個人で戦っても構わない。
・最後の一人となるまで戦いは終わらない。
これが試験のルールだった。
開始の合図とともに、俺たちは一斉に散り、戦闘が始まった。
数時間後……。
俺は一人で、ほとんどの者を戦闘不能にさせ、試験を終わらせた。
床に転がる矛たちを見下ろしながら息を整えていると、上から見下ろしていた人物たちの声が放送で響いた。
「天野、至急、そこにいる案内人に従い、こちらへ来なさい」
試験後に呼び出されたのは初めてのことだ。少し緊張した。
案内人の指示に従い、無言のまま長い廊下を歩き続ける。
そしてある部屋に通された瞬間、床が突然開き、俺はそのまま下に落ちた。
咄嗟の出来事に頭が混乱する。
落下中、壁から現れたロープのようなものが俺の両手両足を縛り、壁に押さえつけられた。
「クソッ!なんだこれは?」
先ほどの試験での疲れが体に利いたこともあり、必死に抵抗したが身動き一つ取れない。
『ウィーン』という機械音とともに、壁に括り付けられたままゆっくりと下へ降ろされ、徐々に仰向きにされ、どこかへと移動している。
暗闇の中、足元から光が差してきた。
『眩しい』
目を細めながら少しずつ視界が開けると、そこは医療室のような場所だった。
無表情の大勢の人たちが俺を囲んでいる。
その中の一人、白衣を着た男が無言で注射器を俺の腕に突き刺した。
抵抗する間もなく、意識が闇に沈んでいく。
……
目覚めた時には、拘束は解かれており、俺はベッドの上で寝かされていた。
体を起き上がらせ、状況を確認する。
ここは個室のようだ。周囲に人はいないどころか、物一つ置いていない。
左側には人一人が通れるドアがあり、四隅には監視カメラが設置されている。
俺を監視していることは明白だ。
そして何よりも気になることがある。
『体が重い』
最初に思ったのはこれに尽きた。
それに妙な感じだ。力が入りにくい。
そう思った瞬間、細身の白衣の男がドアを開けて入ってきた。
彼は手に紙の資料のようなものを抱え、俺の元へと近づいてきた。




