第12話 作戦(表)
その日の放課後、二人でカラオケに行き、千明に指導のもとで練習を始めた。
数時間の練習した結果、俺は少しずつ人前で披露できるレベルに近づいていった。
そのうち、千明がストローをくわえながら、じっとこちらを見つめる回数が増えてきた。だんだん退屈そうな表情も浮かべている。
そろそろ頃合いかと判断し、曲を歌い終えた俺は頭の中を整理して、千明に話しかけた。
「作戦のことだが」
「うん、聞かせて!」
千明は目を輝かせながら、身を乗り出してきた。その真剣な表情に、少し緊張しながらも俺は口を開く。
「まず、告白は林間合宿の二日目の夜、キャンプファイヤーの後の自由時間で決行。場所は宿舎の裏庭だ」
「二日目の夜………裏庭?」
千明が小首をかしげる。
「二日目の夜でみんな疲れているし、風呂に入ったら眠くなるだろう。自由時間も30分くらいしかない。それに、風呂の後に外に出る人はいないと言っていい。
たとえ誰かが来たとしても、辺りは暗いし、人目につくことはない」
「なるほど、確かに」
千明は納得したように頷いた。
「それと、千明は駿斗の連絡先知ってるか?」
「持ってるよ」
「じゃあ、二日目の昼食の時に『夜、お風呂が終わったら宿舎の裏庭に来てください。話があります』という感じで送ってくれ」
「う、うん。でも、なんで昼食の時に?」
「俺は駿斗と同じクラス。昼食は同じ場所で食べるから、どこからでも駿斗の様子を見られる。それに、もし未読のままだったり、返信が来なかったとしても、俺が対応できる」
「でもさ、そんな面倒なことしなくても、三日前くらいにメールしとけばいいんじゃない?」
「合宿の夜に『話がある』なんてメールが来たら、誰だって告白だと気づく。それに、相手は察しがいい駿斗だ。考える時間ができたら、最悪の場合、メールで断られるかもしれない。そうなると、直接会って気持ちを伝えることができなくなる。それでもいいのか?」
「良くない!それじゃ、金星に頼んだ意味がないじゃん!直接会って伝えることができないから、頼んだんだよ!」
「だから、駿斗に考える時間を与えず、そして俺が支援できるこのタイミングがいいんだ」
千明は『ふーん』と興味深そうに頷く。
「駿斗君から返信が来たらどうすればいいの?」
「絶対に既読をつけるな。電話にも出るな」
「え?なんで?」
「駿斗は千明が一人でその時間に来るとわかる。返信がなければ、直接会いに来るしかないだろう。駿斗が、夜に女子を一人で待たせるような奴じゃない。それを利用するんだ。もし、10分前になっても来なかったら、俺に連絡してくれ。その時は俺が対応する」
「なんか、駿斗君の優しさを利用するみたいで、ちょっと悪いことしてる気もするけど・・・でも、うまくいけば、ちゃんと告白できるんだよね?」
「約束したからな」
「分かった。金星を信じるよ」
ふっと息をついて、急に笑顔になった。
「さーて、歌い直しますかー!」
カラオケルームに音楽が流れ出す。俺は心の中で安堵の息をついた。
……今回の目的は、千明にこの作戦が最善だと思い込ませることだ。
正直、二日目の夜だろうが、裏庭だろうが、どうでもいい………
『ただ、俺が指定した時間と場所に二人が来れば、それで十分だ』




