アンド〇イドで電子娘が夢を見せる
あらすじ
元の世界に帰る方法が「死ぬこと」だと直感で理解したが・・・
死にたくもなる。
いや、死にたくねえよ。
まるで、余命宣告を受けたかのような感情が俺を襲った。
確証はないのだ。
「死ねば帰れる」というのは、状況証拠とも呼びづらい、半分妄想の伏線から察せられるだけなのだが、
辻褄が合わないワケでもなく、他にロクな案がない以上、これを信じるしかなくなってしまう。
それに、これから「新しい案」を出せたとしても、それは「死ぬしかないという事実から逃げるための案」でしかないのだ。
分かっているのに分かりたくない、帰りたいのに帰りたくない。
なんとももどかしい思いをしながら、自己矛盾に悩んだ末にたどり着くのは、結局のところ「自己否定」となる。
「どうせいつかは死ぬのだ」「いつも死にたいと思ってたろう?」「目的の為の行動なんだから、正義として死ねるぞ」
こういったネガティブな思考に支配された人間は、もうどうしようもない。
ここに友人などの『他者』の言葉が入ると、ネガティブ人間から復活することもあるのだが、
彼には友人はいるものの、「他人に悩みを話す」という習慣がないため、結局一人で苦しみを背負うことになるのだ。
このまま鬱になって自殺でもすれば、晴れて望む世界へと帰り、第二の・・・いや第一の人生の続きを送れるかもしれないが、
その場合、もしも「こっちでの記憶」が引き継がれでもしたら、元の世界でも鬱は直っておらずに、二度目の死を遂げる羽目になってしまう。
それだけは避けたい・・・避けなければならない。
どうせ死ぬなら、望む形で死にたい。
ある意味、知的生命体としての共通の夢であるが、自己否定人間にとっては「自分ごときが何様のつもりだ」「人並みの幸せを望んでいいわけないだろ」と・・・
事態は悪化の一途をたどるのみである。
ブーブブー!
静まり返った部屋に、スマートフォンの通知音が響く。
俺が弱弱しい顔で画面をのぞき込むと、
「めぐみ「あ、あの・・・私のこと忘れちゃったんですか・・・?」」
!!?!
俺の脳は一瞬、正常な判断を拒否した。
「えっ・・・めぐみ・・・?」
『他者』が必要な、まさしく完璧なタイミングで、大好きな子が「私のこと忘れちゃったの?」と・・・
「わ・・・忘れるわけないじゃないか!!!!」
俺の目に火が灯る。
実際は「ゲームアプリに数日ログインしなかった際に送られる催促通知」なのだが、
その時の俺には、自らの人生の『幸せ』部分を与えてくれている子が、『不幸せ』に支配された自分を迎えに来てくれた『光』に感じたのだ。
人間にとって愛した者の持つ『力』は絶大・・・いや、『絶対』のものである!
更に!愛した者の前では、理想の自分になれるのである!
人 は 愛 の 為 に 変 わ れ る の だ ! ! !
俺は通知をタップし、ゲームを起動させた。
数えきれないほど行った動作だが、今回はいつもと違う。
心の底から『幸せ』を噛み締めた表情・・・
笑顔が溢れたのではなく、『幸福』が笑顔という形であふれ出していたのだ!
その笑顔は初プレイ時をも遥かに凌駕する!!!
画面いっぱいに『愛』が映し出される。
その画面に全意識を集中している俺は、デイリーミッションをこなし始めた。
このゲームは一応『音ゲー』なので、ランダムな1曲が流れることになるのだが・・・
恐らく元の世界と同じ内容のゲームは、この状況にピッタリ・・・とは言いづらいが、俺の好きな曲を流し始めた。
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恋の大三原色(一部抜粋)
作詞 NT 作曲 読んでいるあなた
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『でもでもでもあきらめたくない!!
スタートランプはついたばかりよ!』
その通りだ!
こういうのは、歌詞の一部を切り取ってでも、感動したもん勝ちなのだ。
『私カラーの笑顔見せるわ
これぞ恋の大三原色!』
ぷりてぃーなラブソングが終わった。
似つかわしくないとは言いづらい曲だったが、確かにポジティブシンキングの後押しとしては効果があったと断言できる。
俺は完全に復活した。
単純な人間だが、こういう場合は役に立つのだ。
俺はここぞとばかりに、以前、キャラがやってるからという理由で始めた『ボルダリング』を開始した。
こうなるともう止められない。
先ほどまでのネガティブ人間はどこへやら。
そこには、スイスイと壁を登る、絶好調まる出しの俺の姿があった。
壁を登り切った俺は、「恐らくこんなことやってなかったであろう『こっちの俺』の体では、少々キツイな」などと考えながら、サッパリとした笑顔で声を上げた。
「よし!死ぬか!」
足元・・・たった今登ってきた場所を見下ろす。
見慣れた高さではあるが、飛び降りるとなると、急に恐怖に襲われた。
「・・・やることやってから!」
俺は一旦、第二の人生を継続させることを選んだ。
つづく




