表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/11

第8話「バズった朝」

通知が止まらなかった。


そらみちゃんとのやりとりが終わって四日後の朝、浅井はスマホを手に取った瞬間に気づいた。画面が光り続けていた。


「…え?」


通知欄を開いた。


フォロワーが増えていた。見ている間に増えていた。数字が動いていた。


三万二千。三万三千。


「なにこれ」と声に出た。誰もいなかった。


「藤代!」とLINEした。送信する前に通知がまた来た。


「起きてる!?」


「起きてる笑 見てる見てる」とすぐ返ってきた。


「なんで増えてるの!?」


「そらみちゃんのフォロワーがWBRC見に来てる。あと誰かがまとめ記事書いてくれたっぽい」


「まとめ記事??」


「送る!」


リンクが来た。


「【悲報】そらみちゃん、謎の学術団体に論破される」というタイトルだった。


クリックした。スクリーンショットがずらっと並んでいた。そらみちゃんの投稿、WBRCの返信、観察記録No.38、コメント欄の変化。全部まとめてあった。


見出しに「WBRCの対応が冷静すぎて逆に怖い」と書いてあった。


「怖いって書かれてる笑」と浅井はLINEした。


「ほめ言葉!」と返ってきた。


学校に着いたら、藤代が靴箱のところで待っていた。


「見た見た!?」と藤代が言った。声が少し大きかった。


「見た!まとめ記事になってたじゃん!」


「しかも複数あった!三個くらい!」


浅井は「三個?!」と言った。


「あとXのトレンドにWBRCが入ってた!一瞬だけど」


「マジで!?」


二人でスマホを並べて確認した。トレンドからはもう消えていたが、数字は動いていた。四万。四万二千。


「これどこまで増えるの」と浅井は言った。


「わかんない。でも面白くなってきた!」


昼休み、屋上でコメントを読んだ。


藤代がスクロールしながら声に出して読んだ。


「「WBRCの文章、なんか好き。感情がなくて逆に好き」」


「「観察記録ってのが面白い。続き読みたい」」


「「マダニの話、最初は意味わかんなかったけど読んでたらなんかわかってきた」」


「「先駆者さんの言ってること、ずっとそう思ってた」」


「先駆者って俺のこと?」と浅井が言った。


「お前のアカウントだから笑」


「なんか恥ずかしいな…」


「ほかには?」と浅井が聞いた。


「「ここ入るにはどうすればいいですか?」って何件かある」


浅井はしばらく黙った。「入る?」


「ヴィラ・ナチュラーレに入りたいってことじゃない?笑」


「どうやって入るの、架空の場所に」


「そこだよな笑」と藤代が言った。


放課後、コメントの返信をどうするか二人で考えた。


「「入り方を教えてください」に何て返す?」と浅井が聞いた。


「返さなくていいと思う。公式アカウントって、全員に返信しないほうが雰囲気出るじゃん」


「雰囲気?」


「神秘性!笑」


「神秘性かー」と浅井は言った。「でも完全無視も冷たくない?」


「じゃあ一個だけ。一番いいコメントに返そう」


浅井はスクロールした。「これかな」と止まった。


「「マダニの話、最初意味わかんなかったけど読んでたらなんかわかってきた。こういう見方があるんだって思えた。ありがとう」」


「いいね!」と藤代が言った。「それに返そう。何て返す?」


浅井は少し考えた。「「観察、続けます」だけでいい?」


「最高!それだけがいい」


打った。送った。


十分後に「いいね」が三百ついていた。


「「観察、続けます」って言葉、なんかいい」「簡潔すぎて逆に好き」「続き絶対読む」というコメントが来ていた。


「やば!」と浅井は言った。


「わかった、俺たちの文章、短い方が刺さる!」と藤代が言った。「長く書くより削った方がいい!」


「それ、そらみちゃんのときも言ってたじゃん」


「そうだった。でも数字で証明された!」


夜、フォロワーが五万を超えた。


「五万…」と浅井は思った。


五万人が、WBRCのアカウントをフォローしている。五万人が、マダニの観察記録を読んでいる。五万人が、ヴィラ・ナチュラーレという架空の場所を、本物だと思っているかもしれない。


「藤代」とLINEした。「なんか実感ない」


「俺も笑 でもちゃんといるんだよな、五万人」


「なんか…急に怖くなってきた。いい意味で」


少し間があった。「それが正しい感覚だと思う」


浅井は「そうかな笑」と打った。


「明日、新しいの出そう。勢いのうちに!」


「何出すの」


「また考える。おやすみ!」


「おやすみ」と浅井は返した。


スマホを置いた。通知がまだ来ていた。


五万人が、今日もどこかで、WBRCを読んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ