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アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します  作者: 梅丸みかん
第三章 帝國の野望

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56, 再会

 魔法研究棟で人体実験の犠牲となった人々の回復には、三人の大魔女――水圏の大魔女アウローラ、火圏の大魔女ペレ、そして私の師匠である地圏の大魔女エアデが協力することになった。


 アウローラは水圏魔法によって体内に混入した毒物を洗い流し、犠牲者たちの身体を少しずつ本来の状態へと戻していく。


 師匠は体力回復のための薬を調合し、それを彼らに与えた。

 一方で、魔法師たちの状態は深刻だった。


 彼らは魔力回路を無理やり増幅されたうえ、ペレが作った魔導具――魔法常時効果を付与する杖――を使わされ続けていた。


 その影響で寿命が大きく削られていたのだ。

 残された命は、長くてもあと数年しかないことが判明した。


 その事実に、最も大きな衝撃を受けたのはロイドだった。

 せっかく父と再会できたというのに、その先に待っていた現実は、あまりにも残酷だ。


 そのことを聞かされた時、ロイドは言葉を失っていた。

 だが、そんな重苦しい空気をものともせず、師匠は何でもないことのように言い放った。


「そんなもの、問題にもならんのじゃ。妾の若返り薬があるからな」

 その一言に、ロイドの瞳に希望の光が灯ったのが分かった。


 この出来事をきっかけに、彼がこれまで以上に地圏の大魔女エアデを崇拝するようになったのは、言うまでもない。


 そして――ロイドの父の呪紋が解かれてから、三日後。

 今日、ロイドはルネを伴い、解呪と体力回復を終えた父と、ついに再会することになった。


 実験の犠牲者たちのために整えられた魔法研究棟では、すっかり元気を取り戻した人々が、それぞれ故郷へ帰る準備を進めている。


 広間でくつろいでいるのも、かつては犠牲者だった者たちだ。

 助け出された直後は朦朧とし、自分の身に何が起きていたのかすら理解できなかった彼らも、今では回復し、旅立ちの時を心待ちにしていた。


 ロイドとルネは、その広間へと足を踏み入れた。

 そして、私は二人の再会を見届けるため、そっとその後を追った。


 ロイドはルネの手を取り、窓際に立つ橙色の髪の男のもとへ、迷いなく歩いていった。

 その気配に気づいたのだろう。男は、ゆっくりと振り返る。


「君は……まさか、ロイド……なのか?」

「父さん……」


 ロイドはそこで言葉を詰まらせ、それ以上、何も口にできなくなった。

 肩を震わせ、目の前の男を見つめるその姿は――泣いているようにも見える。


「だが……ロイドの瞳は深緑で、髪色は、パメラと同じ浅葱色だったはずだが……」

「父さんが死んだと思ってたから……。せめて、父さんの色を残したくて……薬で……」


「……そうか」

 男は小さく息を吐き、どこか寂しそうに微笑んだ。


「だが、パメラと同じ髪色ではなくなったのは……少し残念だな」

「大丈夫さ。ルネが、母さんと同じ髪色なんだ」


「ルネ……?」

 男は、ロイドの背後に立つ少女へと視線を向けた。


「俺の妹だ……父さんの娘だよ」


「俺の……娘?」

 男は戸惑ったように目を見開いた。


「どういうことだ? 私には娘など……いや……だが、確かにその浅葱色の髪は、パメラの色だ。確かに……パメラと別れたとき、彼女は妊娠していたが……」


 そこで、男ははっとしたように眉を顰めた。


「待て、ロイド。俺は……お前と一緒に漁に出た、その後からの記憶が曖昧なんだ。あれから、何年経っている?」

「七年だ。ルネは、今、七歳になる」


「七年……?」

 男はロイドをじっと見つめ、困惑したように首を傾げた。


「ルネ……俺の娘。もう少し近くで、顔を見せてくれないか」

 その言葉に、ルネは遠慮がちに一歩前へ出た。


「私の……お父さん、なの?」

「そうだ。俺が君の父さんだ。……ああ、確かにパメラの色だ。それに、瞳は俺の色……」

 

 男は感極まったように言葉を詰まらせ、震える指先を、そっとルネの頬へ伸ばした。

 その瞬間、ルネは堪えきれなくなったように、男の胸へ飛び込んだ。


「お父さん! 本当に……私のお父さんなんだね」

「ああ、そうだ。君の父さんだ」

 男がルネを強く抱きしめると、一粒の雫が頬を伝った。


「父さん……」

 その様子を見つめながら、ロイドは指先で、こぼれた涙を拭っていた。


「……ちょっと待て、ロイド」

 男は、ふと肝心なことに気づいたようにロイドへ視線を戻した。


「七年も経っている割に、お前はまったく年を取っていないように見える。いや、それどころか……あの頃より、幼くすら見えるが……どういうことだ?」


「ああ……それは……」

 ロイドは、これまでの出来事を手短に語り始めた。


 自分も長い間、帝國に操られていたこと。

 エアーレイ王国第二王子・アドニスの采配によって助け出されたこと。


 そして、攫われたルネを救うため、友人であり大魔女でもあるミカと共に、帝國へ潜入したことを。


「そうか……俺も、ずっと帝國に操られていたというわけか。そして助けてくれたのが、お前の友人であり、気圏の大魔女のミカという少女と、地圏の大魔女エアデ様……か。俄かには信じがたい話だな」


「ミカ!」

 ロイドが振り返り、柱の影から様子を見守っていた私を呼んだ。


 私はおずおずと、ロイドの父の前へ歩み出る。


「えっと……初めまして。今、ロイドが話していたミカとは、私のことです」


「そうか。私はロイドとルネの父親、ダリオだ。この度は本当に世話になった。感謝してもしきれない。本当に、ありがとう」


「いえいえ。友達を助けるのは、当然のことです」

「君は……そんなに幼いのに、気圏の大魔女なのか?」


 ――見た目は六歳だけど、中身はアラフォー、とは言えない。


「えっと……地圏の大魔女エアデの弟子で、まだ見習いなんです」

 私は、なんとかそう答えた。


「そうか……そうか……」

 ダリオさんは目を伏せると、状況を飲み込もうとするように何度も呟いた。


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