表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します  作者: 梅丸みかん
第三章 帝國の野望

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/159

55, 真実

 帝國に呪紋を刻まれた魔法師たちは、今のところ師匠の惚れ薬の効果が勝っているため、呪紋の力は表に出ていない。


 だが、惚れ薬の効き目は三日間だけだ。

 それが切れれば、再び呪紋による帝國への忠誠――洗脳が強まってしまう。


 そのため、惚れ薬が効いている三日のうちに、師匠に解呪薬を作ってもらうことになった。

 解呪薬といっても、もともとは師匠が作ったただの傷薬にすぎない。


 材料は橙草――その名の通りオレンジ色をした草で、この世界ではどこにでも自生している。

 もちろん、ディースラ帝国にも生えている。


 だが、大魔女エアデの術式と魔力が込められている以上、その効き目は常識外れだった。



 師匠にとっては取るに足らない傷薬でも、身体に刻まれた呪紋による精神支配すら、完全に消し去ってしまうのだから。


 薬は一日も経たずに完成し、第三皇子の研究棟で人体実験にされていた人々と、三人の魔法師たちは、その薬によって過去の記憶を取り戻した。帝國への洗脳も、きれいに解かれた。


 アウローラは「私の僕たちがいなくなってしまうわ」などと言っていたけれど、私は心の中で、そもそも彼らはあなたの僕じゃないよね、と呟いていた。



 まったく、師匠といいアウローラといい、大魔女というものはどこまでもマイペースだ。



 ペレに至っては、城内で自分の作った魔導具を眺めては、「さすが俺は天才だな」と自画自賛していた。どうやら自尊心が高いのも、大魔女の特徴らしい。


 いずれは私もそんな風になってしまうのかと思うと遠い目になってしまう。

 帝國の呪紋は解除できたものの、研究棟にいた人々は、様々な薬品や呪術を使われていた影響で、身体がひどく疲弊していた。


 すぐに動けない者も多い。

 それでも、少しずつ回復してきているのは確かだった。


 帝國では、これまでの皇帝や皇子、そして彼らに与していた者たちが平民によって断罪され、政権交代の混乱で慌ただしい状況が続いていた。



 リゲルはすかさず大魔女たちに媚を売り、彼女たちの城への滞在をしばらく認めた。あまりの愛想の良さに、何か企んでいるのではないかと疑ってしまうほどだ。


 私とロイドも、エアーレイ王国からの迎えを待つ間、城の一室をあてがわれ、そこに滞在することになった。


 攫われていた人々も同様に、故郷へ帰れるようになるまで、皇城内の別棟で保護されている。

 そんな中、私はロイドと共にルネたちが保護されている場所へ向かった。


 従者に案内されて辿り着いたのは、かつて皇太子だった亡き第一皇子の住処――東宮殿だった。


 白灰色の石で組まれた外壁は、陽光を受けて淡く輝き、重厚な柱と尖塔を備えた建物は随所に威厳を感じる装飾が施されていた。


 その前に広がる庭園では、色とりどりの花々が咲き誇り、ルネは他の子供たちと一緒にそこにいた。


 ルネと共に攫われたあの五人の子供たちだけでなく、それ以前に攫われていた者たちも、庭園で花を眺めたり、互いに話をしたりしている。


 洗脳が解かれた子供たちの表情は、すっかり笑顔を取り戻していて――その光景を目にし、私はようやく胸を撫で下ろした。


「「ルネ!」」

 私とロイドは、彼女の姿を見つけると同時に、一直線に駆け寄った。


「ミカ……?」

 目を丸くしてこちらを見つめる、その子供らしい表情に、胸の奥がふっと緩む。


「ルネ……よかった……」

 私は堪えきれず、ルネに抱きついた。


「ミカ……私たちがどうしてここにいるのか、灰色の騎士から聞いたよ。でも……どこかの施設で、ミカが私の近くにいたこと、なんとなく覚えてるの。今ならわかる。きっと、ミカは私を助けに来てくれたんだって」


「ルネ……」

 私はそっと腕を離し、滲んだ涙を拭ってから、改めて彼女の顔を見つめた。


「えっと……あなたは……?」

 ルネは、私の隣に立つロイドに視線を移し、少し戸惑ったように首を傾げた。


 じっと顔を見つめ、何かを確かめるように視線を彷徨わせる。


「ルネ、俺だ。お前の兄ちゃんだ」


「お兄ちゃん……?」

 ルネはすぐには信じられない様子で、眉をひそめた。


「でも……私のお兄ちゃんは一人だけだよ。その人は、もっと年上で……十八歳で……」

「そうだ。それが俺だ。エアデ様の若返り薬で、この姿にしてもらった」


 ロイドの言葉に、ルネは息を呑んだ。

 もう一度、今度は先ほどよりも注意深くロイドの顔を見る。


「……声がお兄ちゃんより少し高い……でも、話し方は……」

 ぽつりと呟き、しばらく黙り込んだあと――


「……そういえば……髪と目の色は違うけど……顔は、どことなくお兄ちゃんだ」

 戸惑いが、ゆっくりと納得に変わっていくのが、はっきりと伝わってきた。


「ルネ。一緒に国へ帰ろう。……それから、家族四人で。みんなで暮らすんだ」


「四人って……?」

 ルネが不思議そうに瞬きをする。


「この皇城に、父さんがいた。父さんも、帝國に囚われていたんだ」

「お父さん……?」

 ルネの声が、わずかに震えた。


「お父さんって……死んだんじゃなかったの? 私が生まれる前に、漁に出たまま戻らなかったって、お母さんが言ってたよ」


「ああ。俺も、そうだと思ってた」

 ロイドは一度言葉を切り、ゆっくりと続ける。


「俺は父さんと一緒に漁に出た先で、帝國に攫われた。そのとき、父さんは海で死んだんだと……そう思い込まされてたんだ。でも違った。帝國は、父さんも攫ってた」

「……」


「人体実験の末に魔力を高められて、帝國の魔法師に付き添わされていた。俺と同じ呪紋を刻まれてな」

「お兄ちゃんも……お父さんも……」

 ルネは言葉を失い、胸の前でぎゅっと手を握りしめた。


「帝國に、攫われていたなんて……」

「ああ」

 ロイドは、少しだけ視線を伏せる。


「俺は、ルネと母さんに心配をかけたくなくて……助けられた後、孤児院にいたって話してた。でも、本当は違う。帝國に攫われて、帝國のために働かされていたんだ」


「そう……だったんだ……」

 静かに語られる真実をルネは自分の中に落とし込むようにゆっくりと呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ