10-1
――ピピピピピ……
ぱちん、いつもの調子で目覚まし時計を止める。
午前7時。いつもと同じ、爽やかな朝の目覚めだった。
「んん~…、よく寝たぁ。」
ひとつ伸びをする。
…本当はもう一回気持ち良いブランケットの中に戻りたいんだけど、今日は潤ちゃんと拓くんと約束があるんだ。
これから図書館に行って夏休みのグループ研究の案を練らないと。
今のままだと、潤ちゃんの苦手な麻里ちゃんチームと同じ、草花の調査になっちゃう。
それは嫌だ。
…かと言って、何か良い案があるわけでもないんだけど。
リビングに出ると、お父さんを送り出すお母さんの姿があった。
「…あぁ、あなたちょっと待って。
悪いんだけど、このゴミを出してきてもらえない?」
「ああ、分かった。」
お母さんは腰をちょっと屈め、雑誌やプリントなどの束を紐で縛り始めた。
私はなんとなくその光景を眺めていたけど…、
「お母さん、そのお祓いのパンフレットも捨てちゃうの?」
理由もいつかも覚えてないけど、お父さんとお母さんが突然貰ってきた寺社のパンフレット。
「ええ。
…そういえば、どうしてこんなもの貰ってきたのかしら?ついこの間まで必要な気がしてたんだけど、忘れちゃったわ。
もしかしたらお祓いするはずだった幽霊がいなくなったのかもね。」
「…ふぅん…。」
「それじゃあ、行ってくる。」
雑誌の束を片手に、お父さんがドアを押し開ける。
「行ってらっしゃい。」
パタパタ…と手を振る私。
いつもならそれでおしまいだ。
でも、
「――………ねえお父さん。
前に私にさ、何かしちゃダメって怒らなかった?」
「え?」
自分でもどうしてこんな質問をしたのか分からなかった。
お父さんは数秒間無言で考え込んで、
「いいや、覚えてないな。」
結局はそんな答えを返した。
「………そう。」
心に少し残る蟠り。
でもその正体なんか知るわけもないから、私はお父さんの答えで自分自身を納得させることにした。
―――なんだろう。なんだか…、
―――何か大切なことを忘れているみたいな、変な感じ……。




